みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
青い森の白い神の里から

写真の謝礼で届いた手作りパン

夫の写真を使って完成したリーフレット
夫の写真を使って完成したリーフレット

今年のお盆の時期、私たちのホームページに一通の書き込みがありました。開いてみると、長野県中川村のグラフィックデザイナーで主婦の「さおりさん」からでした。

初春の白神の森で撮影したブナの梢と青空
初春の白神の森で撮影したブナの梢と青空

なんでも、「友人が作るリーフレットに白神山地の写真を使わせて欲しい」とのお問い合わせ。使用した写真の掲載料もお支払したい、とのありがたい申し出でした。連絡してみますと、都会から伊那谷へご家族で移住されたとのこと。他人とは思えない縁を感じ、写真の使用をOKすると共に、どのようなリーフレットなのか聞いてみました。

宅急便の包みからこぼれる甘い香り。ん、何?
宅急便の包みからこぼれる甘い香り。ん、何?

すると、「起業する友人の案内パンフレットのようなもの」だそう。夫は職業写真家なので、食べて行くためにはお金を戴いた方がありがたいです。が、話をすればするほど、私たちと同じような境遇の仲間。熟考した結果、商売を優先するよりも、「田舎暮らしの友」として仲良くなった方が楽しそうです。写真は著作権を知らせるクレジットさえ入れて下されば、無料の使用もOKしました。

わー、パンだ。すごく、美味しそう!
わー、パンだ!、クッキーだ!。すごく、美味しそう‥

で、その完成したリーフレットが昨日、届きました。それが、なぜか大きめの包み。開いてみると、フルーツのような甘い香りと小麦の香ばしい匂いが漂ってきます。なんと、自家製のカンパーニュとクッキー、これまた手作りのビールが同封されていました。

ずっしりと重いよ。それに、とても良い香り
ずっしりと重いよ。それに、とても良い香り

フランスパンは、夫も私も大好物。直径20㎝を超える分厚いパンを手に、小躍りしながら注意書きを見ると、直接、手で触れないように、との一言。ま、いいか。自分たちが食べるんだもの。ん、待てよ、お隣の奥さん、堅めのパンが好きだと聞いたっけ。「お裾分けする?」と夫の方を見ると、戴いたビールを急々と冷蔵庫へ入れてる最中。こちらを一顧だにしません。

なんか愛しく思える形と手触り。早く食べたーい
なんか愛しく思えるような形と手触り。早く食べたーい

ま、石鹸で手も洗ったし、大丈夫よね。お隣も親戚付き合いみたいなものだしね。半分に切って持って行くと、奥さんは大喜び。「こんなパン、ここでは買えないのよぉ。嬉しいー!」と、やはり小躍りしています。

お裾分けするためにパン切り包丁でカット
お裾分けするためにパン切り包丁でカット

さおりさんへお礼の電話をすると、パン作りの話題に。なんと、山芋やご飯などで発酵させた手作り酵母を使い、全粒粉と菜種油などで焼きあげたそうです。

割ってみると、中は黄色い生地。カボチャを練り込んであるそう
堅い生地を割ってみると、あれ?、中身が黄色いよ

パン屋の開業も視野に入れられているそうで、私たちよりも地に足がついた暮らしをされ、高い目標を目指しておられるのがとても眩しい。これを機に、伊那谷と白神のネットワークが繋げたらなあ、と勝手な願望を抱いています。

黄色い生地はカボチャを練り込んであるから
なんと、生地にカボチャを練り込んであるそう

そして、リーフレットを作られたご友人は、長野県辰野町でお仕事をされています。辰野といえばホタルの里。夫が新聞記者時代に、二度もホタルの取材で訪れた場所です。

さおりさんのパン工房、「こねこね会」のしおりとお手紙

当時、助手を兼ねて私も同行し、幻想的な光の舞に陶酔した思い出が蘇ってきました。はたまた、不思議な縁を感じながら、いつカンパーニュを頬張ろうかと思案している所です。当然、あなたはビールよね♪

ホタルの写真が使えないので、イメージカットで代用
ホタルの写真が使えないので、イメージカットで代用

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」12回目

白神シリーズの連載記事で書く最後のシノリガモです。

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」12回目
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」12回目

