みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
活動③(追跡)

木造高校深浦校舎の生徒らと流木をチップにする活動③

河原に転がるドロノキの巨大な流木。生徒たちの前で伊勢親方が処理を始めた
河原に転がるドロノキの巨大な流木。生徒たちの前で伊勢親方が処理を始めた

河川の「厄介者」である流木などを集めて、木材チップにするボランティア事業を7月2日、青森県深浦町の二級河川・笹内川で実施しました。深浦町と県立木造高校深浦校舎、私たちの「白神の生き物を観察する会」で企画を練り上げたイベントです。

木造高校深浦校舎の生徒たち
木造高校深浦校舎の生徒たち
緑が濃くなった渓谷の道を歩く深浦校舎の生徒たち
緑が濃くなった渓谷の道を歩く深浦校舎の生徒たち

笹内川は、世界自然遺産・白神山地を源にする美しい渓流です。盛夏を控え、緑が濃くなってきた山を背景に、「白神ライン」と呼ばれる県道28号(岩崎西目屋弘前線)沿いの河原で、流木や防災工事で出た木を集めました。

緑の下を歩く深浦校舎の生徒たち
緑の下を歩く深浦校舎の生徒たち
荷台に乗った町役場の職員から段取りを聞く
荷台に乗った町役場の職員から段取りを聞く

今回の作業は、県立木造高校深浦校舎の全校生徒71人と教職員、深浦町の職員を合わせて、約100人が参加。当然、私たちの「白神の生き物を観察する会」のメンバーも加わりました。

挨拶して下さる深浦町の菊池・副町長
挨拶して下さる深浦町の菊池・副町長
生徒たちの前で挨拶される菊池副町長
生徒たちの前で挨拶される菊池副町長

作業の開始前に、同町の菊池雄司・副町長が、「流倒木は、川の土手を削ったり、鉄砲水の原因となったりするだけでなく、海に流れ出ると漁船の事故を誘発する危険な存在。高校生が、災害を防ぎ、環境を守る手助けをしてくれて、感謝している」と、ご挨拶。

積み上げられた木を運ぶ生徒たち
積み上げられた木を運ぶ生徒たち
トラックの荷台へ
トラックの荷台へ運ぶ

まずは、あらかじめ集めてあった、サワグルミやヤナギ、ハリギリなど約20種類の木を、トラックに積み込む作業です。梅雨晴れの朝、男女の生徒が入り混じり、1㍍~2㍍の長さに切られた木を抱えたり、担いだりしながら、荷台に運びます。一人で持ち上がらない大きな木は、二人がかりで挑みます。

大きな木を女子生徒が二人掛かりで抱えた
大きな木を女子生徒が二人掛かりで抱えた
力自慢の男子は軽々と
力自慢の男子は余裕の表情

トラックの荷台に乗った仲間が手際よく積み上げて行き、作業は1時間足らずで終了しました。量で言えば、2㌧トラック2台分、合計3~4㌧ぐらいでしょうか。結構、重いようで、車の重心も下がってみえます。この木は、すぐに秋田県能代市の製材業者「鈴光」さんに運ばれ、チップ化されます。

大きな木も軽々と持ち上げます
大きな木も軽々と持ち上げます
男女の隔たりなく、一生懸命に働く生徒たち
男女の隔たりなく、一生懸命に働く生徒たち

町が、観光地の遊歩道に撒く木材チップは、毎年、3トン前後。実は、高校生らが集める流木だけでは足りません。そこで、災害防除工事などで出た不要な雑木を資源として譲り受けて、チップ用の材として追加したのです。これらは、地元の建設業者「ホリエイ」さんと、「三浦建設」さんから戴きました。道路沿いの斜面から、切り出されたものだそうです。ありがたい限りです。

大きな木は重機で砕く。これもすべて、ボランティア活動
大きな木は重機で砕く。これもすべて、ボランティア活動
チップにするための木をラインに乗せる
チップにするための木をラインに乗せる

「鈴光」さんに到着した木は、太いものは重機で割られ、手際よくコンベアーに乗せられて、瞬く間にチップに砕かれます。出来上がったチップの一片の大きさは、4~5センチ。作業員の方から、「いい木だね」と言ってもらい、嬉しくなりました。

チップ化された木を袋詰めする町役場の職員ら
チップ化された木を袋詰めする町役場の職員ら
1㌧袋に詰め込んでゆく町役場の職員
大袋に詰め込んでゆく町役場の職員

一方、積み込み作業を終えた高校生は、すぐに3㌔メートルほど先の上流へ移動し、実際の流木を前に体験学習です。ここには、数年前から、河原に引っ掛かり、放置されたままのドロノキ(約22m、胸高直径約60cm)があります。深浦のマタギ・伊勢勇一親方(75)を先生に、木の生態や木材の特性などの説明を受けました。

伊勢親方から木の話を聞く
伊勢親方から木の話を聞く
石がゴロゴロ転がっている河原へ降りる生徒
石がゴロゴロ転がっている河原へ降りる生徒
流木やゴミを集める女子生徒
流木やゴミを集める女子生徒

ドロノキの名前の由来は、木の質が柔らかく、あまり役に立たないという意味で、「ドロ」と呼ばれた説と、切断するときに刃物を痛めるので、木が泥水を吸い上げているという憶測から名付けた、とする説があるそうです。が、真意は不明。

長さ20㍍を超えるドロノキの流木を切る伊勢親方
長さ20㍍を超えるドロノキの流木を切る伊勢親方
ドロノキをチェーンソーできる伊勢親方
ドロノキをチェーンソーできる伊勢親方
木を動かすための道具である「トビ」を使う伊勢親方
木を動かすための道具である「トビ」を使う伊勢親方

見学した後は、この流木を撤去します。まず、親方がチェーンソーを使って切断。あまりの手際の良さに、高校生から拍手が起こりました。そして、約2メートルの長さに玉切った木を、今度は生徒たちがロープなどを使って、安全な場所へ移動させました。これはストックして、後日、チップにする予定です。

重い木は男子生徒が4人掛かりで運ぶ
重い木は男子生徒が4人掛かりで運ぶ
玉切られた流木をロープで引く生徒ら
頼もしい男子が、協力し合って重い木を運ぶ
頼もしい男子が、協力し合って重い木を運ぶ

午後は深浦校舎に戻り、チップを袋詰めする作業に掛かりました。生徒の減少で廃部になったテニス部の、テニスコートが作業場です。

到着したトラックの荷台から、出来上がったチップがこぼれ落ちる
到着したトラックの荷台から、出来上がったチップがこぼれ落ちる
テニスコートに次々と降ろす
テニスコートに次々と降ろす

午後2時、自分たちが集めた木を原料に、出来立てのチップを載せたトラックが到着。2台のトラックの荷台から、木片がこぼれ落ちると、「すごい量」、「木の香りがする」などの歓声が上がりました。生徒たちは、ペットボトルを再利用したスコップなどを使って、熱心に土嚢袋に詰め込みます。

スコップの扱いもお手の物
スコップの扱いもお手の物
整然と並んで荷台からチップを下ろす
整然と並んで荷台からチップを下ろす
女子生徒は自分たちで作ったペットボトルスコップですくう
女子生徒は自分たちで作ったペットボトルスコップですくう

チップの袋が、山のように校庭の隅へ積み上げられると、日に焼けて汗にまみれた生徒たちの顔に真っ白な歯がこぼれました。秋まで学校が保管し、10月末ごろ、十二湖の森林セラピー基地の遊歩道に敷設されます。

山のように積み上げられたチップ入りの土嚢袋
山のように積み上げられたチップ入りの土嚢袋
テレビ局のインタビューも受けちゃいます
テレビ局のインタビューも受けちゃいます
作業の合間に、ちょっとふおふざけも‥
作業の合間に、ちょっとふおふざけも‥

