みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
狩猟・採取

アクセサリーの販売を開始しました(上)

リボーンアクセサリーとして生まれ変わるガラスたち

下記のURLがアクセサリーの販売ページです。

https://minne.com/@shirakami123

青森県深浦町の小中高校生の女の子たちと一緒に始めた取り組み、「リボーン・アクセサリー」の販売を開始しました。まず、インターネット媒体の「minne(ミンネ)」でスタート。今後は、地元の土産物屋さんやターミナルの売店などでも売りだそうと考えています。

ヘアピン

リボンを模ったアクセサリー

この活動は、少子高齢化に悩む青森県深浦町での地域おこし活動の一環として、数年前から準備を重ねてきました。そして昨年、「深浦町地域の魅力向上支援事業費補助金交付」を受けることになり、高校生を中心とした地域の女の子たちと「青い森の白い神の花工房」というアクセサリーショップを設立しました。

プレゼンテーションした5人の女子高生の自画像イラスト=ちーちゃん作成

まず、高校生たちが、町へプレゼンテーションした、夢と希望を織り込んだ想いを知ってやって下さい。その内容をここへ公開いたします。

スプリングエフェメラルとして名高いキクザキイチゲ。白神山地を代表する春の草花

あおちゃん(リーダー)

✿リボーン・アクセサリーの開発のきっかけについて(あおちゃん)

私たちがリボーン・アクセサリーの開発に取り組むきっかけは、ふるさとの環境と深い関係があります。世界自然遺産・白神山地をのぞみ、西には美しい海岸線が連なる深浦町。ここで育った私たちは、幼いころから自然と親しんで暮らして来ました。ただ、過疎が進んだ深浦には、近くにテーマパークもショッピングモールもありません。それゆえ、友達と遊ぶときは、海辺で夕日を見たり、きれいな貝殻を拾ったりしていました。

深浦町の日本海へ沈む夕日

特に女子に人気があったのが、浜に流れ着くガラスでした。波に洗われ、角が取れ、丸くなったガラスの破片は、「シーグラス」と呼ばれています。私たちはこれを、「ガラス石」と名付け、競って拾い合います。そして、「いったいどこから来たのかな」と海の向こうの外国に想いをはせたり、「いつの時代のどんな人が使っていたのかな」と想像をふくらませたりする、大切な宝物でした。時には、拾ったガラスをビンに詰めたキーホルダーや、額に張ってフォトフレームを作ったりしていました。

海岸でシーグラスを拾うメンバーたち

高校生になって、学校での地域おこしへの取り組みや町の行事のお手伝いをする機会が増えて、深浦町の未来を考えるようになった私たち。自らも地域のために何かできないか知恵を絞り合い、大好きな「シーグラス」を使った特産品の開発に取り組むことにしました。

ガラスの破片を仕分けるメンバーたち

材料の調達から始めて、加工方法の考案、どんな物を作ったら良いのか、デザインはどうするかなど、すべてを皆で話し合って決めます。約一年前から案をねり、試作品を作っては却下されるなど、試行錯誤を続けて来ました。その中で、「シーグラス」だけではなく、家庭から出るワインなどやガラス加工の事業所の廃ガラスなど、ゴミとして捨てられるガラスも利用することになりました。

楽しみながら海岸清掃に励むメンバーたち

製品の総称である「リボーン・アクセサリー」とは、廃棄物をリサイクルして作ったアクセサリーであることから、「生まれ変わらせる」という願いをこめて、私たちが名づけました。英語のR(アール)e(イー)b(ビー)o(オー)r(アール)n(エヌ)、リボーンというスペルを当てはめたのです。

拾ったシーグラス(左)がアクセサリーの原石に

浜辺のシーグラスも、海岸清掃では見過ごされてきたゴミ。これを拾い集め、世界遺産のふもとの町として恥じない、美しい自然環境を取り戻すのと同時に、深浦町の特産品づくりができたらと願っています。そして、地域の女の子たちの輝ける働き場所が創造できるよう、この事業企画へ期待を込めました。

新緑の白神山地

この後、仲間たちが、「事業目的」「販売方法」「白神の生き物を観察する会」などの説明を致します。それぞれ担当を分けているのは、皆で力を合わせてこの活動に臨んでいるからです。実技は、チーム内で最も手先が器用なサキが担当しています。

作成するメンバーたち

宇京さん

❀事業の目的(宇京さん)

リボーン・アクセサリーを製造、販売することは、まず、廃棄物を再利用して生まれ変わらせる、つまり、リボーン=(イコール)生まれ変わらせて、新たな命を吹きこむ活動です。