今年も親鳥が、繁殖活動のために3組も川を遡上してきたのですが、残念ながら営巣行動をみせず、子育ては失敗に終わりました。

大好きな石の上から水面に降りるヒナたち
大好きな石の上から水面に降りるヒナたち

様々な要因が考えられます。

岩が並ぶ急流の隙間を仲良く泳ぐ親子
岩が並ぶ急流の隙間を仲良く泳ぐ親子

たび重なる釣り師の立ち入りや、大雨による土砂の流入と堆積などです。でも、観察を始めたばかりなので、何が問題であったのかを断定するのは、時期尚早でしょう。

川への立ち入りを「遠慮してもらう」よう声掛けするも、竿を振り続ける釣り師
川への立ち入りを「遠慮してもらう」よう声掛けするも、竿を振り続ける釣り師

ただ、ここ数年は毎年のように可愛いヒナをお披露目してくれていたので、寂しい限りです。

危険が迫るとヒナを羽根の下に隠すお母さん
危険が迫るとヒナを羽根の下に隠すお母さん

3人娘をはじめとする地元の子供たちも、落胆の色を隠せません。とても残念です。

子育てへの理解と協力を訴えかける看板。9割の方は協力して下さる
子育てへの理解と協力を訴えかける看板。9割の方は協力して下さる

子育て出来なかった原因が、気象や自然環境だけにあるならば、野生の現象の一つとして長い目で見ることができます。が、人間の営みや活動によるストレスが要因であるならば、なんとか共存できる道を探り出したいものです。

石の上を休みながら遡上する親子
石の上を休みながら遡上する親子

世界自然遺産を源に流れる川の生態系。絶滅が心配されている個体群でもある鳥の貴重な繁殖地は、何とか守ってやりたいと考えています。

石の上で寄り添うお母さんに甘えるヒナ
石の上で寄り添うお母さんに甘えるヒナ
元気よく、石から飛び込むヒナたち
元気よく、石から飛び込むヒナたち

ようやく、その存在と重大さに気づき始めた地元の子供たちと共に。身の回りの出来事で凹んでばかりいられません。

がんばらなくては。

雨の日も風の日も雪の日も、一生懸命に観察する子供たち
雨の日も風の日も雪の日も、一生懸命に観察する子供たち

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」10回目

身辺に起きる「厄介ごと」を受け止めきれなくて、ブログやフェースブックからの発信を休んでいました。しかし、朝日小学生新聞の連載記事の更新は放置できなくて、書き込みを再開します。

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」10回目 シノリガモの記事
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」10回目 シノリガモ

今回は、自宅の脇を流れる川で子育てをするシノリガモのお話です。これまでは、山深い渓流で繁殖活動をする水鳥とされていましたが、民家が立ち並ぶ集落内を流れる川で、毎年のように愛らしい姿を見せてくれます。

繁殖期のカップル。美しいオスは、子育てを手伝わないで、早々にいなくなる
繁殖期のカップル。美しいオスは、子育てを手伝わないで、早々にいなくなる

このシリーズは3回に分けて紹介します。地元の子供たちとの交流や活動を深めるきっかけになってくれた、渓流の道化師たち。私たち夫婦は、この鳥が大好きになってしまいました。

健気に母鳥に付き従う姿が、超キュート!
健気に母鳥に付き従う姿が、超キュート!

ここ最近、あまりに不愉快なことや、悲しい出来事が続くので、夫婦ともに引き籠り状態になっています。フェースブックのアカウントも一時的に止めてしまい、ブログでの情報発信も休んでいました。

岩の上で休む仕草が案山子のように見えた
岩の上で休む仕草が案山子のように見えた

でも、「どうしたの‥。身体壊したの」とか、「なんか寂しいぞ!」と、お声掛けを戴き、少しずつ元に戻すべく行動を再開しています。ここでは公表できない懸案事項は、まったく解決の糸口を見いだせませんが、頑張って前へ進むしかなさそうです。