作業に参加した、「白神の生き物を観察する会」の七瀬さん(同校舎2年生)は、「日曜日のたびに現場へ出向き、木をタワシで洗ったり、種類を調べて大きさを測ったりして、玉のような汗をかきました。今日も、重い木をトラックに積み込むとき、仲間がケガをしないかハラハラ‥。でも、チップになって帰って来ると、その量に驚くのと同時に、深い満足感があります。資源を無駄にしないで有効利用する私たちの活動は始まったばかり。来年以降も続けて行きたいです」と、力強い決意表明。

一生懸命に作ったペットボトルでチップをすくう七瀬さん
一生懸命に作ったペットボトルでチップをすくう七瀬さん

そして、同じメンバーの桃ちゃん(同校舎2年生)は、「危険な流木を回収するボランティア活動に、校舎の先輩や後輩、クラスメイトらと一緒に関われたことが、とても有意義で嬉しいです。でも、野生動物の宝庫である森に、心ない方が不法に捨てたゴミを見かけることがあります。、今後も、世界自然遺産に登録されている白神山地の自然が守られるよう、積極的に行動します」と、語りました。

ペットボトル・スコップの試作品を公開する桃ちゃん
ペットボトル・スコップの試作品を公開する桃ちゃん

この活動を、今後も、同校舎の生徒さんたちをはじめ、深浦町や支援者の方々とともに、続けられることを願っています。だから、これからも頑張ろうね、七瀬さん、桃ちゃん。そして、役場の「町づくり戦略室」の皆さま、今度とも、よろしくお願いします。

男女で仲良く袋詰め
男女で仲良く袋詰め
二刀流の女子生徒も
二刀流の女子生徒も
ボランティア部が中心になって作ったペットボトル・スコップ
ボランティア部が中心になって作ったペットボトル・スコップ

さらに、この場を借りて、活動に全面的な協力を申し出て下さった、林野庁・津軽森林管理署の皆さま、青森県の鰺ヶ沢河川道路事業所の皆さま、製材業者の「鈴光」さん、「ホリエイ」と「三浦建設」の皆さまに、心からの御礼を申し上げます。ありがとうございました。

ニコニコと笑顔で働く女子生徒たち
ニコニコと笑顔で働く女子生徒たち
カメラを担当した3年生の女子が撮影した秀逸なカット。スカウトしたい
カメラを担当した3年生の女子が撮影した秀逸なカット。スカウトしたい
よく頑張りました。ごくろうさま。そして、ありがとう
よく頑張りました。ごくろうさま。そして、ありがとう

 

シノリガモとサントリー世界愛鳥基金

シノリガモを今年、観察することになった深浦町立いわさき小学校の6年生たち
シノリガモを今年、観察することになった深浦町立いわさき小学校の6年生たち

子どもたちのシノリガモ観察も足掛け3年を迎えました。今年は、私たちが観察している中では、過去最高の8羽のカモが川に上がってきて、子育ての準備に入っています。

繁殖のため、川を遡上してきたシノリガモの夫婦
繁殖のため、川を遡上してきたシノリガモの夫婦
昨年、川で子育て中のシノリガモの親子
昨年、川で子育て中のシノリガモの親子

貴重なカモを守りたいという子どもたちの熱意があってのことですが、地域の方々が、河川改修工事による川の変化や、川面に立ち入る釣り人、天敵のカラスなどが、カモの繁殖活動に影響を与えないか見守り、安心して子育てできる環境が保たれるよう協力して下さったおかげだと思っています。

橋の上に寝転んで観察するいわさき小学校の6年生たち
橋の上に寝転んで観察するいわさき小学校の6年生たち
去年の6年生たちは中学生になり、少しお姉さんになった
去年の6年生たちは中学生になり、少しお姉さんになった

そんな子どもたちの活動に、「サントリー世界愛鳥基金」が今年度、助成金を出して下さることになりました。シノリガモの観察には、双眼鏡やフィールドスコープは欠かせません。

ブラインドテントから観察する6年生たち
ブラインド・テントから観察する6年生たち
サントリーさんの基金で購入したブラインドテント
サントリーさんの基金で購入したブラインド・テント

また、野生動物を観察する時のマナーも身につけてほしいので、ブラインド・テントを活用していますが、これらの機材すべてを私たちボランティアが提供しているので、観察に参加したい子どもが増えると、物理的に厳しい状況が続いているのです。

教室内でフィールドスコープや双眼鏡の使い方を学習する6年生
教室内でフィールド・スコープや双眼鏡の使い方を学習する6年生
フィールドスコープなどで観察するいわさき小学校の6年生
フィールド・スコープなどで観察するいわさき小学校の6年生

今回の援助で、早速、双眼鏡とブラインド・テント、連絡用の無線機を購入しました。先月から実施している深浦町立いわさき小学校の観察会にも、活用しています。サントリーさん、子どもたちを応援して下さって、ありがとうございます。心より感謝いたします。

サントリーさんの基金で購入したトランシーバ
サントリーさんの基金で購入したトランシーバ
昨年、川で子育てするシノリガモ
昨年、川で子育てするシノリガモ

基金のホームページによると、この助成は、野鳥保護を通じて地球環境保全を推進する目的で、1990年度から始まったそうです。今までに延べ275件、合計で2億9.920万円の助成が贈呈されたそうです。頂いたお金は、大切に使います。子どもたちのため、環境のため、そして世界自然遺産を次世代につないでゆくために。

渓流を元気いっぱいに泳ぐシノリガモのヒナ
渓流を元気いっぱいに泳ぐシノリガモのヒナ

高校生らと河川の流木をチップにする活動②事前学習

チップにする木についた泥や食い込んだ石などを洗い流す高校生ら
チップにする木についた泥や食い込んだ石などを洗い流す高校生ら

高校生らと流木などを集め、観光地の遊歩道へチップとして撒く活動の事前学習として、木造高校深浦校舎で勉強会をしてきました。当然、講師は深浦町のマタギ・伊勢勇一親方です。

1年生たちにマタギの道具を説明する伊勢親方
1年生たちにマタギの道具を説明する伊勢親方
1年生たちにマタギの道具を説明する伊勢親方
マタギの道具を説明する伊勢親方

まず、1年生に、自然遺産への知識と理解を深めるため、「白神山地の生き物と生活文化」の授業を実施。その後、全校生徒を対象に「流木などを利用する防災と環境教育」の講義を行いました。自分たちが取り組む流木集めや、地元の木をチップにして再利用する事の意義を、考えてもらうのが目的です。

親方のクマの毛皮製の尻あてを身に着ける男子高校生
親方のクマの毛皮製の尻あてを身に着ける男子高校生
クマの毛皮の尻あての座り心地を確かめる男子高校生
クマの毛皮の尻あての座り心地を確かめる男子高校生

内容は、土砂災害の怖さ、ハザードマップの意味などの一般常識から、白神山地の地形、流木の危険度、チップの必要性とリスクなど。写真や図などをスライドショー形式で見せながら、約1時間かけてお話ししました。

土砂災害の危険地帯を表した地図
土砂災害の危険地帯を表した地図
深浦町中心部のハザードマップ
深浦町中心部のハザードマップ
深浦町岩崎地区の中心部のハザードマップ
岩崎地区中心部のハザードマップ

座学だけではつまらないので、実技も実施します。事前の調査によると、今回、チップ用に集める原木は約20種類。この原木のサンプルを用意し、木の種類と名前が判るか、生徒たちに問うコーナーも設けました。

チップになる木を一本ずつ手にする1年生
チップになる木を一本ずつ手にする1年生
親方が名前も見ないで、木の種類を言い当てた
親方が名前も見ないで、木の種類を言い当ててゆく