ガラスを選別するメンバー

日本ジオパークに登録された深浦町の海岸

日本ジオパークにも登録された深浦の美しい海岸線。そこに流れ着いたシーグラスは、一見、きれいで可愛らしいのですが、元を正せばガラスのゴミです。なかでも尖ったものは、海水浴客や漁業関係者らの安全を脅かすことも心配されます。さらに、鳥などの野生動物や海洋生物が餌と間違えて体内に取り込むと、貴重な生態系に重要な影響を与えてしまうのです。

波打ち際に寄せられるハタハタの卵を食べるカモメの仲間

町では、定期的に海岸の清掃を実施されていますが、シーグラスのような小さなガラス片まで除去することは難しく、ほとんどの浜で、砂や砂利に紛れたまま放置されています。

打ち寄せられたゴミで足の踏み場もない海岸。後方には難破船が捨てられていた

私たちは、そこに目を付けました。大人が除去しきれない「小さなゴミ」を自然海岸から取り除くことが、環境にも観光にも優しい取り組みになるからです。そしてアクセサリーに加工し、販売することで、厄介者のガラス・ゴミを貴重な資源に生まれ変わらせることに繋がります。

琉球ガラスを再利用したイヤリング

アクセサリーを作る活動に臨む大学生と高校生

そして、この事業のもう一つの目的です。

作業風景をNHKさんに取材される

深浦町の総人口は9000人足らずで、今から60年前に比べると約6割も減少しています。住民は高齢化し、若者の都会への流出も止まらず、限界集落化が深刻な勢いで進んでいます。

高齢者が目立つ深浦町

それはひとえに、若者たちの心を揺さぶるような働き場所がないことです。特に高校を卒業した女子たちは、役場や第三セクターの宿泊施設などへ若干名、就職できるだけで、ほとんどが首都圏や周辺の都道府県の都市部へ流れ出てしまいます。不定期に、一部の縫製工場や大規模農家なども受け入れて下さいますが、その数はごく僅かです。

データー処理するメンバーたち

そんな現状をなんとか打開できないものかと、地元の女子高生と都会のボランティア大学生らが知恵を出し合って考案したのが、このリボーン・アクセサリー計画。閉塞感が漂う過疎の村の女の子たちが、自らの力で起業し、世界自然遺産の町・深浦の魅力を詰め込んだ環境に優しい商品を発信するのです。

ワインの瓶から作ったピアス

都会の大学生たちと交流する深浦の高校生たち

これは、同じような思いを抱きながら、他の地方で暮らしている女子たちへ、「自分たちも、やればできるんだ」という、勇気と希望を抱いてもらえる企画になるのでは、と期待を込めています。

白神山地の渓流で育つシノリガモのヒナ。人間の子どもたちも元気に巣立ってほしい

アクセサリー作りを取材された深浦町の小学生たち。彼らが次代を紡ぐ

可能ならば、深浦町の特産品として、「ふるさと納税」の返礼品や地元の特産品売り場などで、私たちの考え方やメッセージを添えて、販売することを目指しています。そして、インターネットを通して日本全国へ販売することも視野に入れています。その販売ページへ、リボーン・アクセサリーの理念を掲げるのと共に、環境に優しい町「深浦」のPRも重ねて紹介いたします。(つづく)

白神山地の森で環境保全の活動をする深浦町の子供たち

学生ボランティアのページを作りました

深浦町で実施した森林スタディキャンプで、別れを惜しむ地元の小学生(左)と都会の大学生

長らくご無沙汰してしまって、申し訳ありません。ホームページの内容を見て、嫌がらせをする方が出てきたため、しばらく書き込みを休んでいました。自分たちへの行為だけならいざ知らず、関係者へ迷惑を掛けられることに対策が見い出せなくて、手をこまねいていました。ようやく収まってきたようなので、また、再開いたします。

糸満市の壕の調査をするみらいを紡ぐボランティアのメンバーら

北海道にある沖縄戦戦没者の慰霊碑に、水を手向けるみらボラの学生

さて、書き込みを休んでいた時期に、さまざまな出来事がありました。伊勢親方の急逝。一緒に活動していた学生ボランティア団体との別れ‥、など。辛く、悲しい出来事ばかりが起きました。そして、執筆を担当している私が体調を壊し、難病になってしまいました。交通事故に遭って以来、ずっと不幸なことが続いています。

