朝日小学生新聞の連載、最終回 朝日小学生新聞の連載の最終回 1年間、朝日小学生新聞で続けさせて戴いた連載の最終回です。私たちの拙い記事と写真にお付き合い下さいまして、心よりの感謝とお礼を申し上げます。 鴨撃ちの朝。鳥の飛び立ちを待つ親方 愛犬を呼ぶために薬莢の笛を吹く 最終回は、滅びゆくマタギ文化のお話です。有史以来、白神の森では、そこで暮らす人々が狩猟採集の暮らしをしてきたようです。時折り発掘される石器などから、そうした過去の生活文化が垣間見えるそうです。 新緑の森で、林道に雪崩れた雪の山を越える親方 愛犬と一緒に森を歩く親方 でも、お金があれば、ほとんどのものを手に入れる事ができ、そう苦労せずとも美味しい肉や野菜が食べられる昨今。伊勢親方のような、森の中で収穫物を得る「原始のような暮らし」は、現代の人には理解されない時代です。 早春の森で、クマを仕留めた親方 射止めたウサギを荷台に積み込んで 高齢になられた親方、最近は体調を崩されて、一時期は死の淵をのぞかれました。が、まさに、「不死身のマタギ」(笑)、なので、今は復活に向けてのリハビリに励んでおられます。 座礁船の横で、海を心配する親方 豊饒の海に座礁した厄介者を背に、海岸線を歩く 夫婦とも、父親を早く亡くしているので、親方の存在は、私たちの実父のようです。一緒に活動する子供たちにとっても、優しくて強い、スーパーお祖父ちゃんなのです。 高校生の前で流木を玉切りする親方 集めた流木を高校生らと洗う だから親方、ゆっくり養生して、元気になって、また一緒に森へ行きましょうね。そこで、いつものように私たちを厳しく、そして優しく指導してください。長生きして、一緒にマタギの文化を守って行きましょうね。 雪面に冬枯れた木の影が伸びる森を輪カンジキを着けて歩く親方 Post Views: 144
朝日小学生新聞の連載20回目 朝日小学生新聞の連載20回目 朝日小学生新聞の連載20回目は、マタギの伊勢勇一親方のお話です。今年76歳になられました。最近は、地域の子供たちにマタギの知識や技術などを、惜しげもなく教えてくださいます。さしずめ、「森の先生」です。 子供たちに木の洞の説明 収穫したてのマイタケの香りを嗅がす 親方は、青森県出身ではないのですが、東北地方の宮城県と山形県境の山深い村で、祖父や父親からマタギの魂を吹き込まれた、筋金入りの狩猟者です。今も、自らの「縄張り」を見回りに行くため、山行きを欠かしません。 初冬の森を歩く。落ちたら命が危ない急斜面でも、安定した歩み 春先、冬眠から覚めたクマを双眼鏡で探す親方。後方は向白神岳 それが最近、体調を崩されて、難しくなっています。一緒に森を歩ける機会が減ってしまった子供たちも、目に涙を浮かべながら、「親方大丈夫かなぁ」と、心配そうに囁きあっています。 高校生に木の種類を教える親方 小学生に森の話をする親方 今年も森にロボットカメラを設置する時期が近づいてきました。また、木造高校深浦校舎の新入生たちも、親方の「森の講和」を楽しみにしています。 縄張りの森でナメコを収穫 クマを撃つ瞬間 早く元気になってくださいね。弟子一同のたっての願いです。 雪盲除けのサングラスに冬枯れた白神の森が映る Post Views: 129
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」19回目 朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」19回目「キツネ」 朝日小学生新聞の連載19回目は「ホンドキツネ」です。この子たちが、また、森の中のロボットカメラに写らないんです。夜、林道を車で走っていても、出会える確率は低く、少し心配しています。 飛び跳ねるように遊歩道を走るキツネ 一時期、重要な獲物であるウサギが数を減らしていたようなので、そうした要因もあるのかな。自然のサイクルの中で、数の増減があることは仕方ないのですが、それ以外に理由があるのならば、心配です。 高校生が仕掛けたカメラの前にも登場 マタギの伊勢勇一親方が飼っていた犬が子どもの頃、海岸に散歩へ連れて行くと、数匹の子ギツネがじゃれついてきて驚いた、と話していました。