みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
「学生」ーみらいを紡ぐボランティア
サイト管理人のブログです。

ブログ一覧

桃ちゃんは、田舎暮らし!①「故郷の味は祖母の『けんちん(けの汁)』」

桃ちゃん(自画像)

 新年明けましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年も宜しくお願い申し上げます。

 改めまして、こんにちは!、桃子です。戦没者の遺骨収集などを取組みの柱とする「みらいを紡ぐボランティア(以下みらボラに略)」に参加して、ほぼ3年。戦争関連だけでなく、自然の事や地域の伝統的な暮らしなどについての発信もしたくなり、ブログを始めます。

危険な流倒木をチップにして観光地の遊歩道を守る取組みに臨む桃ちゃん。この活動で、第18回日本水大賞の「未来開拓賞」を受賞した

 タイトルは、世界自然遺産・白神山地の麓の集落で生まれ育った私をイメージして、仲間たちが考えてくれました。面映ゆいのですが、楽しみながら、面白がりながら、田舎の情報を伝えて行きたいです。お付き合いください。

    桃子の家の「けんちん(けの汁)」

 第一弾は郷土料理の話。年末年始に必ず私の家の食卓に並ぶ、「けんちん」のレシピを祖母から教わったので、ご紹介いたします。

 これは、さいの目切りにした山菜と根菜、砕いた豆腐などをじっくり煮込み、醤油や味噌で味付けした汁物です。主に年末からお正月にかけて作られ、具材や味付けも各家庭で異なる「ふるさとの味(郷土料理)」です。

ワラビ、アイコ、フキ、ナラタケ、シイタケ、大根、人参、牛蒡、こんにゃく、豆腐、油揚げをストーブの上で煮込む。祖母いわく、「何を入れてもいいんだ」そう

 私にとっては毎年、この時期になると食べたくなる、おばあちゃんの味。我が家では「けんちん」と呼んでいますが、津軽地方の郷土料理としては、どうやら「けの汁」という名前の方が有名だと、ネットには出ています。

   味付けをしたら最後にカリカリに焼いた昆布を砕き入れる

 恥ずかしながら、この歳になるまで知りませんでした。はたして深浦町やそれ以外の地域では、どう呼ぶのか?。これもネットで調べてみました。

 すると、「けんちん汁」は日本全国に存在するらしく、語源は鎌倉時代に創建された「建長寺(けんちょうじ)」で作っていた精進料理から来ているとされています。「けんちょうじ→けんちん」に変化して広まったという記事。うーむ、勉強になる。

    ボランティア活動でテレビ局の取材を受ける

 なぜ今になって祖母から料理を習おうと思ったのか。それは、ボランティアの活動でお会いする方々を通して、大切な人と過ごせる時間は「有限である」と感じることが多くなったからです。身近すぎて忘れがちになっていましたが、自分のふるさとの伝統や文化を改めて学び、継承していくのも「みらいを紡ぐ」事に繋がるのでは、と気付いたのです。

塩漬けにした山菜を水にさらして塩抜きする

 具材のアイコやフキなどの山菜は毎年、祖母が山を歩いて採取し、春のうちに塩漬けて保存したものばかり。野菜の多くも畑で育てていました。おもに狩猟と採集で暮らしてきた地域の人たちが、昔ながらの知恵や工夫を詰め込んだ料理なのです。

 これからは、祖母から学ぶ料理などを通して、山菜やキノコ採り、マタギの狩猟のことなども紹介していければと考えています。よんでくださいね!