お母さんと一緒に休憩。眠くて目をつぶっている子も‥
お母さんと一緒に休憩。眠くて目をつぶっている子も‥

また、皆さまに、笑顔で報告できるよう努力いたします。ご心配をお掛けして、申し訳ありませんでした。

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」9回目

今回は、見ただけで身の毛がよだつ、という方もいらっしゃるヘビです。ナミヘビ科に属するヤマカガシ。白神山地の渓流では、ごく普通に見かけます。それどころか、我が家の庭にも住み着いているようで、納戸の出入り口のコンクリの上で、時々、日向ぼっこしているのを見かけます。

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」8回目 ヤマカガシの記事
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」8回目 ヤマカガシの記事

記事にも書いてある通り、日本産の毒蛇、マムシやハブよりも、強い毒を持っています。今から約30年前に、捕まえて遊んでいた中学生が噛まれて死亡した事故が発生して以来、危険なヘビだと認識されています。死亡例は多くないですが、重症化した症例は数十件あるそうなので、うかつに触らない方が身のためです。

高校生と実施した流木回収の作業に、こっそりと参加していたヤマカガシ君。さぁ、どこにいるのでしょうか?
高校生と実施した流木回収の作業に、こっそりと参加していたヤマカガシ君。さぁ、どこにいるのでしょうか?

ただ、喉の奥に毒を出す牙があり、指先を口に中に差し込んで噛まれるような事がない限り大丈夫そうです。治療するための血清を常備しているのはジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所・群馬県太田市)とされています。ヤマカガシに噛まれても、すぐに症状は出ないので、心当りがある方は、相談した方がよいでしょう。

同じ毒でもこちらは毒キノコのニガクリタケ。抜根を覆い尽くしていた
同じ毒でもこちらは毒キノコのニガクリタケ。抜根を覆い尽くしていた

いずれにせよ、おとなしい蛇なので、見つけても虐めたりしないで下さい。それこそ、「さわらぬ神に祟りなし」ですよ。

 

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」8回目

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」8回目
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」8回目

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」の8回目は、カイツブリです。白神山地の麓に点在する小さな湖沼で、毎年、子育てを続けています。

新緑の色が映り込む湖面を泳ぐカイツブリの夫婦
新緑の色が映り込む湖面を泳ぐカイツブリの夫婦

有名なアカショウビンを狙って愛鳥写真家が数多く訪れる場所なのですが、この鳥は地味なせいか、ほとんど注目されていませんでした。

餌に向かって矢のように飛ぶアカショウビン
餌に向かって矢のように飛ぶアカショウビン
池の上の木から獲物を狙うアカショウビン
池の上の木から獲物を狙うアカショウビン

でも最近は、この鳥の子育てを撮りに来られる方が徐々に増え、レンズを構えている姿もチラホラとお見受けします。

水上に突き出た朽木に巣を掛けるカイツブリ夫婦
水上に突き出た朽木に巣を掛けるカイツブリ夫婦

注目されるのは、環境保全や、生物多様性を考えてもらう上では喜ばしい事です。が、ブラインドテントに入らず長時間に亘って見続けたり、観察中に動き回ったりされる方もいるようで、親子も気が気じゃない様子。

背中に乗せたヒナに餌を与えるカイツブリ夫婦
背中に乗せたヒナに餌を与えるカイツブリ夫婦

今年も順調に子育てをしていますが、巣が空っぽな時も多く見かけます。巣の周辺は、まさに彼らの「マイホーム」。一番安心して、餌や休息をとる場所なので、少し心配です。

縄張りに侵入してきたカワウ。カイツブリに追い出されていた
縄張りに侵入してきたカワウ。カイツブリに追い出されていた
カイツブリの巣を狙って湖畔にやってきたアナグマのお母さん
カイツブリの巣を狙って湖畔にやってきたアナグマのお母さん

元来、目つきが鋭く、色も地味で、あまり人気がない鳥のように思えます。でも、両親が愛情深く子育てする姿は感動的で、オシドリ夫婦という格言を「カイツブリ夫婦」に改めたいぐらいです。

自分の嘴よりも大きな餌をもらったカイツブリのヒナ
自分の嘴よりも大きな餌をもらったカイツブリのヒナ

ほとんど水面で暮らしているので、陸に上がっているのを見たことがありません。家族が、独特の声で鳴き交わすので、近くにいれば、姿が見えなくてもすぐにわかります。

全身の羽根を膨らませて、雄たけびを上げるカイツブリ
全身の羽根を膨らませて、雄たけびを上げるカイツブリ

白神山地の初夏、小さな池に、彼らの子育てを見に行かれるのならば、なるべく親子に負担を掛けないでやって下さい。そうすれば、毎年、健気な親子と再会できますから。

暮れなずむ水面で仲良く泳ぐカイツブリの親子
暮れなずむ水面を仲良く泳ぐカイツブリの親子

 

