みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
「学生」ーみらいを紡ぐボランティア
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東奥日報「Juni Juni」の連載:5回目

東奥日報「Juni Juni」連載の5回目
東奥日報「Juni Juni」連載の5回目

今回は、地域に続く伝統的な神事の紹介をしました。毎年6月に実施される「春日祭(鹿嶋祭)」で、お年寄りから子供まで、来る日を待ちわびている盛大な行事です。当然、集落を上げて取り組むことになり、すべての老若男女に役割が振り分けられます。

昨年の春日祭
昨年の春日祭
去年の舟神輿の運びだし
去年の舟神輿の運びだし

祭り保存会の男衆たちは、数か月前から、重要な祭具となる舟神輿作りや太刀棒の削りだしを始めます。すべて、近くの山や田畑などから手に入れた自然素材の手作り品です。更に、行事の進行や安全対策なども練り上げます。

舟神輿を作る柴田さん
今年の舟神輿を作る柴田さん
舟の底に祈願する文字を書き入れる
舟の底に祈願する文字を書き入れる

そして女衆は、「舟宿」で用意する、おもてなしの料理作りの準備を始めます。寄り合って献立を決めますが、最初の舟宿は、お腹に貯まる食事系のメニューを用意し、喉が渇く時間帯には、お酒やジュースをたっぷりと。疲れが出る最後の舟宿は、子供用の綿菓子や果物などで癒してもらう予定です。

重くて一人では動かせない。二人がかりで、「よいしょ」
重くて一人では動かせない。二人がかりで、「よいしょ」
夜を徹して行われる祭りの準備
夜を徹して行われる祭りの準備

集落中の人たちが、夜遅くまで話し合いを続けて、この神事のための準備を積み重ねています。そして、祭りの主役である子供たちも、ご飯やおやつが食べ放題な「特別な一日」を待ちわびています。

この日の子供たちは、ご飯もおやつも食べ放題
この日の子供たちは、ご飯もおやつも食べ放題
太刀振りとして、今年が初参加の坊や。小学1年生になって赤い襦袢も着せてもらった
太刀振りに初参加した坊や

でも、過疎が進み、少子高齢化に悩む限界集落では、祭りを担う人材不足が深刻です。そのため、青森県の無形文化財に指定されている重要な神事も、存続が厳しくなっています。

舟に乗せる人型も稲わらで手作り
舟に乗せる人型も稲わらで手作り
ユニークな人型の顔も、桐の木に一つずつ書き込んでゆく
ユニークな人型の顔も、桐の木に一つずつ書き込んでゆく

そこで今回、沖縄県の遺骨収集活動で一緒に頑張ってくれた、「IVUSA(国際ボランティア学生協会)」の若者たちに、「大間越地区の春日(鹿嶋)祭りへの参加とお手伝い」をお願いしてみました。

決意を込めた表情で、遺骨収集に向かう学生たち
決意を込めた表情で、遺骨収集に向かう学生たち
休憩中も元気いっぱい。若者たちは屈託がない
元気いっぱいのIVUSAの若者たち

すると、予想通りの「快諾」(笑)。いつも、元気一杯に活動し、不平不満もこぼさず、笑顔で働いてくれる、頼もしい学生さんたちです。IVUSAのプロジェクトとして動くのは、調整時間不足で難しかったのですが、個人個人が自ら交通費を捻出して来てくれることに。

太刀棒も杉の木を1本ずつ削り出す
太刀棒も杉の木を1本ずつ削り出す
削った太刀棒を加工する
削った太刀棒を加工する

その数12人。短期の募集期間であったのに、さすがIVUSAだね、とうなずき合いました。私たちは、彼らの事が大好きです。遺骨収集や遺留品返還の活動などに、一生懸命取り組むだけでなく、過去の歴史を振り返りながら、自らの内面にも向き合おうとする真摯な姿が、素晴らしいからです。

好天に恵まれた去年の春日祭
好天に恵まれた去年の春日(鹿嶋)祭
太刀棒の打ちつけ合い。手前左のレンジさんが今年、急逝された。ご冥福をお祈りします
太刀棒の打ちつけ合い。手前左のレンジさんが今年、急逝された。ご冥福をお祈りします

限界集落化が進む深浦町には、都会の若人の情熱と行動力で助けて戴きたい仕事がたくさんあります。世界自然遺産「白神山地」の保全や有効利用、ジオパークに登録された美しい海岸線への漂着ゴミ問題、過疎化による人口減対策、害獣問題‥