デブ夫婦のウォーキング日記⑪「ハタハタ来たる、ブリコの不思議」

ハタハタの卵「ブリコ」

 12月15日の記事です。

 西津軽や秋田沿海の方々が待ち望んでいる時期がやってきました。そうです、ハタハタの季節。繁殖のために沿岸近くに集まり、海底や岩場にある海藻へ大量に卵を産み付けるのです。

 ウキペディアなどによると、分類学上ではスズキ目ワニギス亜目ハタハタ科に属していおり、カサゴ目のカジカの仲間に近いそうです。秋田の県魚で、漢字では「鰰、鱩、雷魚、燭魚」とも表記されています。

夕暮れの中、ハタハタを狙って集まって来たゴメら

 この時期になると、集落内の方々は落ち着きがなくなり、そわそわ、うきうきし始めます。道行く人々が会えば、小声で囁き合ったり、頷きあったり。「そろそろか?」「んにゃ、まだだべ」。そして、強風が吹いて海が荒れ、嵐のような吹雪の中、海の男たちは出漁し、舟に乗れない女性や高齢者も、港の防潮堤などですくい網を振るいます。

海岸に打ち上げられたブリコを狙うゴメ

 そんなハタハタが寄って来るのを真っ先に嗅ぎ付けるのがゴメ(カモメやウミネコ類)。魚が群れていそうな海の上で、虎視眈々と乱舞しています。そして獲物を見つけるや急降下してキャッチ、晩御飯にありつくようです。そんな喧騒が繰り広げられた後、海岸を歩きに行くと、ハタハタの卵「ブリコ」が産み付けられたホンダワラが打ち上げられていました。

 ハタハタの卵「ブリコ」。触感はやや硬くて、表面はつやつやしている。日本海の夕日を浴びて、キラキラと輝いた

 強い波に根本が引きちぎられたようです。こうなると、せっかくの卵も孵ることができません。ゴメの餌食になるか、イタチやテンのおやつになるか、です。実はこのブリコ、地元では希少品の珍味として有名です。一度、食べさせて戴きましたが、「ちょっと‥、濃厚すぎるなぁ」といった味。両親も白身で美味とされているのですが、西日本で生まれ育った私らには、あまり口に合わないようです。

 ところがこのブリコ。海岸に落ちているのを拾って帰ると、なんと密漁になってしまうのです。引っ越してきたばかりの知り合いが、何も知らずに持って帰って、こっぴどく叱られたそうです。ゆえに私らも、とるのは写真だけ。上空を旋回するゴメに睨みつけられながら、ホンダワラに付着した卵塊を撮影。そっと海へ戻してあげました。無事に生まれて、また、帰って来いよ、この浜へ。

デブ夫婦のウォーキング日記⑩「人生楽ありゃ、苦もあるさ♪」

 集落内の道を薄っすらと雪が覆う。最初の一歩は気持ちいいが、滑るのが難点

 12月13日の記事です。

 急速な低気圧の発達で大荒れの朝。今日のウォーキングは無理じゃない、と布団に潜り込んでいたら、ガバッと起きた哲二がいそいそと身支度。ストーブの火を落として、股引を履いています。えー、行くのかい‥。しぶしぶ起き出し、のろのろと身支度を始めます。

 黎明の中、外を見渡すと、あたりは薄っすら雪化粧。手入れの行き届かぬ庭も心なしか美しい冬の風情に。滑らないように気をつけながら、まだ誰も歩いていない道へ防寒長靴を踏み出します。

   移住した翌年の冬も大雪が降った=2011年1月

 「ビュオゥー、オゥー、ビュゥーゥー」。フードを被った顔へ、叩きつけるように雪交じりの風が。わずか数十歩で、体感温度は一気に低下、身震いしながら哲二が呟きます。「今日から真冬だよ‥」。これが北東北の季節の変わり目です。

 海は想像以上の大荒れ。打ち付ける波のしぶきが風に煽られ、湯煙ならぬ潮煙となって集落内を漂っています。身体にあたると痛いほどの堅い雪が、強風で渦を巻き、前後左右から襲い掛かってきました。油断すると、杖で支える力士体型の身体ごと吹っ飛ばされそうです。