深浦町役場で活動の説明をする「みらボラ」の学生メンバーたち

深浦町での神事の終わりに草鞋を投げる大学生。一番高い梢に引っかければ良縁が訪れる

でも、お別れした学生団体の中から、私たちを慕って来てくれる子どもたちが何人かおり、その子たちが新しいボランティア組織を立ち上げてくれました。その名は「みらいを紡ぐボランティア」です。自分たちの活動内容や想いを未来へ引き継ぎたい、との発想から生まれたそうです。

みらボラのメンバーが主催した森林スタディ・キャンプで、ペットボトルを再利用したキャンドルナイトを開催した

都会と地元の大学生と地域の方々との交流事業

主に、戦没者の遺骨取集、地域おこし、環境保全などの取り組みを中心に頑張っていきたいと、宣言してくれています。涙が出るほど嬉しい。夫婦二人で続けている遺骨収集や遺留品返還の活動にも飛び込んできて、中心になって支えてくれると張り切っています。あの戦争を次の世代へ引き継ぐ難しさを痛感していた時期なので、この頼もしき学生たちを大いに期待して見守りたいです。

ご遺族へ約70年前のお手紙を返還する活動。学生が朗読する母(左端の遺影)の手紙の内容に涙するご遺族

感極まって涙する学生。でも、報告に澱みはない

よって、このホームページを学生たちにも開放しようと考えています。今までは、夫婦だけで執筆していましたが、今後は若き新しい息吹きが加わります。そして、これを機に、HPを復活させますので、皆さまの新たなご愛顧をお待ちしています。学生メンバーは、都会の大学生が中心ですが、青森県の学生も参加してくれていますので、その声もいずれは届けたいと考えています。

納骨堂でご遺族と一緒に手を合わせる学生たち

お手紙を返したご遺族宅で、戦没者の遺影を手にする甥御さん。涙と笑顔がこぼれる訪問劇

そして、今まで高校生として活動に参加してくれていた子たちが、社会人となって私たちを支えてくれるようになっています。そんなメンバーが新たな取り組みにチャレンジしています。その件も、いずれ公開いたしますので、期待してお待ちください。2018年は完全復活を目指して頑張ります。読者のみなさま、改めてよろしくお願い申し上げます。

戦没者が戦地から送った絵葉書を見る学生たち。切ないけど、かわいい内容に笑顔がこぼれる

友よ遠方より来る

律子の同期の友
律子の記者時代の友人・ミヤコちゃん

新聞記者の駆け出し時代。兵庫県で警察回りをしていた時代の友が訪ねて来てくれました。若き頃、辛くもあり、楽しくもあった「苦楽の汗」を一緒に流した仲間です。

真っ盛りのマスタケ
真っ盛りのマスタケ

早速、初秋の山へ行き、キノコ狩りに行きました。「マイタケを採るぞー」と、勇んで駆け上がりましたが、少し時期が早かったようです。いつも出ている木には、影も形もありません。

マスタケと友
哲二の友人・ノンフィクション作家の角岡信彦氏。大きなマスタケに驚く

案の定、マイタケが出る時期には、盛りが過ぎているマスタケが最盛期でした。ま、これでもOK。今夜は、マスタケ入りのすき焼きやバター炒めで一杯飲むか‥

木の裏側にも盛りのマスタケが‥
木の裏側にも盛りのマスタケが‥

東奥日報「Juni Juni」の連載:10回目

東奥日報「Juni Juni」の連載:10回目
東奥日報「Juni Juni」の連載:10回目

今回の「Juni Juni」連載は、地元農家の嫌われ者、「ニホンザル」です。下北の個体群と同様、世界最北端に生息するサルたちですが、増えすぎて田畑の農作物を襲うため、一部が間引かれる事態にまでなっています。

集団で農場を襲うサルの群れ
農場に現れたサルの群れ

以前は、白神山地の奥地で、わずかな群れが平穏に暮らしていました。麓の村に下りてきて、悪さをする個体も少なく、駆除の対象にもなっていません。地域の人も、「サルに悪戯をすると罰があたる」と、畏怖の念を抱くほどでした。

親子連れ。とても愛らしいが‥
親子連れ。とても愛らしいが‥

それが、ここ最近、急激に数を増やして、麓の村々を困らせています。なぜ、増えてきたのか?。その理由は、判っていません。マタギたちの高齢化により、狩猟圧が減ったことなのか。過疎と限界集落化で、人間の力が弱まっているのをサルが見抜き、攻勢に出てきているのか。