巨大な風車が幾つも出来たり、座礁船が海岸に鎮座していたり(間もなく撤去予定?)、キツネが暮らしていた場所にも、様々な変化があるようです。 逃げる時に、はしたない後姿を撮られました でも、世界自然遺産の村は過疎化のためか、他の地域に比べて圧倒的に開発は進んでいません。いずれ、自然に逆襲されて、動物たちの方が、幅を利かせてくる時代が来るやも知れません。 夏毛の個体。とても痩せてます‥ そんな時には、山野の片隅でいいので、私たち夫婦も仲間に入れてください。親方のように、捕まえてお鍋にしたり、毛皮を剥いだりしませんので(笑) 降りしきる雪の中、赤外線センサーの小さな音に反応 Post Views: 244
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」18回目 朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」18回目のウサギ 朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」18回目は、ウサギです。日本国内では珍しい動物ではありませんが、白神山地の生態系にとって無くてはならない存在です。 雪の中、仕掛けたカメラの前を走るウサギ 雪深い山の中でも冬眠せず、冬の間も肉食獣や猛禽類の重要な獲物になります。また、伊勢勇一親方のようなマタギにとっても、生きていくために必要な肉や毛皮を得る、「森からの戴きもの」でした。 そして、もと来た方向へ戻って行く‥ 私たちが白神山地に関わって来た約20年の間、林道での夜間の目視や、地元の狩猟者の話などから、数の増減を感じることがありました。もし、森からウサギが姿を消してしまうことになれば、生態系のバランスは大きく変化するでしょう。 ピンと耳を立てて、周囲の状況を探る 白神山地ではこれまで、他の野生動物と同様に、ウサギの生息数や分布域などの生態調査が、ほとんど行われていません。特に世界自然遺産へ登録された後は、ニホンジカの調査以外は、ほとんど手つかずの状態で放置されていると思われます。 高校生が仕掛けたカメラにウサギが写る それゆえ、ロボットカメラによる森の生き物たちの撮影を続けることで、生態や生息数を知るお手伝いができればと考えています。最近は、地元の中高生らも意欲的に参加してくれ、心強い限りです。 ふかふかの冬毛とつぶらな瞳 フカフカした冬毛とつぶらな瞳。筋肉隆々の足で躍動する夏毛の姿は、カメラで捉えた野生動物の中でも、1、2を争う人気者です。いつまでも、白神山地で命を繋ぎ、森の生態系を支える存在であってほしいな。 暗闇でなぜか踏ん張っている個体 Post Views: 201
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」17回目 朝日小学生新聞の連載のホンドテン 朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」の17回目はホンドテン。夏と冬、鮮やかな毛並みに衣替えをする、森の貴婦人のような存在です。が、その見かけとは裏腹などう猛さで、鳥やネズミなどのげっ歯類にとっては恐ろしい天敵です。 雪を被った林道を忍び足で歩いて来る 佐渡島で飼育中だった国の特別天然記念物のトキを9羽も食い殺し、その獰猛さが国中に知れ渡りました。すばしっこいイタチの仲間で、木登りが得意、水中にも潜れるオールラウンダーです。 何かをお口に咥えながら登場。巣へ持ち帰るのかな でも、皮肉なことに、その美しい毛皮が狙われて、白神の森では一時期、数を減らしたそうです。婦人用の襟巻きとして高値で取引されたため、マタギたちも競うように捕獲したと口を揃えます。 とても美しい毛並みの個体。木の上を走るネズミを狙っているのか 猛禽類のワシ・タカなどに狙われる以外は、ほとんど捕食者がいないとされるホンドテン。そんな森のどう猛なハンターの天敵は、同じように着飾りたいサル目ヒト科の女性だったのです。 晩秋の落ち葉の森に現れた個体。冬毛に衣替えしている Post Views: 181