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」7回目

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」7回目 ニホンアナグマ

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」7回目、「ニホンアナグマ」です。白神山地の麓の集落内や道路上、里山の森で、最も姿を見かける愛嬌者です。ロボットカメラの前にも、頻繁に顔をのぞかせてくれます。

毛並みが美しいアナグマ
落ち葉の森に現れた毛並みが美しいアナグマ
水鳥のヒナやカエルを狙って水辺に出現したアナグマ
水鳥のヒナやカエルを狙って水辺に出現したアナグマ

でも、心配な事が。毛皮に覆われた哺乳動物にとって辛い、皮膚病の「疥癬(かいせん)」に罹った個体が見つかったからです。子供を連れたお母さんの皮膚が、やられていました。たぶん、手足で掻き毟ったのでしょう。患部がとても痛々しい状態です。

夜の林道に、集団で出てくることもある
夜の林道に、集団で出てくることもある
疥癬のため、毛が抜け落ちたお母さんアナグマ
疥癬のため、毛が抜け落ちたお母さんアナグマ

もし、子アナグマたちに感染していると、大流行する危険性があります。この森で、最近、キツネを見かけないのは、この病が広がっている可能性も考えられます。誰が持ち込んだのか不明ですが、生態系に大きな影響が出ないか心配です。

みんな無事に育ってくれるといいな
みんな無事に育ってくれるといいな

 

「男はつらいよ」 猫の寅次郎、家族に萌える

ショボクレテ来たが、まだまだお達者な「寅次郎」
だいぶショボクレテ来たが、まだまだお達者な「寅次郎」

以前、私たちのブログに登場した、20年を遥かに超えて生きているボス猫(我が家の庭にも「春爛漫」参照)。

寅次郎(後方)と娘の猫
猫の寅次郎(後方)と、その娘なのかな?

半野良で、歩くとヨタヨタしているし、目もあまり見えていない様子。いつお迎えが来てもおかしくない齢なのに、今日も飄々と白神の初夏を満喫しています。飼い主からの取材によると、名前は、「トラ」と判明。

寅次郎の娘と見られる美猫。お母さんになった
寅次郎の娘?と見られる美猫。お母さんになった

その人相風体(にんそうふうてい)。マドンナ猫への情熱的なラブコールと、見事なフラれっぷり。それでも懲りずに突き進む姿から、私らは愛着を込めて、「フカウラの寅次郎」と呼んでいます。

寅次郎(最奥)の孫の子猫(手前)。お母さんにそっくり
寅次郎(最奥)の孫?の子猫(手前)。お母さんにそっくり

その寅さんに、なんと「孫」ができました。実は、いつも追っかけていた、お向いのマドンナ三毛猫に、昨秋、可愛い娘が誕生。その娘に、この春、仔猫が生まれたのです。

やんちゃ盛りな仔猫に付きっきりのお母さん猫
やんちゃ盛りな仔猫に付きっきりのお母さん

寅次郎の恋が実って生まれた娘ならば、この仔猫は、たぶん「孫」。良かったね!、やったね!、家族が出来たんだね!、寅さん。でも、三毛猫と同居する若いオス猫の模様が、このお母さん猫と仔猫にそっくりなのが気になります。が、そんな事を気にする様子はない寅さん。母猫と仔猫を慈しんでいるようです。

私たちの方へ駆けてくる仔猫を、手を伸ばして止めようとするお母さん
私たちの方へ駆けてくる仔猫を、手を伸ばして止めようとするお母さん

 で、この仔猫。私たちが、「おいで」と呼ぶと、ヨチヨチと近づいて来ます。まったく警戒したり、怖がる様子はなし。だから、お母さんは、気が気ではありません。鳴きながら、手で引き寄せようとしたり、首根っこをくわえて連れて行こうとしたり。