 いつも座って休む流木に波が打ち寄せた。危なかった‥

 逆風の中、ふうふう言いながら砂浜を突っ切り、いつも座って休む流木へ。と、哲二が「危ない」と制止。なんと、大波が流木を超えて行くではありませんか。ほぇー、今日は休憩なしだ。

   いつも一服する流木。べつの巨木が流れ着いていた

 さらに、海岸を往復しようとしたら、先行する哲二の足元まで波が届きます。「うへぇー、こりゃダメだ。今日はロマンの里を抜けて行こう」と、いつものコースを変更して迂回路へ。

 が、ここも高架橋の路面がカチカチに凍って、危険極まりないサバイバルに。愛用の帽子が風に飛ばされて、あっという間に荒れ狂う海の藻屑となるし、もう帰りたいよー。

    雪に覆われたロマンの里

 でも、これも痩せるため、いや、修行なのだと自らに言い聞かせて、一歩一歩、刻むように帰途につきます。杖をしっかりと路面に突き立てながら、水戸黄門の主題歌、「人生楽ありゃ苦もあるさ♪」と歌いながら。ただ、後ろから、「泣くのが嫌なら、さぁ歩け!♪」と、突いてくる哲二がウザいけど‥

デブ夫婦のウォーキング日記⑨「最近、薪割りがしんどくて‥」

斧を振り下ろすのも、齢とともに辛くなってきた

 12月10日の記事です。

 まもなく西津軽は長く、寒い冬を迎えます。深浦町の積雪はそれほど多くないのですが、季節風が強いために体感は「凍れる」という表現がぴたり。雪が積もった静かな朝は、逆に温かく感じることもあるぐらいです。

イベント用の派手なウインドブレーカーを着て働く。1着500円だったので、汚れても、破れても気にならない

 そんな真冬に働いてくれる、我が家の暖房器具が薪ストーブ。かれこれ15年間使っていますが、今冬も暖かな炎を揺らしてくれます。

チェーンソーは何度使っても恐ろしい‥

 そのストーブに欠かせないのが薪。「人を三度、暖めてくれる」とされ、①切り出して割る作業②燃やして暖を取る③温かい料理で身も心も‥。薪の温もりを体感すると、もう石油ストーブやエアコンには戻れません。

今回の丸太の量は例年より少なめだった

 ただ、齢を重ねると共に、薪の準備がたいへんになってきました。今年は、大型トラックで運びこんで戴けなかったので、我が家の軽トラックで、往復80分の道のりを6往復させられたのです。積み込みも降ろす作業もすべて自前で。

作業中に愛用のチェーンソーが破損。代替え機は北欧製

 哲二も来年、還暦を迎えます。そんな初老の夫婦には、まさに荷が重い仕事。太いナラやケヤキの木は半端ない重量で、ヒーヒー言いながら、運び込みます。

玉切った「どんころ」

 そして、ここ数日、哲二がチェーンソーで玉切りして斧で割る作業、私が薪棚に詰め込む作業をやりました。夜明けと共に開始、お昼ご飯も食べずにがんばって、日暮れの直前にようやく完了。

 こうした節がある曲がった木は簡単には割れません

 ウォーキングの時に装着する万歩計をみると、薪割り作業だけで約14000歩。夫婦ともに腕や腰、下半身にもみが入って、ロボットのような姿で歩く羽目に。それでも、これで冬の備えが出来ました。今回購入したのは二棚分。一冬ゆっくり燃やせる量です。

赤あかと燃える薪ストーブ

 もし、都会の暮らしに疲れて、癒しが欲しくなったら、冬の浜田家へいらしてください。身も心も温めてあげますよ。哲二が、割るのを手伝ってくれたら、さらに温もるよ、と不敵に笑っていますが‥

デブ夫婦のウォーキング日記⑧「もしかして、がん?」

今から28年前の1994年、取材で訪ねたアフリカのルワンダ難民キャプで子供たちに囲まれる

 12月9日の記事です。 

 この夏頃から、食べ物を飲み込んだときに胸が痞えるような症状に悩まされていました。ググって該当するのは、食道がん?、もしくは咽頭がん?‥。恐ろしくなって先月の初め、隣町の総合病院へ駆け込みました。