一本一本の木に名前を書き、そこを黒いテープで目隠しして、質問。中にはブナやサクラなど、特徴的だったり、なじみ深い木もあります。が、一見、どれも同じに見えてしまい、ほとんどの生徒や先生が答えられませんでした。それを親方が、木の肌や形だけを見て全部言い当てるので、会場からは驚嘆の声が上がりました。

みんな同じように見える木。親方の知恵に全員が驚嘆した
みんな同じように見える木。親方の知識に全員が驚嘆した
ペットボトルの手作りスコップを説明する斉藤桃子さん(左)と工藤七瀬さん
ペットボトルの手作りスコップを説明する桃子さん(左)と七瀬さん

最後に、私たちの「白神の生き物を観察する会」の会員、同校2年の七瀬さんと桃子さんが、チップをすくって袋詰めするための、ペットボトル製のスコップの作り方を実演。同時に、廃品を利用したスコップを使う意義も説明し、賛同を呼びかけました。

ペットボトル・スコップを使ってみる男子生徒ら
ペットボトル・スコップを使ってみる男子生徒ら
流木が川をせき止めることを説明する図
流木が川をせき止めることを説明する図

その結果、お父さんが飲む焼酎のペットボトルや、家庭で使い終わった柔軟剤の容器を持ち寄って、同校のボランティア部や希望者に作ってもらうことになりました。

木材チップ
木材チップ
あいさつする深浦校舎の吉田信治教頭先生
あいさつする深浦校舎の吉田信治・教頭先生

ペットボトルのスコップを作った理由のひとつは、流木や捨てられる木を再利用する取り組みだから、無駄なお金は使わないで環境に優しい活動をしたい、という、七瀬さんと桃子さんの願いがあったからです。

真剣な眼差しで講演を聞く深浦校舎の生徒たち
真剣な眼差しで講演を聞く深浦校舎の生徒たち

本音をいうと、私たちの会が貧乏だからです。スコップを買うと、一個500円程度。30個で15000円ほどですが、すべてボランティア活動なので、出来る限りお金を使わない方向へ進んで行かざるを得ません。

流木の上を歩いて長さを測る桃子さん
流木の上を歩いて長さを測る桃子さん
ハザードマップに記された深浦町の主要な避難所
ハザードマップに記された深浦町の主要な避難所

高校生たちが、使う道具を手作りしながら、環境と防災を学ぶボランティア活動。周囲の関心も高く、地元紙を始めFM放送やテレビ局なども、この取り組みを取材して下さるようです。

写真好きな女子生徒。レンズを向けるとポーズをつけてくれた
写真好きな女子生徒。レンズを向けるとポーズをつけてくれた
生徒たちに今後の予定を話す松橋先生
生徒たちに今後の予定を話す松橋先生

できれば、来年も再来年も、この活動を続けます。皆さま、よろしくご支援をお願いいたします。

生徒たちの前で木の説明をする伊勢親方
生徒たちの前で木の説明をする伊勢親方
講演が始まる前にレンズを向けると、普段は照れ屋の七瀬さんが、顔を隠してしまった。左端は顧問の古跡先生
講演が始まる前にレンズを向けると、照れ屋の七瀬さんが、顔を隠してしまった。左端は顧問の古跡先生

地元の高校生らと河川の流木をチップにする活動を開始①

笹内川の中洲に横たわる流木。後方は白神山地
笹内川の中洲に横たわる流木。後方は白神山地

白神山地に通い始めて、今年で20年が過ぎました。新聞記者時代を含めて毎年欠かさず、世界自然遺産の山々を歩き回りました。そして、2010年秋に移住して以来も、必ず足を踏み入れたのが、二級河川の「笹内川」周辺です。イワナ釣りを始め、峡谷でキャンプしたり、キノコを採ったり、楽しい思い出が溢れる素晴らしい渓流でした。

紅葉が真っ盛りの笹内川
紅葉が真っ盛りの笹内川

が、気になる災害が、毎年のように、この川の風景を変えていました。それは、風水害などによる土砂崩れです。2002年には、支流の三つ目沢が向白神岳の斜面ごと大崩落し、その復旧工事に10年以上の歳月が費やされました。そして、心配な存在が、そうした土砂崩れや大水などで流れ出した流木です。

県道の法面に覆いかぶさる雪崩の跡
県道の法面に覆いかぶさる雪崩の跡

急峻な山と、深い峡谷が連続する白神山地は、春先から梅雨時にかけて、融雪雪崩や台風による大雨などで流木が数多く出ます。美しい渓流の中洲や渓畔林などには、枝と根がついたままの巨大な倒木が、いくつも転がっているのです。

流木などに削られて、崩れてしまった河川沿いの県道
流木などに削られて、崩れてしまった河川沿いの県道
流木などで堤防が削られて、崩れた県道
流木などの影響で堤防が削られて、崩れた県道

これらの流木が流れ出すと、堤防を削って道路を崩壊させたり、橋などに引っ掛かって川を塞き止めたりする、危険な存在になります。さらに海へ流出すると、航行する船舶と衝突し、沈没などの事故を発生させる原因になることもあります。

川の中洲の貯まった流木や木片。大水が出ると危険な存在になる
川の中洲に貯まった流木や木片。大水が出ると危険な存在になる
海へ流れ出た流木で海岸線が埋め尽くされた
海へ流れ出た流木で埋め尽くされた海岸

そんな流出木を回収し、細かく切り刻んで町内の観光地「十二湖」の遊歩道に敷き詰める事業を開始しました。実行するのは、深浦町のマタギ・伊勢勇一親方らと青森県立木造高校・深浦校舎(笹浩一郎・校長)の生徒たちです。

木についた泥や小石を除去するため洗う伊勢親方と高校生ら
木についた泥や小石の除去作業をする伊勢親方と高校生ら

白神の森に詳しい親方から、流出した木の種類や特徴などを教えてもらいながら、木を切る作業を手伝い、刻まれたチップを「青池」周辺などに撒く予定です。

笹内川の支流、三つ目沢が崩落した後を見る伊勢親方
笹内川の支流のひとつ三つ目沢が崩落した現場を見る伊勢親方

高校生らの仕事は、チェーンソーなどを使った危険なものではなく、細かく玉切りした木の運搬を手伝ったり、刻んだチップを撒いたりする安全な作業。この活動を通して、河川やその周辺の生態系と防災を学ぶ、「環境、防災教育の場」を作るのを目的にしています。

巨大なドロノキの流木の大きさを測定する木造高校深浦校舎の桃子さん
巨大なドロノキの大きさを測定する深浦校舎の桃子さんと筆者
チップにする丸太を運ぶ哲二。力だけはある
チップにする丸太を運ぶ哲二。力だけはある

これまで、町内の観光地に敷かれていた木材チップは、秋田県などの業者から町が購入して撒いていたもので、白神山地の植物以外の木も含まれているのでは、と指摘されていました。他地域産のチップは、外来種の種や病害虫などを持ち込む可能性があるため、白神の生態系に影響が出ることを心配する声もあります。

高校生らが集めた木を試作のためにチップ工場へ運び込む深浦町の職員ら
高校生らが集めた木を試作のためにチップ工場へ運び込む深浦町の職員ら
高校生らが集めた木で作った試作のチップを袋詰めする深浦町の職員ら
高校生らが集めた木で作った試作のチップを袋詰めする深浦町の職員ら

でも、白神山地を源とする川から流れ出た木を使うならば、まさに地元産。観光地のダメージを和らげる施策も、できる限り地産地消を追求するのが、世界自然遺産の麓の町に課せられた使命である、と町役場(吉田満町長)が全面的に協業して下さっています。

