朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」13回目 白神シリーズ連載の13回目は、秋の味覚「キノコ」です。 朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」13回目 夏から秋にかけて雨が多かったので、今年は豊作かと思われたのですが、早生物のマイタケやナラタケはダメでした。どの場所を回っても皆無で、運動不足の夫の「見苦しい汗」が噴き出しているだけでした。 素晴らしい香りがするカノカ(ブナハリタケ)を収穫する伊勢親方 実は今夏、マタギの伊勢勇一親方が体調を壊して入院されたので、夫婦二人だけで秋の山をウロウロと彷徨っています。そのためか、余計に見つからないようです。 朽木を覆うナメコ 親方に指示されて向かうマイタケの木の周辺も、今年はツルっとしています。やはり、半人前のど素人夫婦では、見つけられないだけでなく、キノコを呼び込むパワーにも欠けるのでしょう。 少し小振りだが、美味しそうなマイタケ 更に、太り過ぎと運動不足が祟った夫は膝を痛めてしまい、通院する羽目に。あー、情けない‥。入院しても、縄張りを気にする親方を見習いなさい!。これで、お鍋はもう、キノコ無し決定だからね。 伊勢親方と行くと、この通り。マイタケが大猟 今後は、雪が降り始める前に本格化してくる、ナメコとムキタケを狙って、夫の尻を叩き続けようと思っています。同時に、また運動を再開させて、夫婦ともにスリムな体でお正月を迎えたいものです。 倒木に出ていた可愛いナメコ え、甘いもの好きで食いしん坊のお前には無理だって?。夫が何か呟いています。うるさい!。あんたこそ、お酒ばっかり飲んで、食べたらすぐに寝てしまうから、お腹も背中もポッコリと出てくるのよ。もう、制限するからね、覚悟なさい! 親方と行くとこの通り。この木1本で10回分ぐらいのキノコ鍋が食べられる Post Views: 128
安に居て危うきを思う 国道脇で炎上したトラック。運転席も全焼していた まだ夜が明けきらぬ薄暗い朝、けたたましい電話の音が鳴り響く。「うーん、誰‥」。しぶしぶ受話器を取ると、「今、防災無線が流れているけど、あんたの村で火事よ!」と、息せき切った知り合いの声。 きれいな夜明け空と真っ黒に燃え落ちたトラック 布団に包まったままの夫が、不機嫌そうな声で、「んー、眠いよ。ほっとけ!」と、一言。でも‥。もし、近所のおばあちゃんの家だったら、心配。いつも美味しい野菜を貰っているでしょう。 国道に残った焼けたタイヤの跡 「そら、行きなさい。カメラも持って!」と布団を捲りあげました。いつもより、のろのろと服を着替える夫。火事の現場は、全身に焦げ臭い匂いが染み付くので、嫌いだそうです。 積荷はガレキ?。取材して来なかったので不明‥。もう、クビ! 玄関の扉を開けると、早朝の集落内に、「ウーウー」とサイレンが鳴り響いています。寝癖の付いた髪型のまま、軽トラックで出動する夫を尻目に、急々と屋内へ。私はもう少し寝ようかな。 運転手さんは無事だったの? しばらくして、帰って来た夫。「国道で車両の火災だった。トラックが燃えたみたいだよ」と、更に不機嫌そうな声で呟きながら、家に上がろうとします。えー、サンダルで行ったの!。足の裏が真っ黒じゃない。バカねぇ、ちゃんと拭いてからよ。 座席もハンドルも、みんな燃え落ちていた それでも、静かな村に10台近い消防車が出動するのは珍しく、近所の方々も集まって大騒ぎだったそうです。で、けが人は?。原因は何だったの!、と矢継ぎ早に聞くと、「大したことないので取材してこなかったよ‥」と、バツが悪そうに俯きます。 秋田県と青森県の消防隊員が共同で消火活動していた いつも、事件事故の現場が放映されるテレビや新聞を見ながら、「今でも、現役の新聞カメランマンの仕事に復帰できるさ」と、豪語しているのに‥。もう、ダメね。きっと、使い物にならないよ(笑) 村道にできた大穴の中で復旧作業が進む で、先日は、近所の友人から、「お宅の家の近くで水道管が破裂したそうよ。