キョロキョロと、周りを窺いながらカボチャ畑を荒らすサル
キョロキョロと、周りを窺いながらカボチャ畑を荒らすサル

研究機関などの調査も、ほとんど進んでいないので、判別がつかないのです。そして、サルだけでなく、クマやハクビシン、アライグマ、カラスなどが、害獣となって農地を襲う、「動物たちの逆襲」が続いています。

サルの罠である折を運ぶ役場の職員
サルの罠であるオリを運ぶ役場の職員

先日、近所のおばあちゃんが、我が家の軒先に捥ぎたてのトマトを4~5個、置いてくれました。外出先から帰ってくると、今まさにトマトを持ち去ろうとしている若いサルと鉢合わせ。「コラッ!」と、夫・哲二が、拳を振り上げて追い払います。

農園で落ち穂を披露サルの家族
農園で落ち穂を拾うサルの家族

が、敵もサルもの。瞬時に我が家の屋根へ飛び移ります。そして、どうしてもトマトが欲しいらしく、立ち去りません。しばらく睨み合っていましたが、ボス猿のような哲二の風体に恐れをなしたのか、渋々と山の方へ戻っていきました。

母サルがカボチャを持ち帰るのを木の上で待つ子ザルたち
母サルが餌を持ち帰るのを木の上で待つ子ザルたち

小柄な若い個体だったので、1個ぐらいあげてもいいかな、と思いましたが、哀れみは禁物。一度、餌付けたら、毎日のように押しかけてきます。そうしたら、私たちだけでなく、近所の農家すべてが困らされるのです。

花火で追い払い。後方に捕獲用の檻が設置してある、同町で
花火で追い払い。後方に捕獲用の檻が設置してある

どうして、人間と敵対するようになったのでしょうか。やはり、過疎と高齢化で人口が減り、農業を担える人材が少なくなっているのが要因だと思われます。若手で農家を専業にする方も、町内には数えるほどしかいません。ほとんどが兼業か大規模な農場で働いているからです。

畑仕事を終えて自宅へ向かう近所のお年寄りたち
畑仕事を終えて自宅へ向かう近所のお年寄りたち

そして、個人の小さな田畑は、そのほとんどをお年寄りが管理しています。そんな畑におばあちゃんしかいないと、サルは平然と侵入し、目の前で作物を持ちさります。おばあちゃんが騒いだり、石を投げたりしても、まったく無視。人の強弱を値踏みしているかのようです。

ジャガイモ畑をサルに荒らされ、見成熟な芋を慌てて収穫するお年寄り
ジャガイモ畑をサルに荒らされ、見成熟な芋を慌てて収穫する

この地域で心配なのは、こうした農業を生き甲斐にしているお年寄りたちへの被害です。日課にしている畑仕事が獣害で継続できなくなったら、体を動かすことができなくなります。社交場としていた畑に出なくなれば孤独感が募り、よけいに参ってしまうのです。そうして寿命を縮めたという例も聞きました。

サルの害獣駆除で、空砲を撃って追い払う伊勢親方
サルの害獣駆除で、空砲を撃って追い払う伊勢親方

何とか対策を講じなけれならないのですが、小さな市町村が対応するのも限界があります。深浦町も専従の職員を雇ったり、猟友会に全面的な協力をお願いしたりして、対策を講じていますが、サルの数は一向に減らず、農業被害は深刻なままです。

捕獲されて、身体測定されるサル
捕獲されて、身体測定されるサル

できれば、大学などの研究機関と国が対策を講じてほしいものです。地方への経済効果の波及を狙う、「ローカル・アベノミクス」とか、「地方の変革」とか、スローガンは立派ですが、地方のおばあちゃんたちへは、何も届いていません。それよりも、若者が都会へ出ていかなくても暮らしていける、「素晴らしい故郷」を再構築させてください。

サルに荒らされたカボチャ畑で呆然と立ち尽くすばっちゃん。ほどんど収穫できず、ほぼ全滅した。約半年間、手塩にかけて育ててきただけに、目尻から涙がこぼれた、同町で
サルに荒らされたカボチャ畑で呆然と立ち尽くすばっちゃん。収穫できず、ほぼ全滅した。約半年間、手塩にかけて育ててきただけに、目尻から涙がこぼれた

右翼的な発言の多い総理ですが、日本人が大事に守ってきた親兄弟や友人、そして故郷を大切にできるような施策は、ほとんど出てきません。金のばら撒きでない、実体の伴った政策をお願いしますよ。

