河川の「厄介者」である流木などを集めて、木材チップにするボランティア事業を7月2日、青森県深浦町の二級河川・笹内川で実施しました。深浦町と県立木造高校深浦校舎、私たちの「白神の生き物を観察する会」で企画を練り上げたイベントです。
笹内川は、世界自然遺産・白神山地を源にする美しい渓流です。盛夏を控え、緑が濃くなってきた山を背景に、「白神ライン」と呼ばれる県道28号(岩崎西目屋弘前線)沿いの河原で、流木や防災工事で出た木を集めました。
今回の作業は、県立木造高校深浦校舎の全校生徒71人と教職員、深浦町の職員を合わせて、約100人が参加。当然、私たちの「白神の生き物を観察する会」のメンバーも加わりました。
作業の開始前に、同町の菊池雄司・副町長が、「流倒木は、川の土手を削ったり、鉄砲水の原因となったりするだけでなく、海に流れ出ると漁船の事故を誘発する危険な存在。高校生が、災害を防ぎ、環境を守る手助けをしてくれて、感謝している」と、ご挨拶。
まずは、あらかじめ集めてあった、サワグルミやヤナギ、ハリギリなど約20種類の木を、トラックに積み込む作業です。梅雨晴れの朝、男女の生徒が入り混じり、1㍍~2㍍の長さに切られた木を抱えたり、担いだりしながら、荷台に運びます。一人で持ち上がらない大きな木は、二人がかりで挑みます。
トラックの荷台に乗った仲間が手際よく積み上げて行き、作業は1時間足らずで終了しました。量で言えば、2㌧トラック2台分、合計3~4㌧ぐらいでしょうか。結構、重いようで、車の重心も下がってみえます。この木は、すぐに秋田県能代市の製材業者「鈴光」さんに運ばれ、チップ化されます。
町が、観光地の遊歩道に撒く木材チップは、毎年、3トン前後。実は、高校生らが集める流木だけでは足りません。そこで、災害防除工事などで出た不要な雑木を資源として譲り受けて、チップ用の材として追加したのです。これらは、地元の建設業者「ホリエイ」さんと、「三浦建設」さんから戴きました。道路沿いの斜面から、切り出されたものだそうです。ありがたい限りです。
「鈴光」さんに到着した木は、太いものは重機で割られ、手際よくコンベアーに乗せられて、瞬く間にチップに砕かれます。出来上がったチップの一片の大きさは、4~5センチ。作業員の方から、「いい木だね」と言ってもらい、嬉しくなりました。
一方、積み込み作業を終えた高校生は、すぐに3㌔メートルほど先の上流へ移動し、実際の流木を前に体験学習です。ここには、数年前から、河原に引っ掛かり、放置されたままのドロノキ(約22m、胸高直径約60cm)があります。深浦のマタギ・伊勢勇一親方(75)を先生に、木の生態や木材の特性などの説明を受けました。
ドロノキの名前の由来は、木の質が柔らかく、あまり役に立たないという意味で、「ドロ」と呼ばれた説と、切断するときに刃物を痛めるので、木が泥水を吸い上げているという憶測から名付けた、とする説があるそうです。が、真意は不明。
見学した後は、この流木を撤去します。まず、親方がチェーンソーを使って切断。あまりの手際の良さに、高校生から拍手が起こりました。そして、約2メートルの長さに玉切った木を、今度は生徒たちがロープなどを使って、安全な場所へ移動させました。これはストックして、後日、チップにする予定です。
午後は深浦校舎に戻り、チップを袋詰めする作業に掛かりました。生徒の減少で廃部になったテニス部の、テニスコートが作業場です。
午後2時、自分たちが集めた木を原料に、出来立てのチップを載せたトラックが到着。2台のトラックの荷台から、木片がこぼれ落ちると、「すごい量」、「木の香りがする」などの歓声が上がりました。生徒たちは、ペットボトルを再利用したスコップなどを使って、熱心に土嚢袋に詰め込みます。
チップの袋が、山のように校庭の隅へ積み上げられると、日に焼けて汗にまみれた生徒たちの顔に真っ白な歯がこぼれました。秋まで学校が保管し、10月末ごろ、十二湖の森林セラピー基地の遊歩道に敷設されます。
作業に参加した、「白神の生き物を観察する会」の七瀬さん(同校舎2年生)は、「日曜日のたびに現場へ出向き、木をタワシで洗ったり、種類を調べて大きさを測ったりして、玉のような汗をかきました。今日も、重い木をトラックに積み込むとき、仲間がケガをしないかハラハラ‥。でも、チップになって帰って来ると、その量に驚くのと同時に、深い満足感があります。資源を無駄にしないで有効利用する私たちの活動は始まったばかり。来年以降も続けて行きたいです」と、力強い決意表明。
そして、同じメンバーの桃ちゃん(同校舎2年生)は、「危険な流木を回収するボランティア活動に、校舎の先輩や後輩、クラスメイトらと一緒に関われたことが、とても有意義で嬉しいです。でも、野生動物の宝庫である森に、心ない方が不法に捨てたゴミを見かけることがあります。、今後も、世界自然遺産に登録されている白神山地の自然が守られるよう、積極的に行動します」と、語りました。
この活動を、今後も、同校舎の生徒さんたちをはじめ、深浦町や支援者の方々とともに、続けられることを願っています。だから、これからも頑張ろうね、七瀬さん、桃ちゃん。そして、役場の「町づくり戦略室」の皆さま、今度とも、よろしくお願いします。
さらに、この場を借りて、活動に全面的な協力を申し出て下さった、林野庁・津軽森林管理署の皆さま、青森県の鰺ヶ沢河川道路事業所の皆さま、製材業者の「鈴光」さん、「ホリエイ」と「三浦建設」の皆さまに、心からの御礼を申し上げます。ありがとうございました。