大至急、水を確保しておいた方がいいわ」と連絡がありました。夕飯の支度をしている最中だったので、大慌て。急いで、家中にあるバケツに水を汲み、お風呂も満杯にしました。夫は、散水用の500リットル入りのタンクへ水を溜めるために、ポンプを使って川から水を汲み上げる作業へ。真っ暗なのに、危ないよ‥ 割れた水道管を交換 「長引くと、トイレの水にも困るし、近所のおばあちゃんらを助けに行くんだ」と、いつになく張り切っています。我が家と、ご近所さんの生活用水を確保した後、漏水の現場へ。村道に深さが3㍍ほどの大きな穴が開き、水道管が剥き出しになっています。スコップを手にした作業員が、汗まみれになって働いていました。 深さは約3㍍。ここから水が噴き出した もう、水が噴き出している状態ではなかったのですが、アスファルトが浮き上がってボコボコになり、一緒に流れ出した土砂が道路に堆積しています。集落内で暮らす役場職員の方々や副町長さんまでもが駆けつけ、心配そうに見守られています。「これは朝まで復旧しそうにないなぁ」と夫。 復旧作業にあたる役場職員や作業の方々 でも、大勢の方々が、泥まみれになって水道管の取り換えに臨み、日付が変わる前に、見事、復旧させて下さいました。心より、お礼を申し上げます。おかげで、夫がご近所用に川から汲んだ水は無駄になりました。明日、庭木へでもまいてあげなさいね。ごくろうさま(笑) Post Views: 264
大学生たちとの夏の思い出 今夏、体験学習で、私たちが暮らす町に来てくれた東京都内の大学生から、寄せ書きの色紙が送られてきました。深浦町の有志の方が受け入れられた学生さんで、男子4人、女子2人の計6人が、狭くて汚い我が家に泊って下さいました。 白神の森を探索 青池の遊歩道で記念撮影 日本で最も権威があるとされる、この大学が、「よりタフに、よりグローバルに」育成するという教育目標で、学生を国内外の様々な地域へ派遣して、体験学習をさせる事業です。参加してくれた学生さんたちは、聡明で規律正しく、それぞれが瑞々しい感性を身に付けた素晴らしい若者たちでした。 河原の流木で環境と防災の学習 薪割り体験。しっかりとした腰つきで斧を振る ロボットカメラの森。何が写っているかな? 数ある候補地から深浦町を選んで、来訪して下さりありがとうございました。日本の未来は、君たちのためにあります。そのかじ取りを間違えないよう、精進して下さいね。私たち夫婦は、ずっと応援しています。素敵な出会いと幸せな時間を与えて下さって、心より感謝しています。 夏子供になったように深浦の海を体験 山だけでなく、海も美しい深浦町を実体験 色紙の寄せ書き、とても嬉しかったです。宝物にしますね。また、「個人的」に遊びに来てください。いつでも、大歓迎でお迎えしますから。 この町を新たな古里と思って、また訪ねてきてね Post Views: 193
写真の謝礼で届いた手作りパン 夫の写真を使って完成したリーフレット 今年のお盆の時期、私たちのホームページに一通の書き込みがありました。開いてみると、長野県中川村のグラフィックデザイナーで主婦の「さおりさん」からでした。 初春の白神の森で撮影したブナの梢と青空 なんでも、「友人が作るリーフレットに白神山地の写真を使わせて欲しい」とのお問い合わせ。使用した写真の掲載料もお支払したい、とのありがたい申し出でした。連絡してみますと、都会から伊那谷へご家族で移住されたとのこと。他人とは思えない縁を感じ、写真の使用をOKすると共に、どのようなリーフレットなのか聞いてみました。 宅急便の包みからこぼれる甘い香り。ん、何? すると、「起業する友人の案内パンフレットのようなもの」だそう。夫は職業写真家なので、食べて行くためにはお金を戴いた方がありがたいです。が、話をすればするほど、私たちと同じような境遇の仲間。熟考した結果、商売を優先するよりも、「田舎暮らしの友」として仲良くなった方が楽しそうです。写真は著作権を知らせるクレジットさえ入れて下されば、無料の使用もOKしました。 わー、パンだ!、クッキーだ!。