みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
「学生」ーみらいを紡ぐボランティア
サイト管理人のブログです。

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デブ夫婦のウォーキング日記⑬「私の伴侶はクラッシャー」

軒先に垂れ下がった氷柱

 12月25日の記事です。今日も律子です。

 今冬、最大級の寒波が到来。ご多分に漏れず、西津軽も昨夜から大雪です。そんな朝、ウォーキングへ出掛ける前にふと見ると、先月末から頼んでおいた用事をしてくれてません。

 まず、窓や玄関の網戸がはめ込まれたまま。これでは、虫除けというよりも雪除けになっています。「もうっ、凍り付くとパッキンがダメになるのよ。早く外して、綺麗にして仕舞ってね!」

 大慌ての哲二、雪を掃って、倉庫へ走ります。「ダメよ、乾かしてからでないと、アルミでも錆で劣化するからね」。本業にはとても厳しい男なのに、家事となった途端にいい加減な手抜きをします。

 どんどん成長する氷柱。大きくなると危険だ

 そして、ウォークから帰ってくると、なんとガレージの雨どいが付いたまま。例年は冬になる前、きちんと洗って倉庫に仕舞うはずなのに、これも忘れている。

 すぐ横の軒先には、大きな氷柱がぶら下がっています。といの中の水が凍結すると、プラスチック製なので簡単に割れてしまうのです。なんで今まで気づかないのでしょう、うーん、哲二、惚けて来たか‥

 7段の大脚立を持ち出して雪の中、不器用な手で外そうとしています。が、今度はバキッと嫌な音、同時に何かが外れて落ちてきました。叱られて焦ったのか、寒いので手が悴んだのか、留め具をへし折ったようです。

 「はぁ~」なんて、ため息を吐いていますが、それはこっちのセリフ。このっ!、クラッシャー男め。天気の良い日に働かず、追い立てるように毎日、私を歩かせるからよ。今夜は罰としてビール抜きね!。クリスマスは麦茶でサイレントナイト、だな。

デブ夫婦のウォーキング日記⑫「吹雪の朝、無謀or阿呆の彷徨」

 12月18日の記事です。

 猛吹雪の朝、起きたら哲二が薪の入れ替えをしていた。どうも、乾燥していないものが混ざっていたらしい。どうりで最近、ストーブの燃えが悪いし、室温も上がらないわけだ。雪まみれになりながらも、せっせと運び込んでいる。

 早くから、ご苦労さま。

 うーん、今日はすごく寒いね。だから、絶対に表へ出ないわよーっと、伸びていたら、ウォーキングの杖の準備をしている。

   屋根の上に積もった雪が雪庇となってせりだしている

 えーっ、行くの!。

 まさか、嘘でしょう!!、と声を張り上げたけど、無表情でリックサックに飲み物なんかを詰めている。

 痩せるために、そこまでするのか‥。

 でも、私は今日は行かないよ。だって吹雪だし、とっても危ないんだもの。きっと道もツンツルテンに凍ってるし、転んで打ち所が悪いと死ぬこともあるんだからね。

 後退りして、背を向けても、杖と長靴を準備して、玄関先で待ってるじゃん。ん、もーう、仕方ないわね。ちょっとだけよ。危なかったら、すぐ引き返すからね。

 昨夜から降り続いた雪で、集落は真っ白。車が走った轍がカチカチに凍っているので、道を歩くのもひと苦労だ。柔らかい雪の上を歩くと滑らないが、砂浜を歩くのと同じぐらい前へ進まない。いつもの半分も行かないうちに息が上がってきた。

 深浦の今朝の気温は氷点下4度、10メートル前後の北西の季節風が吹き荒れている。むちゃくちゃ寒い‥。わずかに露出している顔の部分の感覚がなくなってきた。

      雪がメガネに付着して、前が見なくなる

 「ねぇーっ、もう帰ろうよ」と先行する哲二に声掛けするが、届いていないのか、ずんずん進むのみ。行くしかないのか‥

 昔、映画で見た「八甲田山死の彷徨」が頭に浮かんできた。いくら戦没者へのご奉仕を続けているからといって、こんなことまで模倣しなくてもいいのになぁ。

 海は、凄まじく、大荒れ。波は立ち、そのしぶきが風に乗って走っているかのようだ。港や磯で、波の花がふるふる揺れているのが、未知の生き物のようで不気味。

 グイグイ歩く哲二と距離が出来ると、横殴りの雪に霞んで見えなくなる。

 「怖いよー!」

 なのに結局、いつものコースを歩き切り、帰宅。歩数は今日だけで1万歩を超えた、と哲二は満足げだ。あまりに寒かったので、家に帰って体温を測ってみると、35度7分。これって、低体温症になりかけているんじゃない。