お母さんに諭されて引き返す仔猫
お母さんの方へ踵を返す仔猫

やんちゃ盛りの子猫は、人間に興味津々。もふもふの毛のまま、目を輝かせて、走り寄って来ます。後ろで、オロオロと小声をあげて鳴くお母さん。もう、手に負えないようです。

子猫の背中を優しく噛んで連れて行こうとするお母さん猫
仔猫の背中を優しく噛んで連れて行こうとするお母さん

そこで寅さん登場。家族の危機を察知したのか、ゆっくりとした歩みで立ち止まり、私たちにニラミを利かせます。同時に、威嚇のために鳴いたのか、それとも仔猫を呼んだのか。寅次郎の口元が小さく動くと、撫でられる寸前まで近づいてきた仔猫が、ビクリとしてお母さんの方に踵を返しました。

「コラ、オカアチャンの言うことを聞きなさい」と叱る寅次郎。仔猫はシュン‥
「コラコラ、オカアチャンの言うことをちゃんと聞くんだぞ」と、叱る寅次郎。仔猫はシュン‥

寅さんの一喝で、しおらしくなった仔猫。頭を下げながら、ヨチヨチとお母さんの許へ。「よしよし、元気がいいな。でも、オカアチャンを困らせるんじゃねえぞ」と寅次郎。子猫も、「うん。ごめんね、寅さん」。

コラコラ、オカアチャンの言うことを、ちゃんと聞くんだぞ、と寅次郎(左端)
「ごめんなさい」と仔猫。寅次郎(左端)に擦り寄って行く

鼻先で優しく孫をたしなめる寅次郎‥。好々爺になったなぁ。そういえば、白髪も増えたし、毛も乱れてる。それに、ちょっと痩せたみたい。もう、あんまり長くないかも、と、ついホロりとしてしまいました。

「わかったよ、寅じいちゃん」と、顔を擦り付ける子猫。「寅さんの言うことは聞くのね」とお母さんはプンプン
「寅じいちゃん、好き」と、顔を擦り付ける仔猫。「寅さんの言うことは聞くのね」と、お母さん
すっかりショボクレテきた寅次郎。もう老い先、短いかな‥
すっかりショボクレテきた寅次郎。もう老い先、短いかな‥

が、それも束の間、いきなりお庭の木に、激しくマーキングして、縄張りを主張し始めたではありませんか。ぜんぜん、枯れてないな、おまえ。んー、我が家のお花のプランターに糞尿をしたのも、庭のテーブルの上にゲロを吐いたのも、やはり、寅次郎たちの仕業だったんだな。許せん!。情けをかけて損したよ。

「ん、寅さん、何してるの。ボクもやってみる」。ディスプレイする寅次郎を見る子猫
「ん、何してるの?。よし、ボクも‥」。マーキングする寅次郎を見る仔猫

人間に例えると、推定年齢は120歳以上。なのに、いまだ現役で、衰えを見せない寅次郎。庭を荒らす原因となる、子猫を増やすのはやめて!。ホント、困っているんだから。ん、まてよ、可愛がっている娘と仔猫は、ホントに寅次郎の子や孫なの?。何か色や模様が違っているんだけど‥。ま、いいか。それもこれも含めて、「フカウラの寅さん」だもん。うーんと、長生きして、地域猫の親分として君臨してね。家に来れば、美味しいお刺身でも、ご馳走するからさ。けっぱれ!、寅さん

長寿番付に出てもおかしくない年齢なのに、風格のある力強い歩みで立ち去る寅次郎。「まってー。ボクも一緒に行くよ」と仔猫
長寿番付に出てもおかしくない年齢なのに、風格のある歩みで立ち去る寅次郎。「まってー」と仔猫。深浦の寅さんは、まだまだ健在です

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」6回目

朝日小学生新聞の連載6回目は、「ニホンザル」です。青森県のサルは、人類を除けば世界で最も北に暮らしている霊長類ですが、悪事を重ねて、地域の嫌われ者に成り下がっています。

朝日小学生新聞連載企画「白神山地シリーズ」6回目のPDF
朝日小学生新聞連載企画「白神山地シリーズ」6回目のPDF

ごく少数が山から降りてきて、林縁に近い畑で落穂拾いをしている時はよかったのです。が、最近は数を増やし、人間が暮らす集落近くで繁殖し、どんどん増え続けています。農作物を重要な糧として。