テレメトリーを装着後、群れに還されるメスザル。調査員から、「もう悪さするなよ」と言われ、反省しているような表情を浮かべている、深浦町で
テレメトリーを装着後、群れに還されるメスザル。調査員から、「もう悪さするなよ」と言われ、反省しているような表情を浮かべている

ただ、間違っても戦争への道は、止めてくださいね。この村では、あの大戦の生き残りの兵士たちが、まだ畑に出て、鍬を握っているのですから。それよりも、サルとの争いを平和裏に解決できるよう、知恵と実行力をお貸しください。

早朝、朝日を背に森の中を歩いてきた群れ、同町の十二湖で
早朝、朝日を背に森の中を歩いてきたサルの群れ

東奥日報「Juni Juni」の連載:9回目

東奥日報「Juni Juni」の連載:9回目
東奥日報「Juni Juni」の連載:9回目

連載の9回目はニホンカモシカです。白神山地は、ニホンカモシカが暮らしやすい森。あちこちに食痕や足跡、フンなどのフィールドサインを見ることが出来ます。林道を歩くと、ブナの木陰からじっとこちらをうかがっている個体と出会うことも珍しくありません。

林道を歩く若い個体
林道を歩く若い個体

目があまり良くないのか、ブラインドテントに入っている時に遭遇しても、こちらがじっとしていれば、不思議そうな顔をするだけで、人間とは気づきません。好奇心旺盛で、仕掛けている動画の小型カメラに、「これ、なんだろう?」とばかりに、鼻先を寄せてくる姿が写っていたりします。

水場に現れた親子連れ
水場に現れた親子連れ
お母さんの後を追う子カモシカ
お母さんの後を追う子カモシカ

毛並も美しく、雪の季節を迎えるころには、丸々と太って、ころころ、ふかふかに。こうして北国の厳しい冬を乗り越えて、白神の森で子孫を残し、悠々と暮らしてきました。そんなニホンカモシカたちに、脅威が近づいています。

口や鼻先に腫瘍ができて、泡を吹くカモシカ
口や鼻先に腫瘍ができて、泡を吹くカモシカ

ひとつは、パラポックスウイルス感染症です。口の周りや足の皮膚などに潰瘍ができ、弱って死ぬこともある、恐ろしい病気です。私たちの暮らす集落でも、この病に侵され、体調が悪くなった個体が、塩やミネラルを摂ろうと海辺に出てきた例がありました。山に戻そうとみんなで努力しましたが叶わず、そのまま死にました。

片足を上げて
片足を上げて

もう一つは、二ホンジカの侵入です。険しい岩場や崖を昇り降りして、山の斜面を生活の場にするニホンカモシカは、草原や森林を好む二ホンジカとは住み分けできそうにも思えます。が、群れで繁殖する二ホンジカが爆発的に増えると、影響を受けてしまうかもしれません。

挑みかかるような姿勢のニホンカモシカ
挑みかかるような姿勢のニホンカモシカ
立派な角が生えたヤクシカのオス
立派な角が生えたヤクシカのオス

国の特別天然記念物であり、日本固有種のニホンカモシカは、白神山地を代表する大型獣のひとつです。脅威を乗り越えて存続できるよう、見守り続けたいと思います。

冬毛でコロコロに。イノシシみたい‥
冬毛でコロコロに。イノシシみたい‥

東奥日報「Juni Juni」の連載:4回目

東奥日報「Juni Juni」の連載の4回目「ニホンアナグマ」
東奥日報「Juni Juni」の連載の4回目「ニホンアナグマ」

白神山地の森の中や麓の集落、道路沿いなどで、最も見かける生き物がニホンアナグマです。体格や風貌がイヌ科のタヌキに似ていますが、彼らはイタチ科。とても愛嬌があって、ユーモラスな風体なのですが、鳥のヒナやカエルなどの小動物にとっては、恐ろしい猛獣となります。

アナグマの家族
アナグマの家族

梅雨が近づくと、水鳥たちが子育てしている池の周りにやってきます。ヒナが泳ぎ回るのを陸からじっと見つめており、隙あらば襲いかかろうと考えているのでしょう。でも、泳げないのか、水中に躍り込んで行く勇気はないようです。同時期に産卵が本格化するモリアオガエルなどを食べて、森の中へ消えて行きます。

池の水辺でカイツブリの巣を狙うお母さんアナグマ
池の水辺でカイツブリの巣を狙うお母さんアナグマ

白神の生態系は、とても豊かです。哺乳類ではツキノワグマ、鳥類ではイヌワシを頂点とした、食物連鎖のピラミッドが完成しています。アナグマも、人間(マタギ)以外の捕食者は、ほとんどいないようで、数は増え続けているようです。