御幣の色紙もすべて手作り
御幣の色紙もすべて手作り
浜辺で最後に掛け声。もうクタクタ‥
色紙で飾られた太刀棒を手に、浜辺で最後の掛け声。もうクタクタ‥

もし、定期的にお手伝いに来てくれるならば、域学連携事業の目に見える成果が期待できそうです。さらに、高齢化が進む地方と都会の若者による、新たな形の交流が実現することになり、想像するだけでも楽しみな企画です。

沖へ流される舟神輿を見守る子供たち
沖へ流される舟神輿を見守る子供たち
新しい舟神輿の土台が完成。後方には、昔の神輿が飾られている
新しい舟神輿の土台が完成。後方には、昔の神輿が飾られている

春日祭は6月27日(土)に実施されます。このブログの読者の方も、よければ一度、足を運んでみませんか。祭りを大切にしながら楽しむお年寄りや子供たちの笑顔と、地域興しのボランティアに燃える若者たちに出会うことができますよ。心より来訪をお待ちしています。

昨年の舟神輿と祭りに臨む保存会のメンバー
昨年の舟神輿と祭りに臨む保存会のメンバー

東奥日報「Juni Juni」の連載:4回目

東奥日報「Juni Juni」の連載の4回目「ニホンアナグマ」
東奥日報「Juni Juni」の連載の4回目「ニホンアナグマ」

白神山地の森の中や麓の集落、道路沿いなどで、最も見かける生き物がニホンアナグマです。体格や風貌がイヌ科のタヌキに似ていますが、彼らはイタチ科。とても愛嬌があって、ユーモラスな風体なのですが、鳥のヒナやカエルなどの小動物にとっては、恐ろしい猛獣となります。

アナグマの家族
アナグマの家族

梅雨が近づくと、水鳥たちが子育てしている池の周りにやってきます。ヒナが泳ぎ回るのを陸からじっと見つめており、隙あらば襲いかかろうと考えているのでしょう。でも、泳げないのか、水中に躍り込んで行く勇気はないようです。同時期に産卵が本格化するモリアオガエルなどを食べて、森の中へ消えて行きます。

池の水辺でカイツブリの巣を狙うお母さんアナグマ
池の水辺でカイツブリの巣を狙うお母さんアナグマ

白神の生態系は、とても豊かです。哺乳類ではツキノワグマ、鳥類ではイヌワシを頂点とした、食物連鎖のピラミッドが完成しています。アナグマも、人間(マタギ)以外の捕食者は、ほとんどいないようで、数は増え続けているようです。

美しい毛並みの個体
美しい毛並みの個体

でも、その存在を脅かす大きな要因の一つが感染症。犬や猫などのペット類やキツネなどに流行った疥癬が、アナグマを蝕んでいるのです。夏から秋になると、家族で行動する個体が多く、一匹が罹ると、あっという間に群れに広がります。

疥癬のため、毛が抜け落ちたお母さんアナグマ
疥癬のため、毛が抜け落ちたお母さんアナグマ

それも、個体数を一定に保つ自然の淘汰力かもしれませんが、病気の個体を見かけると、かわいそうで‥。でも、太古の昔から続く、豊かな生態系を守るためには、出来る限り人間の力は加えない方がよいのでしょう。よほどのことがない限り、「がんばって」と、応援するだけにします。

水鳥のヒナやカエルを狙って水辺に出現したアナグマ
水鳥のヒナやカエルを狙って水辺に出現したアナグマ

でも、ロボット・カメラで撮影するのは許してね。それが、数少ない、観察できる手段だから。マタギの伊勢親方にも、「あまり獲らないで」と伝えておきます。なにしろ体格や風貌が、夫の哲二に似ているのですから(笑)

東奥日報「Juni Juni」の連載:3回目

東奥日報「Juni Juni」の連載の3回目
東奥日報「Juni Juni」の連載の3回目(紙面の著作権は「東奥日報社」にあります。無断使用や転用は厳禁です)

ゴールデンウィークの連休で1回分飛んでしまい、久しぶりの掲載です。マタギの親方の取材に関わったことで、白神山地の麓の集落に住むことになり、地元の子供たちと生き物の観察を始めるきっかけになった話です。

白神山地の麓の里山で、ウサギの皮をむく伊勢親方=深浦町で
今回も使ってもらえなかったウサギの解体。子供新聞だから、仕方ないけど‥
少し可哀想だけど、とても美味しい夕食になった
可哀想だけど、とても美味しいお鍋になった

世界自然遺産の住人といっても、現代風の生活を送る若い世代の方々は、自然と関わることが少ないように見えます。過疎の村には、勤め先も少なく、通勤や通学も遠方になってしまうため、ほとんどが車を使う暮らしになってしまいます。