紅葉した向白神岳を見る伊勢親方(右)と筆者。ここが笹内川の源流域
紅葉した向白神岳を見る伊勢親方(右)と筆者。ここが笹内川の源流域

そして、河川を管理する県鰺ヶ沢道路河川事業所(鰺ヶ沢町)が、昨年まで、業者などに委託して処分していた流木や不要な雑木を無償で譲って下さることになりました。さらに、深浦町の建設業者「ホリエイ」さんと、「三浦建設」さんが、笹内川沿いの災害防除工事で切り出した木材を、「チップ用に」と、これも無償で提供して下さっています。

地元の建設業者さんから戴いた木を積み上げる哲二
地元の建設業者さんから戴いた木を積み上げる哲二

そのうえ、ありがたいことに、チップの製材業者・鈴光さん(秋田県能代市、鈴木英雄・代表取締役)が、流木を細かく刻む作業をボランティアでお手伝いしたい、と申し出て下さいました。白神の自然保護を願う高校生らの想いが、大人たちの心も動かしたようです。

高校生らが集めた木を試作が製材業者の鈴光さんでチップにされる
高校生らが集めた木が製材業者の鈴光さんでチップにされる

世界自然遺産から出た流木や、捨てられる運命にあった伐採木も、立派な資源として役に立つときが来ました。海へ流れ出して暴れたり、ゴミとして処分されたりしてきた厄介者に、新たな働き口が見つかったのです。それは、地元の高校生と地域の皆さん、行政機関、民間業者が、手を携えて頑張ることから生まれました。

笹内川の中洲の横たわるドロノキを測定する筆者(右端)と深浦校舎の七瀬さん(中央)、桃子さん
笹内川の中洲に横たわるドロノキを測定する、左から深浦校舎の桃子さん、七瀬さん、筆者

今回の事業を始めるにあたって、吉田満・深浦町長を始め、役場の「町づくり戦略室(松沢公博室長)」や関係各部署、青森県の「鰺ヶ沢道路河川事業所」、林野庁の「つがる森林管理署」の皆さんから、全面的な協力と支援を戴いています。

高校生らが集めた木を試作のため製材業者に運び込む町戦略室の松沢室長(右端)ら
高校生らが集めた木を製材業者に運び込む町づくり戦略室の松沢室長(右端)ら

7月2日には、全校生徒が笹内川で流木を集めて運搬し、チップにする第1回目の作業をします。白神の山を知り尽くした「マタギ」の指導を受け、高校生が世界自然遺産の森で働きながら学ぶ「環境と防災教育」をぜひ成功させたいです。皆さん、応援して下さい。

集めた木の整理をする伊勢親方と高校生ら
集めた木の整理をする伊勢親方と高校生ら

読売新聞の地域版に掲載されました 

http://www.yomiuri.co.jp/local/aomori/news/20140620-OYTNT50592.html

 

子どもたちによるシノリガモ観察.2014の①

川面を叩くように助走をつけて飛び立つシノリガモのオス
川面を叩くように助走をつけて飛び立つオスのシノリガモ
シノリガモ観察に参加することになったいわさき小の新6年生たち
シノリガモ観察に参加することになったいわさき小の新6年生たち

2014年のシノリガモの観察が始まっています。3人娘にもう一人プラスした4人娘も今春、中学生になりましたが、調査、観察への意欲はまったく衰えていません。相変わらず、週末になると、キラキラした眼差しと満面の笑顔で、鼻息荒く浜田家にやってきます。

動体視力が優れているみなみちゃん(左から二人目)が、生き物を見つけた。みんなが、それぞれ観察を続ける
動体視力が優れているみなみちゃん(左から二人目)が、生き物を見つけた

ただ最近、発言や行動が、少しずつお姉さんになってきました。その大きな理由は、彼女たちに後輩が出来たからです。なんと、母校の町立いわさき小学校の新6年生15人が、今年のシノリガモ観察に参加することになったのです。

ブラインドテントに入っても、こっそりと覗くように観察する6年生。いいぞ!
ブラインドテントの窓から、こっそりと覗くように観察する新6年生
ロボットカメラの原理を学ぶ。明るくて、可愛いしぐさに、心奪われそう…
ロボットカメラの原理を学ぶ新6年生。明るくて、可愛いしぐさに、心奪われそう…

年下とはいえ、一つしか変わらないので、強力なライバルになりかねません。後輩の登場に、嫌がらないだろうか、きちんと指導できるかな、と心配していたら、「大丈夫、りつこさん。まかせて!」、「騒がないように、静かに観察できるよう教えるよ」と、大乗り気で、先輩役を引き受けてくれました。

中学校の体育祭に参加した4人娘。先輩や同級生らと記念撮影
中学校の体育祭に参加した4人娘。先輩や同級生らと記念撮影
新6年生によるシノリガモの観察会
新6年生によるシノリガモの観察会

まだまだ、お淑やかさからはほど遠い、はつらつとした4人娘ですが、着実に成長してくれていたようです。頼もしさを感じると共に、これから大人になるまで、どれぐらい私たちと行動を共にしてくれるか、少し寂しい気持ちも湧いてきます。

水しぶきをあげて泳ぐオスのシノリガモ
水しぶきをあげて泳ぐオスのシノリガモ
教室でフィールドスコープを使う訓練。飲み込みが早い
教室でフィールドスコープを使う訓練。飲み込みが早い

でも、新たな6年生の参加で、私たちの会の活動も更なる広がりが出てきそうで、嬉しさの反面、身が引き締まる思いです。今年のシノリガモの繁殖行動の報告は、新6年生の最初の観察会を紹介しながら、始めたいと思います。

鳥に見つからないように寝転んで観察する新6年生。特別な指示もしていないのに、好い根性だ!
鳥に見つからないように寝転んで観察する新6年生。特別な指示もしていないのに‥。素晴らしい!
橋の上から双眼鏡などで観察する新6年生
橋の上から双眼鏡などで観察する新6年生

毎年観察する川に残った繁殖個体は、オス4羽、メス4羽の合計8羽。この繁殖集団のうち、3組のペアができ、残りの2羽は幼いメスと「オジャマ丸」と呼ぶモテないオスです。座学を踏んだ15人が、担任の木村先生と二人の補助の先生、校長先生に率いられて、やってきました。

カップルに追われるメス(上方)。昨年生まれた雛が、母親についてきた可能性も
カップルに追われるメス(上方)。昨年生まれた雛が、母親に付いてきた可能性も

今年の子供たちは、ものすごく積極的です。座学でも、次々に手を挙げて、質問してきます。そしてフィールドで、熱心に観察すると共に、撮影機材などを運ぶのも自ら申し出て手伝ってくれます。これは、4人娘も油断できないぞ!。

人数が多いから、テントがすし詰め状態に‥
人数が多いから、テントがすし詰め状態に‥
渓流の上を飛ぶシノリガモ。繁殖期は、驚かせない限り、ほとんど飛ばない
渓流の上を飛ぶシノリガモ。繁殖期は、驚かせない限り、ほとんど飛ばない

そして、最初の調査の日、いきなり目前でカップルやオジャマ丸が争う姿などを観察でき、参加者全員が「巨人の星」(古いか)の主人公のように、瞳を燃え上がらせながら、帰っていきました。みんな、シノリガモに興味を持ってくれたようで、楽しみなチームの登場です。

新緑が美しい川で、シノリガモ観察をする新6年生たち
新緑が美しい川で、シノリガモ観察をする新6年生たち
川上へ向かって飛ぶオスのシノリガモ
川上へ向かって飛ぶオスのシノリガモ

親鳥たちは、間もなく雛を孵して、子育てに入ります。今年は、3組とも成功するかな。そして、私たちの会も、新たな雛を育てることができるかな。それもこれも、中学生になった4人組の働きに掛かっています。さぁ、みんなで力を合わせて、今年も頑張ろうね。

中学生になった4人娘。体育祭に参加して、同級生らと…
中学生になった4人娘。体育祭に参加して、同級生らと
引率の先生が見守る中、石の上で休む繁殖個体群
引率の先生が見守る中、石の上で休む繁殖個体群

で、新6年生の皆さん。4人のお姉さんと浜田夫婦が、出来る限りの応援をするから、シノリガモの調査、観察をやり遂げてください。同時に、白神の自然やそこに暮らす人たちの文化も勉強しましょうね。今年も残ってくれたカモたちの子育てが成功しますように。そして、一人でも多くの子供たちが故郷に誇りを持てますように。

すごくシャイだけど、元気一杯の深浦っ子たち!、期待しているよ。

ブラインドテントの窓から観察。初めての体験だ
ブラインドテントの窓から観察。初めての体験だ
体育祭で疾走するりかちゃん。後輩たちへバトンタッチ!
体育祭で疾走するりかちゃん。後輩たちへバトンタッチ!