美しい毛並みの個体
美しい毛並みの個体

でも、その存在を脅かす大きな要因の一つが感染症。犬や猫などのペット類やキツネなどに流行った疥癬が、アナグマを蝕んでいるのです。夏から秋になると、家族で行動する個体が多く、一匹が罹ると、あっという間に群れに広がります。

疥癬のため、毛が抜け落ちたお母さんアナグマ
疥癬のため、毛が抜け落ちたお母さんアナグマ

それも、個体数を一定に保つ自然の淘汰力かもしれませんが、病気の個体を見かけると、かわいそうで‥。でも、太古の昔から続く、豊かな生態系を守るためには、出来る限り人間の力は加えない方がよいのでしょう。よほどのことがない限り、「がんばって」と、応援するだけにします。

水鳥のヒナやカエルを狙って水辺に出現したアナグマ
水鳥のヒナやカエルを狙って水辺に出現したアナグマ

でも、ロボット・カメラで撮影するのは許してね。それが、数少ない、観察できる手段だから。マタギの伊勢親方にも、「あまり獲らないで」と伝えておきます。なにしろ体格や風貌が、夫の哲二に似ているのですから(笑)

東奥日報「Juni Juni」の連載:3回目

東奥日報「Juni Juni」の連載の3回目
東奥日報「Juni Juni」の連載の3回目(紙面の著作権は「東奥日報社」にあります。無断使用や転用は厳禁です)

ゴールデンウィークの連休で1回分飛んでしまい、久しぶりの掲載です。マタギの親方の取材に関わったことで、白神山地の麓の集落に住むことになり、地元の子供たちと生き物の観察を始めるきっかけになった話です。

白神山地の麓の里山で、ウサギの皮をむく伊勢親方=深浦町で
今回も使ってもらえなかったウサギの解体。子供新聞だから、仕方ないけど‥
少し可哀想だけど、とても美味しい夕食になった
可哀想だけど、とても美味しいお鍋になった

世界自然遺産の住人といっても、現代風の生活を送る若い世代の方々は、自然と関わることが少ないように見えます。過疎の村には、勤め先も少なく、通勤や通学も遠方になってしまうため、ほとんどが車を使う暮らしになってしまいます。

熊見台の近くにある山の湧水。祝杯用のビール?
熊見台の近くにある山の湧水。誰かが冷やす、祝杯用のビール?
命の恵みに感謝し、獲った獲物はすべていただく。手も美味しい食材に
命の恵みに感謝し、獲った獲物はすべていただく。手も美味しい食材に

たまの休日も、最寄りの地方都市まで買い出しに行かなければならず、近くの森に出かけて散策する時間もありません。子供たちも、ほとんどがバスや電車通学のため、帰宅時間は決まっており、登下校時に寄り道したり、放課後に森で遊んだりできません。

獲物を狙う鋭い目
獲物を狙う鋭い目
春先に雪崩れた雪渓を越える親方

そして、若者が都会へ出てしまうことで「地方の少子化」が進み、子供たちの絶対数が少ないのです。お友達の家は歩いて行ける距離になく、休みの日は一人で自宅でゲームをしたり、テレビを見たりして、過ごしています。

子供たちに輪かんじきの着け方を教える親方
かんじきを付けて雪山を歩く親方。立ち上がるときに背筋を伸ばした
かんじきを付けて雪山を歩く親方。立ち上がるときに背筋を伸ばした

親方は、そんな子供たちのためにと、縄文以前の時代から続けられている「狩猟採集」の暮らしを実践して下さっています。この後のシリーズは、白神に暮らす生き物たちの紹介と伝統的な神事などを報告して行きます。ご期待ください。

高校生に木の種類を教える親方
高校生に木の種類を教える親方
精悍な面持ちで銃を放つ親方
精悍な面持ちで銃を放つ親方

東奥日報「Juni Juni」の連載:2回目

「Juni Juni」での連載記事の2回目  (紙面の著作権は「東奥日報社」にあります。無断使用や転用は厳禁です)
「Juni Juni」での連載記事の2回目  (紙面の著作権は「東奥日報社」にあります。無断使用や転用は厳禁です)

「Juni Juni」の連載です。前回の続きで、白神マタギたちのクマ猟に同行させて戴いた時のエピソードです。新聞記者や女性が、伝統的な仕来たりを重んじる山人たちに受け入れて貰えるのか、を描きました。ここでも、伊勢勇一親方の人徳と、岩崎マタギたちの「懐の深さ」に助けられました。