 もう嫌、お風呂に入る。温かいお湯がこんなにありがたく感じたのは久しぶり。過酷な行軍だったけど、この瞬間はやすらぐわねぇ。ありがたや、ありがたや‥

 体温を測ってみたら‥

 と、脱衣場に出てみると、日課のごとく体重計に乗る哲二の姿が。今日は雪の中をいっぱい歩いたから、期待できるね、と声掛けしたら、「1キロ増えている‥」と暗い声。

 へーん、こんな日に無理したから、きっと罰が当たったのよ。

 雪の中、過酷な訓練で亡くなった青森の連隊将兵の冥福を、きちんとお祈りしようね。

桃ちゃんは、田舎暮らし!①「故郷の味は祖母の『けんちん(けの汁)』」

桃ちゃん(自画像)

 新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年も宜しくお願い申し上げます。

 改めまして、こんにちは!、桃子です。戦没者の遺骨収集などを取組みの柱とする「みらいを紡ぐボランティア(以下みらボラに略)」に参加して、ほぼ3年。戦争関連だけでなく、自然の事や地域の伝統的な暮らしなどについての発信もしたくなり、ブログを始めます。

危険な流倒木をチップにして観光地の遊歩道を守る取組みに臨む桃ちゃん。この活動で、第18回日本水大賞の「未来開拓賞」を受賞した

 タイトルは、世界自然遺産・白神山地の麓の集落で生まれ育った私をイメージして、仲間たちが考えてくれました。面映ゆいのですが、楽しみながら、面白がりながら、田舎の情報を伝えて行きたいです。お付き合いください。

    桃子の家の「けんちん(けの汁)」

 第一弾は郷土料理の話。年末年始に必ず私の家の食卓に並ぶ、「けんちん」のレシピを祖母から教わったので、ご紹介いたします。

 これは、さいの目切りにした山菜と根菜、砕いた豆腐などをじっくり煮込み、醤油や味噌で味付けした汁物です。主に年末からお正月にかけて作られ、具材や味付けも各家庭で異なる「ふるさとの味(郷土料理)」です。

ワラビ、アイコ、フキ、ナラタケ、シイタケ、大根、人参、牛蒡、こんにゃく、豆腐、油揚げをストーブの上で煮込む。祖母いわく、「何を入れてもいいんだ」そう

 私にとっては毎年、この時期になると食べたくなる、おばあちゃんの味。我が家では「けんちん」と呼んでいますが、津軽地方の郷土料理としては、どうやら「けの汁」という名前の方が有名だと、ネットには出ています。

   味付けをしたら最後にカリカリに焼いた昆布を砕き入れる

 恥ずかしながら、この歳になるまで知りませんでした。はたして深浦町やそれ以外の地域では、どう呼ぶのか?。これもネットで調べてみました。

 すると、「けんちん汁」は日本全国に存在するらしく、語源は鎌倉時代に創建された「建長寺(けんちょうじ)」で作っていた精進料理から来ているとされています。「けんちょうじ→けんちん」に変化して広まったという記事。うーむ、勉強になる。

    ボランティア活動でテレビ局の取材を受ける

 なぜ今になって祖母から料理を習おうと思ったのか。それは、ボランティアの活動でお会いする方々を通して、大切な人と過ごせる時間は「有限である」と感じることが多くなったからです。身近すぎて忘れがちになっていましたが、自分のふるさとの伝統や文化を改めて学び、継承していくのも「みらいを紡ぐ」事に繋がるのでは、と気付いたのです。

塩漬けにした山菜を水にさらして塩抜きする

 具材のアイコやフキなどの山菜は毎年、祖母が山を歩いて採取し、春のうちに塩漬けて保存したものばかり。野菜の多くも畑で育てていました。おもに狩猟と採集で暮らしてきた地域の人たちが、昔ながらの知恵や工夫を詰め込んだ料理なのです。

 これからは、祖母から学ぶ料理などを通して、山菜やキノコ採り、マタギの狩猟のことなども紹介していければと考えています。よんでくださいね!