豊饒の海に流れ着いた厄介者②

船体が真っ二つに折れてしまった座礁船。後方は森山地区の家並みと白神の山々
船体が真っ二つに折れてしまった座礁船。後方は森山地区の家並みと白神の山々

 深浦町の笹内川の河口に昨年3月、カンボジア船籍の貨物船「AN FENG8」(アンファン号)(乗組員12人)が座礁してから1年と2か月が過ぎました。重油漏れなどの深刻な二次災害には到りませんでしたが、船は日本海の荒波に揉まれて真っ二つに折れて、今も放置されています。秋田港から北海道の室蘭港へ向かう途中、浅瀬に乗り上げて座礁。幸いにもベトナム人などの乗組員は全員無事でしたが、肝心の船を誰も引き取りに来ません。所有者は中国人。事故に備えた「船主責任保険」には加入していますが、所有権を三人が有しており、その内の一人が保険会社と連絡が取れないそうです。

日本海の激しい荒波で、折れてしまった船倉部分
日本海の激しい荒波で、折れてしまった船倉部分

そのため、三人の船主の同意がなければ保険の適用が難しいので撤去作業ができない、と保険会社は話しています。それもあって1年を過ぎた今も、中央部から千切れた座礁船は、錆びつきボロボロに朽ち果てて、海岸の浅瀬に横たわっています。この保険は、船舶の運航に伴って生じる賠償責任を補助するものです。港湾施設を破壊したり、油を流出させたり、座礁した船を撤去する費用も、当然、適用対象になるはずです。それが、船を放置させたまま、知らんぷりする船主に連絡できないという理由だけで、座礁船はなすすべもなく放ったらかされています。

海水浴場だった浜辺に遊泳禁止の看板が
海水浴場だった浜辺に遊泳禁止の看板が
海水浴客向けに整備された浜も、立ち入り禁止に
海水浴客向けに整備された浜も、立ち入り禁止に。後方は白神山地

ここは、深浦町のマタギ・伊勢親方が、イカやタコを拾う浜。時には、魚も釣るし、流れ着く流木なども拾い集める、暮らしの糧を得る豊饒の海です。でも、放置船が、「危険だから」という理由などで、立ち入ることはおろか、そこで獲物を手に入れることもできません。浜を歩いても、船を遠巻きにして、眺めるだけになってしまいました。

座礁船の横で憤る伊勢親方
座礁船の横で憤る伊勢親方
船主からはなしのつぶて。工事中の看板がむなしい
船主からはなしのつぶて。工事中の看板が腹立たしい

座礁現場近くの波打ち際は、「海岸法」による保全区域に指定されています。でも、船があるのが微妙に海上なので、法的な撤去命令が出せません。それをいいことに、船主も保険会社も、のらりくらりと誠意ある対応をしないのが腹立たしいです。青森県は、このまま持ち主が船を放棄した場合も想定して、法律の改正を求める要望を国へ出していました。すると、「座礁船の撤去命令を出せる範囲を公共海岸に限定せず、海上も含めた保全区域内とする」、「命令する相手が不明な場合は、海岸管理者が自ら措置できる」、などとする改正案が今春、政府の閣議で決定されたそうです。

いつまで、このままなのか。舐められているとしか思えない対応
いつまで、このままなのか。舐められているとしか思えない対応

 これまで、国内のあちこちの港や海岸に放置されている座礁船の多くを、国や地方の自治体が費用を捻出して撤去していました。ゆえに、この法改正が解決への一縷の望みになるか、とも思われるのですが、事態はそう甘くないようです。第3国の船主に撤去命令を出しても、「会社が倒産して、費用がない」とか、「所有者が行方不明になった」とか、適当な理由を付けられて、逃げられることが多発しているからです。悪質なのは、ロシアや北朝鮮、中国などの国々で、何度も煮え湯を飲まされ続けていると聞きます。

一緒に野生動物の観察を続けている、みなみちゃん。写真家になりたい、と夢を語ってくれている
一緒に野生動物の観察を続けている、みなみちゃん。今年中学校に入学。写真家になりたい、と夢を語ってくれている

そして、船籍がカンボジアであるのも曲者です。自国籍のこうした船がトラブルを起こしても、同国は「責任は船主や荷主にある」として、一切、関わらないそうです。今から20年近く前に、内戦後のカンボジアを取材しましたが、外務省の職員が勤務中に通訳のアルバイトに精を出し、賄賂で私腹を肥やしていました。微笑みを絶やさない、とても優しい国民性と、生産性の高い豊かな国土を誇っていましたが、ベトナム戦争などで大国に翻弄されて以来、国民を大虐殺したり、今も貧困で苦しんでいたりする状態が続いています。たぶん法治国家としての体をなしていないのでしょう。こんな旗国の名を借りた他国籍の船が、堂々と日本へ入港し、トラブルの元凶になっているのです。

ゴミだらけの浜。大陸や半島からの漂着物が多い
ゴミだらけの浜。大陸や半島からの漂着物が多い
人型の漂着物。アンファン号から流れ出た物
人型の漂着物。アンファン号から流れ出た物

そして、風光明媚で豊かな漁場を持つ地方の海で座礁し、漁業やレジャー産業に大打撃を与えます。行政が動き出すまでは何の補償もないので、憤る住民の声が大きくなり、国もしくは県が、「行政代執行」に踏み切らざるを得なくなります。この場合、厳しい強行手段で船主を追い込まない限り、踏み倒されることが多いそうです。結局、最後は国民の税金で賄うことに。九州で新聞記者をしていた時代、そうした事例を数多く見たので、今回も同じ轍を踏みそうな気がして仕方ないです。すべての撤去には、たぶん数億円程度の費用が掛かるでしょう。それを税金で肩代わりするなんて、いつから日本はこんなお人好しの国家になったのでしょうか。

風光明媚で豊穣の海辺が台無し
風光明媚で豊穣の海辺が台無し
笹内川の河口付近には、タイヤなどの漂着ゴミが‥
笹内川の河口付近には、タイヤなどの漂着ゴミが‥

いっその事、この船主が所有する他の船舶が国内の港に入港したら、差し押さえて撤去費用を負担させるぐらいの気構えで臨んで欲しいです。先日、かの中国に、戦争中の話を蒸し返された商船三井の船が差し押さえられ、多額の賠償金を払って解放されました。同列に扱える問題ではないのですが、国や当該の地方自治体が、毅然とした態度を示せないものですかねぇ(民族的な昂揚とは別次元で)。

人間が流れ着いたのかと思った光景。近づいてみると‥
人間が流れ着いたのかと思った光景。近づいてみると‥
座礁船から流れ出たごみと漂着ゴミが海岸線に散らばっている
座礁船からの流出物と漂着ゴミが海岸線に散らばっている