集団で農場を襲うサルの群れ
集団で農場を襲うサルの群れ

子ザルの時から畑の作物を食べて育つと、簡単には山へ帰りません。というか、もう厳しい環境の白神の森では暮らせない可能性もあります。そんなサルたちが大挙して押し寄せて来るので、零細農家やお年寄りが生き甲斐のために作る畑は、全滅状態までやられる時もあります。

キョロキョロと、周りを窺いながらカボチャ畑を荒らすサル
キョロキョロと、周りを窺いながらカボチャ畑を荒らすサル
親子連れ。とても愛らしいが‥
親子連れ。とても愛らしいが‥

サルとの戦いに疲れて、畑をやめしてしまうと、記事にも書いてあるように、また耕作放棄地が増えて、野生動物が人の暮らしに近づきやすくなるのです。こうした現象が、過疎と限界集落化が進んだ、国内のあちこちの地方で起こっていると聞きます。

ジャガイモ畑をサルに荒らされ、見成熟な芋を慌てて収穫するお年寄り
ジャガイモ畑をサルに荒らされ、未成熟な芋を慌てて収穫するお年寄り

狩猟採集から農耕が生活の中心となるなかで、山を切り開いて畑にしたり、炭焼きをしたりして、利用し続けてきた里山。これが放置され、元へ戻って行くことで発生している、まさに「自然の逆襲」です。

サルの害獣駆除で、空砲を撃って追い払う伊勢親方
サルの害獣駆除で、空砲を撃って追い払う伊勢親方
捕獲されて、身体測定されるサル
捕獲されて、身体測定されるサル

野生動物にとって、環境の厳しい山の中より、簡単に食べ物が手に入る里の森は、魅力ある棲家となります。サルだけでなく、ツキノワグマやニホンカモシカ、外来種のハクビシンやアライグマ(私たちは未確認)までが、畑を荒らしに来るそうです。

一輪車を押して、畑に向かうお年寄り
一輪車を押して、畑に向かうお年寄り
畑仕事を終えて自宅へ向かう近所のお年寄りたち
畑仕事を終えて自宅へ向かう近所のお年寄りたち

少子化などのため、人間の勢いは、どんどん弱くなっています。でも地方には、高度経済成長時代を支えた高齢者が、まだ数多く暮らしています。そして、そのほとんどが、何らかの形で農業などの一次産業を営んでいますが、とても悠々自適とはいえない暮らしです。

私らが暮らすひなびた集落。山が迫った海岸性にへばりついている
私らが暮らすひなびた集落。山が迫った海岸性にへばりついている

それを支える自治体も、若者の都会への流出などで税収が大幅に減り、自力で踏ん張れる力もありません。そう、国からの補助がないと、立ち行かなくなるような事態に陥っています。

五穀豊穣を願う神事の準備をするお年寄り。後継者は‥
五穀豊穣を願う神事の準備をするお年寄り。後継者は‥

そんなお年寄りと弱小の自治体が、自然の逆襲にどこまで抗えるか、先行きはまったく見通せません。いや、もう未来に希望が見いだせないぐらいに、疲弊しきっています。

テレメトリー(電波発信機)を取り付けられて、群れに返されるサル
テレメトリー(電波発信機)を取り付けられて、群れに返されるサル

都会で暮らす人たちの中には、このように追い詰められた故郷を持っている方がいるはずです。盆正月に帰るだけでなく、一度、振り返って地方の現状に思いを馳せて下さい。そして可能ならば、手を差し伸べてやって貰えませんか。で、自分の親や親せきが亡くなったら、もういいや、と切り捨てないで下さい。

家族連れで農場を襲うサルの群れ
家族連れで農場を襲うサルの群れ

そうでなければ、日本人が縄文時代から培ってきた、「自然と共存しながらの暮らし」が、ここ数十年以内に消え去ってしまうかもしれませんよ。「安倍ノミクス」も、危険なナショナリズムを煽るより、本当の意味の「古き良き日本」を大切にして貰いたいものです。

伊勢親方も75歳。後継者もなく、いつまで猟を続けられるか‥
伊勢親方も75歳。後継者もなく、いつまで猟を続けられるか‥

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」5回目

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朝日小学生新聞連載企画「白神山地シリーズ」5回目のPDF