沖縄の巨匠・大城カメラマンと遺骨収集の現場で

 友達の皆さまはご存じだと思いますが、私は大酒飲みの暴食家で、これまでの人生はやりたい放題でした。タバコも1996年のアフガニスタン内戦取材の時まで、ピースを1日40本ぐらい吸う悪煙家。新聞記者時代の不摂生は言うが及ばず、今も律子が止めるのを聞かないで、好き放題の日々を送っています。それゆえ、ついに来たのかと、怯えての末でした。

青森へ移住して3年、チェーンソーの刃を目立て

 問診して下さった消化器内科の若きドクターは、「あー、だいぶ無茶されてきたようですね。え、がん?、その可能性もあるでしょう。よし、胃カメラやりますか」とにべもない診断。これまで、自ら構えることが仕事だったカメラを、人生で初めて飲み込みました。

沖縄県糸満市の遺骨収集の現場で。去年撮影

 何とも言えない違和感と鼻でしか息ができない苦しさ。親指ぐらいのスコープが喉を過ぎて行くのを感じながら、「もしがんだったら、律子は独りで生きて行けるのかな?。んで、どう謝ろうか‥、おっと今、案件が進行中の戦没者のご遺族へなんと説明しようか‥」と、苦悶の中でも先々の心配が頭を過ります。  

新聞社の現役カメラマンだった頃のプレスカード

 約10分ぐらいで終了。写真を見たドクターが、「うーん、食道や胃の一部に糜爛はあるけど、がんは見当たりませんね。しばらく様子を見て、症状が改善されなければ、また来てください。え、胸に痞える症状?。それは逆流性食道炎でもおこるのです。浜田さん、はっきり言いますけど、太り過ぎですよね。痞えるのは、内臓脂肪を含めた腹圧が原因かも‥。まず、痩せて下さい。でないと長生きできませんよ」との宣告。恥ずかしくて、駆け出すように診察室を飛び出しました。

 カンボジアで1992年に撮影したプレスカード用の写真。うーん、若い!

 それからです。私の暴飲暴食と夜更かしに巻き込んだ律子とウォーキングを始めたのは。美しい海岸を悲壮感を漂わせて歩む姿は、映画「砂の器」を思いだします。が、実際はそんなドラマ性の無い不摂生なデブ夫婦の散歩。ただ、本人たちはいたってまじめに取り組んでいます。悪天でどうしても歩けないときは、トランポリンを模したクッションで飛び跳ねるのです。死にたくありませんから。

血液検査の結果。左が前回、右が今回。数値が改善された

 医師より、恥ずべき宣告を受けてから、ほぼ1カ月。年に数回受ける定期健診が本日ありました。貼り付けたのは3カ月前と今回の検査データ。その結果、中性脂肪を示すTG(トリグリセリド)や肝機能のデータが改善されていました。普段、私を定期的に診て下さる腎臓血液内科の先生が、「おー、中性脂肪が劇的に改善されています。え、歩いた?。それは頑張りましたね。うん、今後も続けて下さい」とお褒めの言葉。

青森へ移住間もない頃、庭でガーデニング・ティーを楽しむ

 テストで初めて百点満点を取って凱旋する子供のような表情で、律子へ自慢げに見せつけます。が、冷めた目で、「ふーん。で、今、何キロ痩せたの?。検査の数値はいいけど、標準体重迄あとどれくらいあると思っているのよ。ゴールはまだまだ遠いのよっ!」と突き放されました。

浜田夫婦の友人夫妻とマタギの親方。収穫したマイタケを手に

 なんだよ、自分だって太っているくせに。今日は良い気分でおもいっきりビールを飲んでやろうと思ったのに。え!、それも冷えてないって‥。もう今夜は布団に潜り込んで、枕を濡らすだけです。