仕留めたクマに食らいつくロッキー
仕留めたクマに食らいつくクマの狩猟犬・ロッキー

今から、18~19年ぐらい前の話です。ご一緒した方々の一部は、すでに鬼籍に入られており、時の流れの速さを感じてしまいます。当時は、1995年に発生した阪神大震災やオウム真理教の一連の事件などが、世を賑わしていました。夫の哲二は、それらの仕事にも関わっていましたが、どちらかというと主に海外での紛争地取材に明け暮れていました。

仕留めたクマを引っ張る白神のマタギたち
仕留めたクマを引っ張る白神のマタギたち
アフガンの首都の近郊であった不発弾処理を伝える紙面
アフガンの首都の近郊であった不発弾処理を伝える紙面

アフリカ・ルワンダやアフガニスタンの内戦など、一歩間違えると、命を落としかねない戦場ばかりです。現場の事情に理解がある上司と組める時はいいのですが、新聞社内の論理や机上の空論を振りかざす上司が担当になると、現場を無視した無理難題な指令が下されたようで、とても苦労した、と振り返ります。

紙面での連載の一部
アフガン内戦を伝える紙面での連載の一部
哲二がアフガンで撮影した写真グラフ
哲二がアフガンで撮影した写真グラフ

中でも、アフガニスタンでは、あまりに理不尽な社命に憤り、上司に歯向かったところ、「もう君は二度と海外主張に出さない」と、強制帰国の命。帰ってすぐ、大喧嘩になり、腹立ちまぎれに未消化だった休暇を取って、私と箱根の温泉で骨休めしていました。

隠し撮りでタリバンが支配する当時のカブール軍空港を撮影した影像が掲載された紙面。見つかれば処刑の可能性も
隠し撮りでタリバンが支配する当時のカブール軍用空港を撮影した写真が掲載された紙面。見つかれば処刑されたかも‥
ルワンダ内戦のルポ
ルワンダ内戦のルポ

すると、社から一本の電話が。「南米ペルーで日本大使館が占拠された。すぐに行って欲しい」との命令。哲二は、「私は二度と海外へ出されないのでしょう。何ですか、舌の根も乾かぬうちに」と、憤激しています。そして、「お断りします。もう私は、国内の取材だけで充分ですから」

ルワンダの写真グラフ
ルワンダの写真グラフ
射止めたクマを解体するマタギたち。山の神に恵みを得る感謝をして、すべての部位をありがたく頂戴する
射止めたクマを解体するマタギたち。山の神に感謝をして、すべての部位をありがたく頂戴する

そして、白神山地で、マタギたちの生き様を追いかけることになったのです。上司の命令を蹴った後ですから、仕事に自由はまったく利きません。ゆえに、溜まっていた休暇を取って、出張の経費は自腹で取材していました。この時から、時期が来たら会社を辞める決意を固めていたようです。

阿仁マタギの流れを組む上杉親方と語る伊勢親方。上杉親方はかえでちゃんのお祖父ちゃん
熊撃ちの現場で、阿仁マタギの流れを組む上杉親方と語る伊勢親方。上杉親方はかえでちゃんのお祖父ちゃん
熊見台からクマを狙う伊勢親方
熊見台からクマを狙う伊勢親方

が、またしても、スノーモービルに乗る親方の姿を見た上司が、「現代のマタギはスノーモービルで猟をするのか。おもしろいな。それを記事にしよう」と指令。それだけを取り上げたら、世界自然遺産に登録された後、狩猟をする機会や場所を狭められて苦労する、山人たちを茶化すような内容になってしまいます。

冬場の狩猟で、スノーモービルに乗る親方
冬場の狩猟で、スノーモービルに乗る親方
秋のなめこの収穫
秋のなめこの収穫

そんな、ミスリードになりかねない記事と写真は出したくない、と哲二は拒否。また、意見が食い違ってしまい、あえてボツにしたそうです。そして、今までお蔵入りにしていた内容の一部を、東奥日報さんの「Juni Juni」の紙面を借りて報告しています。

熊見台でクマを探す
熊見台でクマを探す
ウサギ狩りに臨む親方。雪盲除けのメガネが時代を感じさせる
ウサギ狩りに臨む親方。雪盲除けのメガネが時代を感じさせる

ドロドロした企業内の嫌な話ですが、そうした事が重なって、会社を早期に退職してフリーとなる道を選んだ夫が、ずっと追いかけてきたテーマのひとつです。いつか、どこかで伝えたいと考えていました。