朝日小学生新聞の連載企画「世界遺産の森から島から」に、白神山地シリーズ5回目の記事が掲載されました。今回はニホンイタチの話です。小さい体ながら、俊敏な動きと獰猛さが売りの小型肉食獣。民家の周辺にも頻繁に現われ、家禽類を襲ったり、干してある肉や魚を失敬したりする、嫌われ者です。

雪上を鞭のように身体をしならせて走るニホンイタチ
雪上を鞭のように身体をしならせて走るニホンイタチ

鞭のように身体をしならせて動きまわる姿を、普段、肉眼で捉えることは難しく、まさに森に生きる「忍びの者」のような存在です。そして、白神山地では、ネズミなどのげっ歯類が増えすぎるのを防ぐ重要な役割を担っており、貴重な原生林に息づく多様な生態系の一員として、太古から生き続けてきました。

哲二が残した雪の上の足跡に落ちて、シャチホコのような姿になったイタチ
哲二が残した雪の上の足跡に落ちて、シャチホコのような姿になったイタチ

ロボットカメラの前には、そう頻繁には登場しません。が、雪の上などを走り回っている姿が写っていると、ものすごく愛らしくて、嫌われ者と思いたくありません。我が家では、「イタちゃん」と名付け、しばらく携帯電話の待ち受け画面に使っていました。

ジャンプ力もすごい。木の上から、飛翔する鳥に飛びついたりすることも
ジャンプ力もすごい。木の上から、飛翔する鳥に飛びついたりすることも

深浦のマタギ・伊勢勇一親方や集落の長老らに聞くと、終戦後の貧しい時代、筒罠を使うと簡単に捕獲できたので、皮を取るためにたくさん獲られたそうです。今でも、イタチの毛を使った毛筆は高級品とされています。

アオバトの巣がある樹上を見上げるイタチ
アオバトの巣がある樹上を見上げるイタチ

ロボットカメラにウサギが写ると、その後を追うように登場するイタちゃん。今夜も、目にもとまらぬ動きで、ネズミやウサギを追いかけているのかな。また、電話の待ち受け画面に使いたくなってきたなぁ。私のは、時代遅れのガラパゴス携帯だけど。

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」4回目

朝日小学生新聞の連載企画「世界遺産の森から島から」に、白神山地シリーズ・4回目の記事が掲載されました。今回から、白神山地の生き物を紹介してゆきます。まず、最初に登場するのが国特別天然記念物のニホンカモシカくんです。

朝日小学生新聞連載企画「白神山地シリーズ」4回目のPDF
朝日小学生新聞連載企画「白神山地シリーズ」4回目のPDF

地元では、アオジシと呼ばれています。生物学的には、とても貴重な存在ですが、白神の森では、結構、出会える子です。過去に、我が家から3軒隣のお宅の窓を突き破って、家の中に飛び込んできたことがあったそうです。ウシの仲間なので、意外に大きくて、力持ち。屋内を無茶苦茶にされたよ、と家主のご夫婦が、笑って話して下さいました。

森の中から姿を現すニホンカモシカ
森の中から姿を現すニホンカモシカ

最近、白神山地への「ニホンシカ」の侵入が取り沙汰されていますが、私らのロボットカメラには記録されていません。西目屋村の方では撮影されているので、心配です。が、白神山地には、過去にニホンシカが棲息していた痕跡があったそうです。人為的なものか気象の為かは不明ですが、何らかの原因で絶滅したのだと考えられます。

遊歩道を歩くニホンカモシカ。人もクマも歩く道。ニホンシカは記録できていない
遊歩道を歩くニホンカモシカ。人もクマも歩く道。ニホンシカは記録できていない

ただ、ニホンシカが存在した当時は、ニホンオオカミも生き残っていたと思われます。シカの天敵であるオオカミが滅びてしまっている今、繁殖力が強いニホンシカが増え過ぎると、生態系に深刻な事態を巻き起こします。侵入を防ぐために何をすべきか。きちんとした態勢を組んだ調査と、侵入を確認した時に働ける狩猟者の確保だと思われます。この問題は、また、章を改めて記します。