私の数少ない趣味の一つに、「お茶」があります。中でも、紅茶と茶器をこの上なく愛しております。場合によっては、夫以上かも(笑)。季節やその日の気分に合わせてカップを選び、ポットで入れた紅茶をいただくと、至福の時が訪れます。春から初夏によく使うのが、野イチゴの花と実がデザインされている「ワイルドストロベリー」というシリーズです。イギリスのウェッジウッドというメーカーが出しています。
この絵柄を見て、「ワイルドストロベリーの花って可愛いなあ」と憧れていたら、一昨年、ホームセンターの片隅に小さなポット苗がポツンと売られているのを見つけました。大喜びで二株購入し、早速、植え付けたところ、カップに描かれているような可憐な花が咲き、葉も繁ってきました。
「わー、英国の庭みたい。カッコイイ」と、喜ぶ私を尻目に、夫はあまり興味がない様子。自分が好きな実のなる果樹や、偏愛する豆の世話ばかりしています。挙げ句の果てには、ちょっとずつ、エリアを広げるために伸ばし始めたのランナーの先を、うっかりなのかこっそりなのか、容赦なく踏みつけています。
「ちょっと、それ雑草じゃないのよ。踏まないで。それに、抜かないでよ」と、警告すると、一応は気にしながら、水を与えてくれているようでした。ちなみに夫にワイルドストロベリーと教えたのに、何を勘違いしたのか、いまだに「ワイルドチューリップ」と間違えた呼称を繰り返す始末。真面目にガーデニングをやる気があるのかなぁ‥。
が、いい加減な夫のお世話が聞いたのか、名前の通りワイルドだったのか。当初の可憐な姿からは想像もつかないようなたくましさで、急激に増殖し始めました。今は庭の芝生やシバザクラ、果ては花壇の中にまで侵入してくる始末で、ふと目をやると地を這うように特徴的な葉とランナーが手を伸ばしています。
我が家の庭を気に入ったのは嬉しいけど、こんな「雑草」のような繁殖力は誤算、と腕組みしていると、夫が、「お、この実、食えるんじゃない。すごくいっぱい実っているぞ」と、真っ赤に熟した実を嬉しそうに摘んで、持ってきます。たぶん、食べられると思うけど‥。
うーむ、あの食い意地が張ったヒヨドリやカラスも食べに来てないしなぁ。でも、恐る恐る口に含んでみると、外国産のジャムの瓶に鼻を突っ込んだような、強烈な芳香が広がりました。すごいよ、これ、と顔を見合わせました。ただ、味は酸っぱくて、たくさんは戴けません。子供の頃の夫のような、オヤツに飢えた悪ガキだったら、口一杯に頬張るでしょうが、私には無理です。でも、加工すれば、この香りと味を生かすことが出来るかも。
鈴なりの実を夫に採らせようと思い、「ほら、収穫するのは大好きでしょう。あなたが集めていいのよ」と指示すると、なぜか「オレ、忙しいんだ」と言って、家に逃げ帰ろうとします。小さい上、あまりに数が多いのが嫌なようです。「じゃ、写真をお願いね」と命じると、「小さくて難しんだよな、風にも揺れるし」とボヤきながら、渋々カメラを向けています。
野生のイチゴ特有のクセがあるので、素晴らしい芳香と甘酸っぱい味を生かして、今回は私用のジャムにすると決めました。本日、収穫した実は約120グラム。まず塩水に浸し、砂やゴミ、アリなどの昆虫を洗い落とします。きれいになったら、鍋に入れ、果実の半量程度の砂糖をまぶし掛け、しばらく置きます。30分ぐらいで砂糖が溶け、イチゴからたっぷりと果汁が出て、実がひたひたになります。
これを火にかけて、弱火で煮詰めます。木べらなどで、絶えずかき回しながら、出てくる細かい泡を取り除きます。これは灰汁なので捨てるのが王道ですが、もったいないのでお匙ですくって舐めます。だってこの灰汁、とても美味しいんだもの。完成品では味わえない、夫に秘密にしている台所の味です。ジャムがふつふつと沸き立って、十分に煮詰まったら完成。冷めると固くなるので、とろみ具合はお好みで調整してください。
いよいよ、お庭でお茶の時間です。茶器はもちろん「ワイルドストロベリー」。主役のジャムは、大阪で有名な堂島ロールの上にトッピングしてみました。バラが咲き誇る芝生の上で戴きます。濃厚なイチゴの匂いと酸味が、ロールケーキのスポンジにしみ込んで、生クリームの美味しさを引き立てます。紅茶はスリランカ(旧セイロン島)のヌワラエリヤ。わー、夢にまで見た瞬間。お茶もお菓子も美味しい!。梅雨の湿っぽい風まで、快く感じるわね。
と、夫に振っても、「俺、やっぱ甘いもんはダメだわ。早く日が暮れて、一杯飲りたいなぁ」とポツリ。こんな不調法なバカには付き合いきれません。もうひとりで、最高のひと時を楽しみます。でも、これを分かち合うお茶友が欲しいな。あ、いい所に近所のおばあちゃんが通りかかりました。さ、一緒に楽しみましょう。ほら、どうぞどうぞ、と誘うと、「え、お茶っこ?。これから、畑さ行くだよ。また今度な」とあしらわれちゃいました。ごめんなさい。忙しいのに、お気楽なお誘いをしてしまって。
ま、相手に不足は多々あるけど、夫で我慢するか。ほら、お茶をもう一杯いかが、ケーキは食べないの?。と、顔を見ると、空を飛ぶヘリコプターを見たり、ジャムの香りにつられて飛んできたクマンバチを目で追ったりしています。はいはい、甘いのは苦手だし、ゆっくり楽しむよりも、蜂のように急かせかしてしまう性分だもんね。
それに、何よりもお酒が好きだから、お茶の時間はつまらないかな。ハァ‥。よし、来年に収穫できるイチゴは、全部、果実酒にしようね。でも、自分で摘んで自分で漬けるのよ、いいわね。酒、と聞いて急に目が輝く夫。にっこり笑う目尻が、なんかいやらしい。それに、今までのヤル気の無さは何だったの?。ホントけしからん奴です!。
素敵な写真ばかりですね!
こんなお庭いいなぁ、幸せだなぁ。
憧れてしまいました✨(o^^o)