さて、この座礁船が放置されている浜に、なんと人が倒れています。「えー」と声をあげて駆け寄ると、海で働く方々の人型の耐寒用スーツでした。韓国のフェリーボートが転覆し、大勢の死者が出たので、お気の毒な亡骸が流れ着いたのかと思って、びっくりしました。が、これも、アンファン号から流出したゴミです。この座礁事故の後、美しかった海岸は漂着するゴミで見る影もありません。伊勢親方が大切にしてきた美しい海と浜を、早く取り戻したいものです。(哲)

千切れた船橋部分は海上にある。後方は岩崎の街並み
千切れた船橋部分は海上にある。後方は岩崎の街並み

早春の森で樵(きこり)の修業(下)

冬枯れた樹々と下生えの緑。この季節の山も美しい
冬枯れた樹々と下生えの緑。この季節の山も美しい

深浦町に移住して、3年と7カ月が過ぎました。まさに、光陰矢のごとし、あっという間の日々でした。もっとのんびり暮らせるのでは、と思っていましたが、山での仕事、子供たちとの活動、親方の人生の記録‥。想像以上の忙しさで目が回りそうになることもあります。でも、やりがいのある、とても楽しい事ばかりです。

急斜面でも、機材を手に天狗のように歩き回る伊勢親方。アスファルトの平地よりも動きが速い
急斜面でも、機材を手に天狗のように歩き回る伊勢親方。アスファルトの平地よりも動きが速い

そして、白神の麓で暮らしてみて、自然の一部として人が生きてゆく事の厳しさと難しさを思い知らされました。そのひとつが、「命を頂く」という行為です。親方と一緒に、山で獲るウサギやクマ、ヤマドリなどの獣肉。山菜やキノコなど原生林からの収穫物。海からの寄りものである海藻やタコ、イカなど。すべてに命が宿る、自然からの貴重な恵みです。それがなければ、太古の昔から人は生き続けることができなかったでしょう。

冬枯れた樹々の下は思わぬ青草が茂っていた。それは猛毒の‥
冬枯れた樹々の下は思わぬ青草が茂っていた。それは猛毒の‥
毒草のトリカブト。なぜか、この山に異常に多く見られる。シドケ(モミジガサ)の若芽に似ているので要注意!
なぜか、この山に多く見られるトリカブト。シドケ(モミジガサ)の若芽に似ているので要注意!

その中で、最も重要な存在のひとつが、冬場の燃料になる薪です。今よりも燃料事情が悪かった時代、灯油やガスは田舎の村にほとんど届きませんでした。そして、現金収入が少ない家庭は、山から得る薪や自ら焼いた炭で暖を取り、煮炊きをしたのです。その風潮は今も引き継がれており、白神山地周辺の村では、薪ストーブを使っている家庭が数多く残っています。

伐採したキハダの木を玉切る伊勢親方。この木は漢方薬にもなる
伐採したキハダの木を玉切る伊勢親方。切り粉で親方が霞んで見える。この木は漢方薬にもなる
伐採する木を見上げる伊勢親方。この傾斜で60度以上ある
伐採する木を見上げる伊勢親方。この傾斜で60度以上ある
キハダの木を玉切りする伊勢親方
キハダの木を玉切りする伊勢親方。この木の皮をむくと黄色い地肌が出てくる

伊勢親方のお宅の暖房も、薪ストーブです。所帯を持った時から、ずっと使っていると話されます。それを見習って、我が家も薪ストーブを導入しました。それがもう、メロメロになるほど暖かくて、気持ち良いのです。灯油や電気のストーブでは味わえない温もりを感じます。そして、ゆらゆらと燃え続ける炎を見ていると、心が癒され、時の経過を忘れるほど。でも、最高の温もりと癒しの代償として、木の命を頂きます。申し訳ない気持ちでいっぱいですが、人が生きてゆくうえで避けては通れない道として、感謝の気持ちを込めて焚かせてもらっています。

伐採の現場で花を咲かせていたカタクリ。この森はカタクリの大群落がある
伐採の現場で花を咲かせていたカタクリ。この森はカタクリの大群落がある

その薪ですが、我が家では、だいたい一冬で2棚分使います。この地域の1棚は、約1.8㍍の長さに切った原木を幅1.8㍍×高さ1.8㍍に積み上げた量です。地元の森林組合や業者から購入すると、2棚で45000円前後の費用が掛かります。でも、山から切ってくると、その半分ぐらいの費用で、3倍~5倍の量が手に入るのです。危険と大変な労力が必要で、その年によっては伐採をあきらめざるを得ない、険しすぎる場所もありますが、十二分に見合う作業といえます。

フキノトウなどが顔をのぞかせる山道を歩く伊勢親方
フキノトウなどが顔をのぞかせる山道を歩く伊勢親方

でも、そのためには、地域の薪炭材を供給する組合に入らなければなりません。それは、代々引き継がれてきた地元の山の入会権を得るためです。こうした風習は、薪を燃料としていた時代には、全国のあちこちであったとされていますが、今はほとんど残っていないようです。伐採する場所は、主に国有林や町有林などで、関係各所と協議して払い下げを受けます。当然、集落の水源地や防風林、貴重なケヤキなどには、手を付けません。そして、一度伐採した森は数十年間休ませ、また木が生え揃ったら薪炭材として命を頂くのです。

薪ストーブの暖かい炎のありがたみを堪能する夜。とても癒される時間だ
薪ストーブの暖かい炎のありがたみを堪能する夜。とても癒される時間だ
積み上がった我が家の薪。伊勢親方と折半したが、お互い2~3年分ぐらいは集まった
積み上がった我が家の薪。伊勢親方と折半したが、お互い2~3年分ぐらいは集まった

親方との樵の仕事も、本日が最終日。未熟な夫はまだ、チェーンソーで山の立木を伐らせて貰っていませんが、次の機会には挑戦できるでしょう。少し心配ですが、この森の住人になるためには、必ず通らなければならない道です。今回手に入った薪は、約9~10棚。当然、親方と山分けしました。一緒に行動する限り、必ず親方は獲物を山分けにして下さいます。こちらの働きがいくら悪くとも、です。

麓の集落が見える山肌に残る伐根(手前)。この森の木が地域の燃料として使われてきた
麓の集落が見える山肌に残る伐根(手前)。この森の木が地域の燃料として使われてきた

私たちが暮らす集落の裏山にも、春の息吹きが感じられます。冬枯れた木々の林床には、紫色の可憐な花を咲かせたカタクリが風に揺れています。そして、猛毒のトリカブトも、一斉に出てきました。この山は、トリカブトが多い場所で、芽吹きが、山菜の女王と呼ばれるシドケ(モミジガサ)に似ており、注意が必要です。

冬枯れの樹々の下に可憐な花を開かせるカタクリ
冬枯れの樹々の下に可憐な花を開かせるカタクリ

人間の営みに何が起ころうと、白神の自然はダイナミックな四季を感じさせてくれます。自然から命を頂くという行為も、私たちが食物連鎖の一部に組み込まれている証でしょう。恵みに感謝しつつ、この森の自然と、ここで暮らして来た人々の生活文化を守る一助でありたい、との想いを強くしています。

トリカブトの若葉をかき分けて斜面を登ってくる伊勢親方
トリカブトの若葉をかき分けて斜面を登ってくる伊勢親方

早春の森で樵(きこり)の修業(上)


