学生から、遺留品の印鑑などを受け取った灰原信之さん(中央)
戦没者の灰原利雄さん。遺留品のメガネ、印鑑、ボタン
平和の礎に刻まれた灰原利雄さんの名前
私たちが沖縄で活動のお手伝いをする遺骨収集の学生ボランティアたちが、素晴らしい成果を成し遂げました。終戦から70年が過ぎた今、ただでさえ難しい戦没者の遺族への遺留品返還を自分たちの手で成し遂げたのです。
★朝日新聞に掲載されました。
http://www.asahi.com/sp/articles/ASH585R4RH58TIPE01X.html?iref=comtop_list_nat_n05
喜屋武のジャングルで遺骨収集に臨むIVUSAとJYMAの学生たち
灰原利雄さんの印鑑
灰原利雄さんの印影
それは今年2月、糸満市喜屋武で発掘作業をしていた「IVUSA(NPO法人国際ボランティア学生協会、本部・東京)」の市場涼さん(19)=立命館大=が、「灰原」と刻まれた印鑑を発見したことから始まりました。
印鑑が見つかった壕口。右端が発見者の市場くん
平和祈念公園の戦没者検索システムで調べるJYMAの学生たち
返還された印鑑を見つめる信之さん
同団体の派遣期間の終了が迫っていたため、代わりに「JYMA(日本青年遺骨収集団、本部・東京)」の黒田一樹隊長(20)=東洋大=らが、平和祈念公園内のシステムで戦没者の氏名などを検索。
平和の礎に刻まれた灰原さんの名に触れる今泉ゆりかさん
該当者は岡山県に一人だった
戦没者が判明して思わず号泣
第32野戦兵器廠に所属した岡山県出身の灰原利雄さん(当時27歳)と特定。その様子を放映したNHKテレビを見た遺族関係者らが、「私たちの身内ではないでしょうか」と、JYMAの本部などへ申し出て来られました。
遺族の甥・信之さんと母の泰子さん
遺留品の印鑑とボタン
利雄さんの遺留品と遺族たち
そして、IVUSAとJYMAの学生たちの代表者が3月末、戦没者の甥にあたる岡山県久米南町に住む灰原信之さん(68)の元へ、印鑑などをお届けしました。その瞬間に立ち会いましたが、感動で涙が止まりませんでした。
信之さんにボタンを手渡すIVUSAの新井裕香さん
利雄さんのありし姿を知る中力政子を手助けする
写真などが印刷された資料をめくる
よく頑張ったね、学生さんたち。素晴らしい働きぶりでしたよ。君たちと出会えて、ほんとうに良かった。
学生たちに頭を下げる信之さんに、涙ぐむ新井裕香さん
顔を覆う信之さん
発言中に声を詰まらせるJYMAの松本昌之くん
遺留品を受け取った信之さんも、「こんな形で帰ってくるとは‥。もう、奇跡としか思えません」と、感無量の様子。父親の弟になる利雄さんが戦死した2年後に生まれ、叔父の話は、沖縄で戦死したとしか聞かされていませんでした。
学生から説明を受ける
学生たちに囲まれる信之さん
印影の横に、ゆりかさんへのお礼を書く信之さん
印鑑を届けにきた学生たちから、発見場所のジャングルの様子や、利雄さんが戦没した当時の戦いの記録などを聞いて、「喜屋武で戦死とあったので、てっきり岬に近い海辺で亡くなったと思っていました。それが‥」と、驚かれています。
信之さんらが暮らす街の高台にお墓がある
学生たちと一緒に利雄さんのお墓へ
学生たちと一緒にお墓を清める
そして、「学生さんたちがたいへんな労苦を重ね、叔父の生きた証を見つけてくれたことが、何よりも嬉しい。弟の身を案じながら亡くなった父も、きっと喜んでいるでしょう。これで灰原家の戦争が終わりそうです」と、目じりを拭われました。
全員でお墓に手を合わせる
灰原家の先祖のお墓にも礼節を忘れずに
なんか去りがたい。利雄さんのお墓に語り掛ける
今回は、印鑑と同じ場所で見つかった黒縁の丸いメガネや軍服のボタンも学生が持参。生前の利雄さんの写真を見て、同じメガネであることを確認したうえで、これらも返還されました。
メガネと利雄さんの写真
利雄さんのメガネを掛けてみる信之さん
利雄さんの写真に見入る市場くん
戦没者の遺骨収集活動をボランティアで約60年間も続ける那覇市の国吉勇さん(76)も、「印鑑だけでなく、身に着けていたメガネが遺族の元へ帰ったのは初めてだね。まさに奇跡が重なったような例だ」と、喜ばれています。
学生たちの勧めでメガネを掛けてみる信之さん
写真を見る泰子さんと中力さん
利雄さんへの想いを込めたメッセージ
印鑑を発見した市場さんは、「遺留品の返還に携わったことで、戦没者の為人が判り、亡くなった方をより身近に感じることができました。そして、ご遺族が喜ぶ姿を目のあたりにできて、ほんとうに嬉しかったです」と、満面の笑顔。
発見した市場くんと検索した今泉さん。信之さんと何度も握手
自分たちの活動報告を手渡すIVUSAの新井さん
お墓詣りの前に、集落を見下ろせる高台で
夜行バスで東京から駆けつけたJYMAの今泉ゆりかさん(22)=国学院大=は、溢れだす涙をこらえながら印鑑を受け取る、信之さんと母の泰子さん(92)の手を握り締めて号泣。
堪えきれずに涙が
お母さんにお礼
焼香の順番を待つ
「今回の活動に携わったことで、埋もれたままの戦没者や肉親の帰りを待ち続ける遺族の戦争は終わっていない、と痛感しました。そんな方々の心情に寄り添える活動を、今後も続けて行きます」と、決意を述べました。
返還には報道陣も駆け付けた
お墓参りも一人ずつ。テレビカメラが密着
返還を機に、遺族も学生も、みんなが仲良しに
終戦から70年。戦争の記憶や記録の継承が難しくなる中、遺骨収集を通して、戦没者や遺族に寄り添おうとする若者たちの活動が注目を集めています。今回の返還事業は、NHKをはじめ、読売新聞や朝日新聞などの全国紙、地元の山陽新聞などにも掲載されました。
みんなで記念撮影
お母さんと一緒に
そしてお別れ。再会を誓い合っていた
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