すごく、美味しそう‥ で、その完成したリーフレットが昨日、届きました。それが、なぜか大きめの包み。開いてみると、フルーツのような甘い香りと小麦の香ばしい匂いが漂ってきます。なんと、自家製のカンパーニュとクッキー、これまた手作りのビールが同封されていました。 ずっしりと重いよ。それに、とても良い香り フランスパンは、夫も私も大好物。直径20㎝を超える分厚いパンを手に、小躍りしながら注意書きを見ると、直接、手で触れないように、との一言。ま、いいか。自分たちが食べるんだもの。ん、待てよ、お隣の奥さん、堅めのパンが好きだと聞いたっけ。「お裾分けする?」と夫の方を見ると、戴いたビールを急々と冷蔵庫へ入れてる最中。こちらを一顧だにしません。 なんか愛しく思えるような形と手触り。早く食べたーい ま、石鹸で手も洗ったし、大丈夫よね。お隣も親戚付き合いみたいなものだしね。半分に切って持って行くと、奥さんは大喜び。「こんなパン、ここでは買えないのよぉ。嬉しいー!」と、やはり小躍りしています。 お裾分けするためにパン切り包丁でカット さおりさんへお礼の電話をすると、パン作りの話題に。なんと、山芋やご飯などで発酵させた手作り酵母を使い、全粒粉と菜種油などで焼きあげたそうです。 堅い生地を割ってみると、あれ?、中身が黄色いよ パン屋の開業も視野に入れられているそうで、私たちよりも地に足がついた暮らしをされ、高い目標を目指しておられるのがとても眩しい。これを機に、伊那谷と白神のネットワークが繋げたらなあ、と勝手な願望を抱いています。 なんと、生地にカボチャを練り込んであるそう そして、リーフレットを作られたご友人は、長野県辰野町でお仕事をされています。辰野といえばホタルの里。夫が新聞記者時代に、二度もホタルの取材で訪れた場所です。 さおりさんのパン工房、「こねこね会」のしおりとお手紙 当時、助手を兼ねて私も同行し、幻想的な光の舞に陶酔した思い出が蘇ってきました。はたまた、不思議な縁を感じながら、いつカンパーニュを頬張ろうかと思案している所です。当然、あなたはビールよね♪ ホタルの写真が使えないので、イメージカットで代用 Post Views: 266
朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」12回目 白神シリーズの連載記事で書く最後のシノリガモです。 朝日小学生新聞の連載「白神シリーズ」12回目 今年も親鳥が、繁殖活動のために3組も川を遡上してきたのですが、残念ながら営巣行動をみせず、子育ては失敗に終わりました。 大好きな石の上から水面に降りるヒナたち 様々な要因が考えられます。 岩が並ぶ急流の隙間を仲良く泳ぐ親子 たび重なる釣り師の立ち入りや、大雨による土砂の流入と堆積などです。でも、観察を始めたばかりなので、何が問題であったのかを断定するのは、時期尚早でしょう。 川への立ち入りを「遠慮してもらう」よう声掛けするも、竿を振り続ける釣り師 ただ、ここ数年は毎年のように可愛いヒナをお披露目してくれていたので、寂しい限りです。 危険が迫るとヒナを羽根の下に隠すお母さん 3人娘をはじめとする地元の子供たちも、落胆の色を隠せません。とても残念です。 子育てへの理解と協力を訴えかける看板。9割の方は協力して下さる 子育て出来なかった原因が、気象や自然環境だけにあるならば、野生の現象の一つとして長い目で見ることができます。が、人間の営みや活動によるストレスが要因であるならば、なんとか共存できる道を探り出したいものです。 石の上を休みながら遡上する親子 世界自然遺産を源に流れる川の生態系。絶滅が心配されている個体群でもある鳥の貴重な繁殖地は、何とか守ってやりたいと考えています。 石の上で寄り添うお母さんに甘えるヒナ 元気よく、石から飛び込むヒナたち ようやく、その存在と重大さに気づき始めた地元の子供たちと共に。身の回りの出来事で凹んでばかりいられません。 がんばらなくては。 雨の日も風の日も雪の日も、一生懸命に観察する子供たち Post Views: 154