熊見台の近くにある山の湧水。祝杯用のビール?
熊見台の近くにある山の湧水。誰かが冷やす、祝杯用のビール?
命の恵みに感謝し、獲った獲物はすべていただく。手も美味しい食材に
命の恵みに感謝し、獲った獲物はすべていただく。手も美味しい食材に

たまの休日も、最寄りの地方都市まで買い出しに行かなければならず、近くの森に出かけて散策する時間もありません。子供たちも、ほとんどがバスや電車通学のため、帰宅時間は決まっており、登下校時に寄り道したり、放課後に森で遊んだりできません。

獲物を狙う鋭い目
獲物を狙う鋭い目
春先に雪崩れた雪渓を越える親方

そして、若者が都会へ出てしまうことで「地方の少子化」が進み、子供たちの絶対数が少ないのです。お友達の家は歩いて行ける距離になく、休みの日は一人で自宅でゲームをしたり、テレビを見たりして、過ごしています。

子供たちに輪かんじきの着け方を教える親方
かんじきを付けて雪山を歩く親方。立ち上がるときに背筋を伸ばした
かんじきを付けて雪山を歩く親方。立ち上がるときに背筋を伸ばした

親方は、そんな子供たちのためにと、縄文以前の時代から続けられている「狩猟採集」の暮らしを実践して下さっています。この後のシリーズは、白神に暮らす生き物たちの紹介と伝統的な神事などを報告して行きます。ご期待ください。

高校生に木の種類を教える親方
高校生に木の種類を教える親方
精悍な面持ちで銃を放つ親方
精悍な面持ちで銃を放つ親方

東奥日報「Juni Juni」の連載:2回目

「Juni Juni」での連載記事の2回目  (紙面の著作権は「東奥日報社」にあります。無断使用や転用は厳禁です)
「Juni Juni」での連載記事の2回目  (紙面の著作権は「東奥日報社」にあります。無断使用や転用は厳禁です)

「Juni Juni」の連載です。前回の続きで、白神マタギたちのクマ猟に同行させて戴いた時のエピソードです。新聞記者や女性が、伝統的な仕来たりを重んじる山人たちに受け入れて貰えるのか、を描きました。ここでも、伊勢勇一親方の人徳と、岩崎マタギたちの「懐の深さ」に助けられました。

仕留めたクマに食らいつくロッキー
仕留めたクマに食らいつくクマの狩猟犬・ロッキー

今から、18~19年ぐらい前の話です。ご一緒した方々の一部は、すでに鬼籍に入られており、時の流れの速さを感じてしまいます。当時は、1995年に発生した阪神大震災やオウム真理教の一連の事件などが、世を賑わしていました。夫の哲二は、それらの仕事にも関わっていましたが、どちらかというと主に海外での紛争地取材に明け暮れていました。

仕留めたクマを引っ張る白神のマタギたち
仕留めたクマを引っ張る白神のマタギたち
アフガンの首都の近郊であった不発弾処理を伝える紙面
アフガンの首都の近郊であった不発弾処理を伝える紙面

アフリカ・ルワンダやアフガニスタンの内戦など、一歩間違えると、命を落としかねない戦場ばかりです。現場の事情に理解がある上司と組める時はいいのですが、新聞社内の論理や机上の空論を振りかざす上司が担当になると、現場を無視した無理難題な指令が下されたようで、とても苦労した、と振り返ります。

紙面での連載の一部
アフガン内戦を伝える紙面での連載の一部
哲二がアフガンで撮影した写真グラフ
哲二がアフガンで撮影した写真グラフ

中でも、アフガニスタンでは、あまりに理不尽な社命に憤り、上司に歯向かったところ、「もう君は二度と海外主張に出さない」と、強制帰国の命。帰ってすぐ、大喧嘩になり、腹立ちまぎれに未消化だった休暇を取って、私と箱根の温泉で骨休めしていました。

隠し撮りでタリバンが支配する当時のカブール軍空港を撮影した影像が掲載された紙面。見つかれば処刑の可能性も
隠し撮りでタリバンが支配する当時のカブール軍用空港を撮影した写真が掲載された紙面。見つかれば処刑されたかも‥
ルワンダ内戦のルポ
ルワンダ内戦のルポ

すると、社から一本の電話が。「南米ペルーで日本大使館が占拠された。すぐに行って欲しい」との命令。哲二は、「私は二度と海外へ出されないのでしょう。何ですか、舌の根も乾かぬうちに」と、憤激しています。そして、「お断りします。もう私は、国内の取材だけで充分ですから」

ルワンダの写真グラフ
ルワンダの写真グラフ
射止めたクマを解体するマタギたち。山の神に恵みを得る感謝をして、すべての部位をありがたく頂戴する
射止めたクマを解体するマタギたち。山の神に感謝をして、すべての部位をありがたく頂戴する