山から伐採してきた木。約1年間は乾燥させる
山から伐採してきた木。風通しが良い場所で約1年間は乾燥させる

我が家の重要な暖房器具「薪ストーブ」の燃料を調達するため、早春の山へ木を伐り出しに行きました。当然、まったくの素人なので、杣夫歴50年以上の伊勢勇一親方の後ろを金魚の糞のようについて行くだけです。白神の4月の山は、ちょうど雪が解けて。下生えが出始めた頃。樹々の新芽はまだ固く、冬の装いが色濃く残っています。

落ち葉が敷き詰められた冬枯れた山道を歩く伊勢親方。所々に緑色した春の息吹きが見える
落ち葉が敷き詰められた冬枯れた山道を歩く伊勢親方。所々に春の息吹きが見える

そんな中を伊勢親方は、チェーンソーと鳶(とび)を手に、ゆっくりとした歩みで登って行きます。「急ぐんじゃない。焦りや一瞬の油断が命取りになるからな。落ち着いて周りをよく確かめて作業するんだぞ」。いつになく真剣な口調で呟く親方の言葉が、白神岳から吹き降りてくる寒風よりも身を引き締めてくれます。

私らが暮らす集落を共有林から見下ろす。冬枯れの山を春の色が駆け昇って来ていた
私らが暮らす集落を共有林から見下ろす。冬枯れの山を春の色が駆け昇って来ていた

木を切る仕事は、まさに命がけ。倒れてきた木の下敷きになったり、枝に叩かれてたりして亡くなった方は、深浦の町にも数多くいると聞きました。親方の仕事仲間の何人もが、山で帰らぬ人になったそうです。みんなベテランだったのに、わずかな隙が生と死を分けた、と仰られます。

傾斜が60度を越える斜面を鳶を支えにして降りてくる伊勢親方。後光が差すように林間から朝日がのぞいた
傾斜が60度を越える斜面を鳶を支えにして降りてくる伊勢親方。後光を差すように林間から朝日がのぞいた

世界自然遺産・白神山地の登録地は、当然、1本の木も切ることはできません。遺産地域を取り巻く生態系保全地域も、同じような扱いです。が、その周辺の山々は、大昔から地域の人たちが持続可能な形で利用しながら暮らしてきました。今回、私たちが木を伐採した場所も、薪炭材として国から払い下げて貰った山の斜面です。地域の共有林として、100年以上前から、地元の人たちが利用し続けて来た森です。

満開になったスイセンの花
満開になったスイセンの花

さぁ、親方の樵の腕前を見せて戴きましょう。「よし、まず運び出しやすいように、林道脇のクルミから切るぞ。この方向に倒すので安全な場所に避難していなさい」。チェーンソーのエンジンをブルンと始動させ、直径70㎝ぐらいの幹に鋸刃をあてます。「バゥン、バゥン。バランバンバンバン‥。ヴォー、ヴォー、ヴォーォー」。山々に甲高いエンジンの音が響き渡ると、静かだった森が急にざわめき始めたように感じます。

伐採する木を見上げる伊勢親方。白神山地にある樹種は、すべて頭に入っている
伐採する木を見上げる伊勢親方。白神山地にある樹種は、すべて頭に入っている

そして、エンジンが止まり、鳶を手にした親方が、「おぉーい。倒れるぞ」と一言。「メキ、メキメキメキ、ドッシーン‥」。樹齢100年前後のクルミが地響きをたてて倒れました。その途端、切り口から、シャワーのように樹液がこぼれ出します。「この時期のクルミはたっぷりと水を吸い上げているからな。だから重いぞ」

まず、木に巻きついた蔓を切る。複雑に絡まった蔓のおかげで、思わぬ方向に木が倒れることもある。
まず、木に巻きついた蔓を切る。複雑に絡まった蔓のおかげで、思わぬ方向に木が倒れることもある。

約1.8㍍の長さに、幹を玉切りしながら親方が話されます。そして、斜面から林道へ転がり落とした幹を、馬鹿力の夫が抱え上げて軽トラックの荷台に積んで行きます。でも、二人とも、表情が冴えません。クルミの木は成長も早く、巨木になるのですが、重い割りには燃料としてはダメらしく、作業が割に合わないそうです。

木が倒れる方向に受け口を作る。これはイタヤカエデの木
倒れる方向に受け口を作る。これはイタヤカエデの木
急傾斜の斜面でも、バランスを崩さずにチェーンソーを扱う。まさに職人技
急斜面でも、バランスを崩さずにチェーンソーを扱う。まさに職人技

そして次は、イタヤカエデ。これは、薪にしても火持ちがよく、最高の燃料になる樹種です。約10分で切り倒し、幹を玉切りして行きます。トラックの荷台に積んで麓の村まで運んでくる夫の仕事が次々と溜まるほど、親方の仕事のペースは落ちません。現場の斜面は45度以上あり、切り立った場所は60度以上です。私などは、何かに掴まっていないと立っていられません。

木が倒れる方角を何度も確認する。この木は複数の蔓が絡まっており危険なためだ
木が倒れる方角を何度も確認する。この木は複数の蔓が絡まっており、危険
親方愛用の小型の鳶。急傾斜の林道越しに日本海が見える
クルミの木に打ち込まれた親方愛用の小型鳶。急傾斜の林道越しに日本海が見える
「倒れるぞー」。親方の渋い声が山々に轟く
複雑に蔓などが絡み合った木。時にはクサビを打って倒すこともある

そんな中、チェーンソーと鳶を手にした親方が、天狗のような足さばきで縦横無尽に歩き回ります。そして、「さぁ、今日は終わりにしよう。日が暮れると危ないからな。ご苦労さん」と、涼しい顔で山を下って来られます。それに対し、汗と泥にまみれ、へとへとになった夫が哀れで、情けない。でも、仕方ないよ、初めてだものね(笑)。この話は、もう一話続きます。(つづく)

蔓が絡んだイタヤカエデがようやく倒れた。危険な状態だった
蔓が絡んだイタヤカエデがようやく倒れた。とても危険な状態だった
さて、この花は何の花?
さて、この花は何?

初春の海霧に包まれた村

民家の隙間を縫って集落内に入ってくる海霧

川沿いに立ち並ぶ民家の隙間を縫って集落内に入ってくる海霧

沖縄県の遺骨収集活動から青森県へ帰って、ほぼ1週間。自宅へ帰ってから、2日間は何もしないでゴロゴロしていました。そして、ここ数日は長旅を清算するために、荷物の整理と部屋の片づけを始めました。まだ、疲れは抜けきっていませんが、子どもたちとの活動を再スタートさせるために、のんびりもしていられません。だらけ切った夫の尻を叩きながら、家事と庭仕事をこなして行きます。

集落の生き字引と呼ばれるお隣の長老。齢は90歳を越えているが、今も農作業や薪割りも現役でされている。貴重な日中戦争の生き残りの一人でもある

集落の生き字引き。齢は90歳を越えているが、現役で農作業や薪割りをされる長老。貴重な戦争の生き証人

北国の深浦町には、まだ所々に雪が残っていますが、白神の麓の集落にも、徐々に春の足音が近づいて来ています。そんな夕刻、お隣に住んでおられる90歳の長老から、庭で太平洋戦争のお話を聴いていました。すると、海の方角から川や道を通って、真っ白な煙と言うか蒸気のような塊が、どんどん集落内に流れ込んできます。

海霧で霞んだ青森の自宅。太陽も朧げにしか見えない

海霧で霞んだ青森の自宅。太陽も朧げにしか見えない

思わず、「え、火事!」と叫ぶと、長老が、「いやいや海霧だ。海水温と大気に温度差が出来ると発生するんだよ」と、微笑みながら教えてくださいます。霧は、あっという間に家々や畑を真っ白に包み込み、視界は10メートルもあるかないか。驚いた夫が自宅へ飛び込み、カメラを持ち出して、パシャパシャと写真を撮り始めました。