射止めたクマに手を合わせる伊勢親方
射止めたクマに手を合わせる伊勢親方
初冬、積もった雪からのぞくなめこを採取
初冬、積もった雪からのぞくなめこを採取

詳しい内容は、いずれまとめて発表しようと思っていますが、まず序章(プロローグ)として、お付き合いください。消えゆく日本の姿を地道に伝えていくために、今後とも、夫婦で取り組んでまいりますので。

皆既日食に浮かび上がるブナの梢
皆既日食に浮かび上がるブナの梢
皆既日食がブナの木陰から見えた
皆既日食がブナの木陰から見えた

東奥日報社の小中学生向け新聞「Juni Juni」で連載が始まりました:1回目

「Juni Juni」での連載記事の1回目
「Juni Juni」での連載記事の1回目  (紙面の著作権は「東奥日報社」にあります。無断使用や転用は厳禁です)

★「Juni Juni」紙面のURL 

http://www.toonippo.co.jp/junijuni/

朝日小学生新聞に次いで、青森県の県紙「東奥日報」の小中学生新聞「Juni Juni(ジュニ・ジュニ)」で、連載を担当することになりました。白神山地の生き物や、そこに暮らす人々の生活文化などを紹介する予定です。

県内での読者層が厚い地方紙なので、新参者の移住者が胸を張って出せる記事は多くありません。が、都会暮らしの長かった、転勤族の元新聞記者夫婦が綴るフォト・エッセーと、読み取って頂ければありがたいです。

雨の森に現れた、全身を水滴で光らせたツキノワグマ
雨の森に現れた、全身を水滴で光らせたツキノワグマ

この手の話を毎回、子どもたちへ向けた内容に仕立てるのがとても難しく、朝小でも苦労しました。連載終了後も、ほんとうに面白く読んで戴けたのだろうか、独り善がりでなかったのか、と自責の念にかられる日々でした。

また、新たな場所でチャンスを下さったので、今度はもっと解りやすく書かなければ、と謙虚な気持ちで臨みます。第一、第三火曜日の東奥日報・夕刊に折り込まれています。よければ皆さま、ご購読いただければ嬉しいです。

新緑のブナの木肌にクマの爪痕が残っていた
ブナの木肌にクマの爪痕が残っていた

最初は、旧岩崎村(約10年前に深浦町と合併)を取材で訪ねたときのエピソードと、クマのお話です。深浦町のマタギ・伊勢勇一親方にも登場願っています。

それでは、1年間、よろしくお願いします。記事の量や写真の扱いも、破格の大きさで掲載して下さっています。期待に応えて、頑張りたいと夫婦で誓い合ってます。よろしくお願い致します。

 

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」9回目

今回は、見ただけで身の毛がよだつ、という方もいらっしゃるヘビです。ナミヘビ科に属するヤマカガシ。白神山地の渓流では、ごく普通に見かけます。それどころか、我が家の庭にも住み着いているようで、納戸の出入り口のコンクリの上で、時々、日向ぼっこしているのを見かけます。

朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」8回目 ヤマカガシの記事
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」8回目 ヤマカガシの記事

記事にも書いてある通り、日本産の毒蛇、マムシやハブよりも、強い毒を持っています。今から約30年前に、捕まえて遊んでいた中学生が噛まれて死亡した事故が発生して以来、危険なヘビだと認識されています。死亡例は多くないですが、重症化した症例は数十件あるそうなので、うかつに触らない方が身のためです。

高校生と実施した流木回収の作業に、こっそりと参加していたヤマカガシ君。さぁ、どこにいるのでしょうか?
高校生と実施した流木回収の作業に、こっそりと参加していたヤマカガシ君。さぁ、どこにいるのでしょうか?

ただ、喉の奥に毒を出す牙があり、指先を口に中に差し込んで噛まれるような事がない限り大丈夫そうです。治療するための血清を常備しているのはジャパンスネークセンター(日本蛇族学術研究所・群馬県太田市)とされています。ヤマカガシに噛まれても、すぐに症状は出ないので、心当りがある方は、相談した方がよいでしょう。

同じ毒でもこちらは毒キノコのニガクリタケ。抜根を覆い尽くしていた
同じ毒でもこちらは毒キノコのニガクリタケ。抜根を覆い尽くしていた

いずれにせよ、おとなしい蛇なので、見つけても虐めたりしないで下さい。それこそ、「さわらぬ神に祟りなし」ですよ。