そして、白神山地で、マタギたちの生き様を追いかけることになったのです。上司の命令を蹴った後ですから、仕事に自由はまったく利きません。ゆえに、溜まっていた休暇を取って、出張の経費は自腹で取材していました。この時から、時期が来たら会社を辞める決意を固めていたようです。

阿仁マタギの流れを組む上杉親方と語る伊勢親方。上杉親方はかえでちゃんのお祖父ちゃん
熊撃ちの現場で、阿仁マタギの流れを組む上杉親方と語る伊勢親方。上杉親方はかえでちゃんのお祖父ちゃん
熊見台からクマを狙う伊勢親方
熊見台からクマを狙う伊勢親方

が、またしても、スノーモービルに乗る親方の姿を見た上司が、「現代のマタギはスノーモービルで猟をするのか。おもしろいな。それを記事にしよう」と指令。それだけを取り上げたら、世界自然遺産に登録された後、狩猟をする機会や場所を狭められて苦労する、山人たちを茶化すような内容になってしまいます。

冬場の狩猟で、スノーモービルに乗る親方
冬場の狩猟で、スノーモービルに乗る親方
秋のなめこの収穫
秋のなめこの収穫

そんな、ミスリードになりかねない記事と写真は出したくない、と哲二は拒否。また、意見が食い違ってしまい、あえてボツにしたそうです。そして、今までお蔵入りにしていた内容の一部を、東奥日報さんの「Juni Juni」の紙面を借りて報告しています。

熊見台でクマを探す
熊見台でクマを探す
ウサギ狩りに臨む親方。雪盲除けのメガネが時代を感じさせる
ウサギ狩りに臨む親方。雪盲除けのメガネが時代を感じさせる

ドロドロした企業内の嫌な話ですが、そうした事が重なって、会社を早期に退職してフリーとなる道を選んだ夫が、ずっと追いかけてきたテーマのひとつです。いつか、どこかで伝えたいと考えていました。

射止めたクマに手を合わせる伊勢親方
射止めたクマに手を合わせる伊勢親方
初冬、積もった雪からのぞくなめこを採取
初冬、積もった雪からのぞくなめこを採取

詳しい内容は、いずれまとめて発表しようと思っていますが、まず序章(プロローグ)として、お付き合いください。消えゆく日本の姿を地道に伝えていくために、今後とも、夫婦で取り組んでまいりますので。

皆既日食に浮かび上がるブナの梢
皆既日食に浮かび上がるブナの梢
皆既日食がブナの木陰から見えた
皆既日食がブナの木陰から見えた

東奥日報社の小中学生向け新聞「Juni Juni」で連載が始まりました:1回目

「Juni Juni」での連載記事の1回目
「Juni Juni」での連載記事の1回目  (紙面の著作権は「東奥日報社」にあります。無断使用や転用は厳禁です)

★「Juni Juni」紙面のURL 

http://www.toonippo.co.jp/junijuni/

朝日小学生新聞に次いで、青森県の県紙「東奥日報」の小中学生新聞「Juni Juni(ジュニ・ジュニ)」で、連載を担当することになりました。白神山地の生き物や、そこに暮らす人々の生活文化などを紹介する予定です。

県内での読者層が厚い地方紙なので、新参者の移住者が胸を張って出せる記事は多くありません。が、都会暮らしの長かった、転勤族の元新聞記者夫婦が綴るフォト・エッセーと、読み取って頂ければありがたいです。

雨の森に現れた、全身を水滴で光らせたツキノワグマ
雨の森に現れた、全身を水滴で光らせたツキノワグマ

この手の話を毎回、子どもたちへ向けた内容に仕立てるのがとても難しく、朝小でも苦労しました。連載終了後も、ほんとうに面白く読んで戴けたのだろうか、独り善がりでなかったのか、と自責の念にかられる日々でした。

また、新たな場所でチャンスを下さったので、今度はもっと解りやすく書かなければ、と謙虚な気持ちで臨みます。第一、第三火曜日の東奥日報・夕刊に折り込まれています。よければ皆さま、ご購読いただければ嬉しいです。

新緑のブナの木肌にクマの爪痕が残っていた
ブナの木肌にクマの爪痕が残っていた

最初は、旧岩崎村(約10年前に深浦町と合併)を取材で訪ねたときのエピソードと、クマのお話です。深浦町のマタギ・伊勢勇一親方にも登場願っています。

それでは、1年間、よろしくお願いします。記事の量や写真の扱いも、破格の大きさで掲載して下さっています。期待に応えて、頑張りたいと夫婦で誓い合ってます。よろしくお願い致します。