シノリガモが子育てする川も、10㍍先が霞んでいた

シノリガモが子育てする川も、10㍍先が霞んで見えない

そんな姿を横目に、「年に1~2回、春先に見られる現象だけど、こんなに濃いのも珍しい。今日は暖かかったからな」と、静かに話してくださる長老。が、「ん、これが出ると冷え込むんだ。じゃ」と、早々に自宅へ戻られます。珍しい光景に夫は夢中でシャッターを切り続けています。

軽トラックで海へ向かおうとしたら、濃霧で夜のような暗さになった

軽トラックで海へ向かおうとしたら、濃霧で夜のような暗さになった

さぁ、海へ行くぞ、と夫。軽トラックのエンジンを掛けて、イライラした様子で待ち構えています。もう、気が短んだから‥。でも、海がどんなになっているか、私も見たい。助手席に飛び乗って、港へ行ってみました。が、がっかり。霧が濃すぎて何も見えないのです。船が出入りする港の入口も見えません。でも、こんな光景は初めて。まるで、ミルクの中にいるようです。

港へ行ってみると、ミルクの中にいるような錯覚に陥った。海が全く見えない

港へ行ってみると、ミルクの中にいるような錯覚に陥った。海が全く見えない

海霧は、暖かく湿った空気が温度の低い海面に接することで生じるとされ、沿岸部の陸上にも流れ込んで来ます。これは移流霧と呼ばれており、春から夏にかけて三陸沖や北海道東方沖などでも発生します。濃密で長続きするため、周辺を航行する船舶にとっては大きな障害となります。更に、この霧が陸上に滞留すると気温が上がらなくなり、東北地方の冷害を引き起こす原因のひとつにもなっているようです。

川へ道具を洗いに行くお向かいのおやじさん。後ろ姿が霧にかすむ

川へ道具を洗いに行くお向かいのおやじさん。後ろ姿が霧にかすむ

この集落に移住して3年半が過ぎました。もう今年で、4度目の春を迎えます。こんな私たちへ、世界自然遺産の森や川、海は、過去に体験したことがないような表情を見せてくれます。でも、3月末の北国の山は、まだ地味な冬枯れの風景のままです。そして、色鮮やかな春の彩りに里山が覆われるのには、もう少し猶予が必要です。

冬がれた森に、薪ストーブの煙突から出る煙が漂った

冬枯れた森に、薪ストーブの煙突から出る煙が漂った

「白神の四季は海からやってくる」と、集落の長老やマタギたちが口を揃えます。まず、春の海で藻が茂り、岸辺に魚がのっこんで、山々も麓から新緑に染め上げられてゆきます。雪に閉ざされていた集落が、ある朝突然、一気に明るくなるような暖かい陽光に包まれると、白神の住人は春の訪れを感じます。この海霧も、その先導役なのかな。春よ来い、早く来い!

家の前の道も真っ白な霧で包まれた。お隣の家が見えない‥

家の前の道も真っ白な霧で包まれた。お隣の家が見えない‥

いわさき小学校で「夢をはぐくむ教育講話」

除雪した雪山の上から、ソリで滑り降りる。これが体育の授業?

除雪した雪山の上から、ソリで滑り降りる。これが体育の授業?

深浦町立いわさき小学校で、「夢をはぐくむ教育講話」として約40分間の授業をしました。これは、同小の5、6年生が、様々な職業の人から、その職に就くまでの過程や体験談を聞く時間です。夫が、新聞社のカメラマンを志すきっかけや、新聞記者時代の苦労話やエピソードなどを語りました。

えー、かえで、速ーい!

きゃー、楽しい!。えっ、かえで、速ーい!!

あ、誰だ!、背中を押したのは!!

あ、誰だ、背中を押したのは!

6年生の体育、ソリの授業。2人で滑ったら、でんぐり返っちゃったぁ

2人で滑ったら、でんぐり返っちゃったぁ

いつも講演中は、スライドショー形式で写真を見せているため、パソコンの操作に没頭する夫です。果たして、きちんとお話しできるのか心配でした。が、案の定、予定時間を大幅に越えてしまい、子どもたちの質問や感想を話す時間が削られる事態に。開催して下さった教頭先生や担任の先生方を、ハラハラさせて終わりました。

チャレンジャーのかずみちゃん。ん、モーグル?、ソリが浮いてるよ

チャレンジャーのかずみちゃん。ん、モーグル?、ソリが浮いてるよ

男の子も、負けてないぞ!

男の子も、負けてないぞ!

先生もな!。おっ!!、かえで、危ない!!!

先生もな!。おっ!!、かえで、危ない!!!

講話の後、こんなヘボなお話で、子どもたちに伝わったんだろうか、と考え込む夫に、「まぁ、声の大きさと一生懸命さは伝わったんじゃない」と茶化すと、傷ついたのか、しばらく無口で不機嫌な顔をしていました。でも、「仕事も勉強もスポーツも、最後まで絶対に諦めない心が大切」という主題は、伝わったと思うよ。時間をオーバーするぐらい、あれだけ熱心に説いたんだから、ね。

恥じも外聞もなく絶叫!。浜田さん、こんな写真出さないでぇ(笑)

恥も外聞もなく絶叫!。浜田さん、こんな写真出さないでぇ(笑)

お昼のチャイム鳴ってるけど、それ!、行くよ!!

お昼のチャイム鳴ってるけど、それ!、行くよ!!

いつも、おしとやかな理花ちゃんまで!

いつも、おしとやかな理花ちゃんまで‥

いわさき小学校での授業が終わった後、校庭で6年生が体育の授業をしていました。何と雪が積もったグラウンドで行われていたのは、ソリの授業です。除雪でできた雪山を利用し、子どもたちが次々と滑り降りてきます。私の育った岡山では、冬の体育は縄跳びでした。ソリやスキーの授業‥、なんて楽しそうなんでしょうか。

北国の冬の屋外体育。美しい風景と子どもたちの満面の笑顔

冬の屋外体育の授業。美しい雪景色に子どもたちの満面の笑顔が溶け込む

校庭に積み上がった雪山から、二人乗りのソリで、それっ!

校庭に積み上がった雪山から、二人乗りのソリで、それっ!。柔らかな北国の太陽が見おろしていた

え、みんなの前でスノボ?。かずみちゃん、ずっこける

カッコイイ、かずみ!。みんなの前でスノボ?

でも、よく見ると、バランスを取って滑り降りたり、何度も雪山を駆け登ったりで、かなり体力や筋力を使いそうです。皆、頬っぺたを真っ赤にして、ハアハアと息があがっていますが、全員が輝くような笑顔です。やはり、友達と一緒に滑るのが楽しいんでしょうね。冬空に弾ける、その歓声がすべてを物語っています。

危なーい!。どいて、どいて!!

危なーい!。どいて、どいて!!

いやー、恥ずかしい!。撮らないで!!、浜田さん!!!

いやぁー、恥ずかしい。撮らないで!、浜田さん!!

でも、もう1回、行っちゃうよ!

でも、もう1回、行っちゃうよ!

この子たちも今春から中学生です。全員が幼稚園の時から同じクラスで学んできた大の仲良したち。これからは、大人の階段を一歩ずつ登り始めることで、それぞれ歩む道が変ってくることでしょう。でも、もう少し、可愛い深浦っ子でいてね。高校へ進むまでは、まだ、みんなで一緒に遊び、学べるよ。浜田さん夫婦は、そんな君たちをいつまでも応援しているからね。

3人乗りはダメ!。危ないって!!

3人乗りはダメ!。危ないって!!

新記録達成よ!。身軽なみなみちゃんが、最長不倒距離

新記録達成よ!。身軽な、みなみちゃんが、最長不倒距離

冬が終わらなければいいのに‥

冬が終わらなければいいのに‥