デブ夫婦のウォーキング日記⑪「ハタハタ来たる、ブリコの不思議」

ハタハタの卵「ブリコ」

 12月15日の記事です。

 西津軽や秋田沿海の方々が待ち望んでいる時期がやってきました。そうです、ハタハタの季節。繁殖のために沿岸近くに集まり、海底や岩場にある海藻へ大量に卵を産み付けるのです。

 ウキペディアなどによると、分類学上ではスズキ目ワニギス亜目ハタハタ科に属していおり、カサゴ目のカジカの仲間に近いそうです。秋田の県魚で、漢字では「鰰、鱩、雷魚、燭魚」とも表記されています。

夕暮れの中、ハタハタを狙って集まって来たゴメら

 この時期になると、集落内の方々は落ち着きがなくなり、そわそわ、うきうきし始めます。道行く人々が会えば、小声で囁き合ったり、頷きあったり。「そろそろか?」「んにゃ、まだだべ」。そして、強風が吹いて海が荒れ、嵐のような吹雪の中、海の男たちは出漁し、舟に乗れない女性や高齢者も、港の防潮堤などですくい網を振るいます。

海岸に打ち上げられたブリコを狙うゴメ

 そんなハタハタが寄って来るのを真っ先に嗅ぎ付けるのがゴメ(カモメやウミネコ類)。魚が群れていそうな海の上で、虎視眈々と乱舞しています。そして獲物を見つけるや急降下してキャッチ、晩御飯にありつくようです。そんな喧騒が繰り広げられた後、海岸を歩きに行くと、ハタハタの卵「ブリコ」が産み付けられたホンダワラが打ち上げられていました。

 ハタハタの卵「ブリコ」。触感はやや硬くて、表面はつやつやしている。日本海の夕日を浴びて、キラキラと輝いた

 強い波に根本が引きちぎられたようです。こうなると、せっかくの卵も孵ることができません。ゴメの餌食になるか、イタチやテンのおやつになるか、です。実はこのブリコ、地元では希少品の珍味として有名です。一度、食べさせて戴きましたが、「ちょっと‥、濃厚すぎるなぁ」といった味。両親も白身で美味とされているのですが、西日本で生まれ育った私らには、あまり口に合わないようです。

 ところがこのブリコ。海岸に落ちているのを拾って帰ると、なんと密漁になってしまうのです。引っ越してきたばかりの知り合いが、何も知らずに持って帰って、こっぴどく叱られたそうです。ゆえに私らも、とるのは写真だけ。上空を旋回するゴメに睨みつけられながら、ホンダワラに付着した卵塊を撮影。そっと海へ戻してあげました。無事に生まれて、また、帰って来いよ、この浜へ。

デブ夫婦のウォーキング日記⑩「人生楽ありゃ、苦もあるさ♪」

 集落内の道を薄っすらと雪が覆う。最初の一歩は気持ちいいが、滑るのが難点

 12月13日の記事です。

 急速な低気圧の発達で大荒れの朝。今日のウォーキングは無理じゃない、と布団に潜り込んでいたら、ガバッと起きた哲二がいそいそと身支度。ストーブの火を落として、股引を履いています。えー、行くのかい‥。しぶしぶ起き出し、のろのろと身支度を始めます。

 黎明の中、外を見渡すと、あたりは薄っすら雪化粧。手入れの行き届かぬ庭も心なしか美しい冬の風情に。滑らないように気をつけながら、まだ誰も歩いていない道へ防寒長靴を踏み出します。

   移住した翌年の冬も大雪が降った=2011年1月

 「ビュオゥー、オゥー、ビュゥーゥー」。フードを被った顔へ、叩きつけるように雪交じりの風が。わずか数十歩で、体感温度は一気に低下、身震いしながら哲二が呟きます。「今日から真冬だよ‥」。これが北東北の季節の変わり目です。

 海は想像以上の大荒れ。打ち付ける波のしぶきが風に煽られ、湯煙ならぬ潮煙となって集落内を漂っています。身体にあたると痛いほどの堅い雪が、強風で渦を巻き、前後左右から襲い掛かってきました。油断すると、杖で支える力士体型の身体ごと吹っ飛ばされそうです。

 いつも座って休む流木に波が打ち寄せた。危なかった‥

 逆風の中、ふうふう言いながら砂浜を突っ切り、いつも座って休む流木へ。と、哲二が「危ない」と制止。なんと、大波が流木を超えて行くではありませんか。ほぇー、今日は休憩なしだ。

   いつも一服する流木。べつの巨木が流れ着いていた

 さらに、海岸を往復しようとしたら、先行する哲二の足元まで波が届きます。「うへぇー、こりゃダメだ。今日はロマンの里を抜けて行こう」と、いつものコースを変更して迂回路へ。

 が、ここも高架橋の路面がカチカチに凍って、危険極まりないサバイバルに。愛用の帽子が風に飛ばされて、あっという間に荒れ狂う海の藻屑となるし、もう帰りたいよー。

    雪に覆われたロマンの里

 でも、これも痩せるため、いや、修行なのだと自らに言い聞かせて、一歩一歩、刻むように帰途につきます。杖をしっかりと路面に突き立てながら、水戸黄門の主題歌、「人生楽ありゃ苦もあるさ♪」と歌いながら。ただ、後ろから、「泣くのが嫌なら、さぁ歩け!♪」と、突いてくる哲二がウザいけど‥