みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
東奥日報「Juni Juni」の連載:11回目

東奥日報「Juni Juni」の連載:11回目

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東奥日報「Juni Juni」の連載10回目
東奥日報「Juni Juni」の連載11回目

 今回は子供たちと一緒に観察を続けるシノリガモのお話です。一昨年まで、順調に子育てを続けていましたが、昨年と今年、残念ながらヒナの巣立ちを見ることができません。というより、ヒナが生まれてこないのです。

子育てのために川を遡ってきたシノリガモ
子育てのために川を遡ってきたシノリガモ

子育てが成功した時と同じように、親鳥たちは繁殖行動をしています。春先、仲間たちが北国へ帰った後も、数組のオスとメスのペアが川に遡ってきて、仲良くすごしているのを、子供たちと期待を込めて観察していました。

お母さんと一緒に休憩。眠くて目をつぶっている子も‥
2年前の親子。お母さんと一緒に休憩。眠くて目をつぶっている子も‥

が、ヒナが生まれてくる時期になっても、お母さん鳥だけが、寂しそうに岩の上に蹲っている姿しかありません。そのうち、どこかへ飛び去るのか、いなくなってしまいます。

引率の先生が見守る中、石の上で休む繁殖個体群
昨年、遡上してきた繁殖個体群。3組も営巣活動していたが、子育ては失敗した

その原因ですが、上流域の砂防堰堤の工事で土砂が流れ出し、川が浅くなったことを指摘する声もあります。が、私たちが観察している限り、親鳥は浅くなった川でも餌をとりながら、交尾もしています。産卵期が近づくと、毎年、営巣していると思われる場所に蹲る母鳥も確認しています。

私らが暮らすひなびた集落。山が迫った海岸性にへばりついている
シノリガモが子育てをする川。手前の堰堤から河口までの約600メートルが重要な繁殖地

なので、環境の変化よりも、人為的な原因の危惧が。それは釣り人。地域の方や深浦町などの協力を得て、営巣期の川への侵入を自粛してもらうお願いをしていますが、まったく聞く耳を待たずに強行される方がいらっしゃいます。

子育てへの理解と協力を訴えかける看板。9割の方は協力して下さる
子育てへの理解と協力を訴えかける看板。9割の方は協力して下さる

何度、お願いしてもダメ。子供たちが見ている前で川へ入り、シノリガモの親子を蹴散らしたこともありました。今回は、某テレビ局の取材チームが見ている前で、繁殖活動中の親鳥を追い散らす場面も。

川の中に立ち入って魚を獲る釣り師
川の中に立ち入って魚を獲る釣り師。この竿は引っ掛け漁法用で、県の条例に違反する釣り方

取材スタッフからの電話で駆けつけてみると、いつも強引に釣りを強行される方が、当然、といった雰囲気で釣られています。規制する理由がないので、無理に止めされるわけにもいかず、鳥も私たちも泣き寝入りするしかありません。

岩の上で羽ばたくお母さん
岩の上で羽ばたくお母さんとヒナたち

取材スタッフに同行して、シノリガモの繁殖状況を見に来られた鳥類の研究者も、「親鳥が威されることで頻繁に巣から離れると卵が冷えてしまう。営巣地を破壊されたくなければ、早急に手を打つべき」と心配されています。

河口の石の上に上がったお母さん
河口の石の上に上がる

実は、川を管理する青森県やレッドリストに記載して保護する環境省に、毎年のように相談しています。それぞれの機関が、前向きに検討してくれているみたいですが、抜本的な回答は得られません。特に環境省は、見に来られるだけで、その後はなしのつぶて。

川上へ向かって飛ぶオスのシノリガモ
川上へ向かって飛ぶオスのシノリガモ

2年前に来た同省のアクティブ・レンジャーは、「釣りも文化なので否定も規制もできない。それに、シノリガモなんてどこにでもいる。珍しくもなんともない」と言い放つ始末でした。

観察方法と結果について話す、みなみちゃん
屋久島の子供たちの前でシノリガモについて発表する、みなみちゃん
屋久島高校で発表する三人娘
屋久島高校で、シノリガモについて発表する「地区の三人娘」

これと同じ論理を「地元の野鳥愛好家」が吹聴されているそうです。私たちの狩猟仲間や役場関係者などにも言いふらしているようで、とても困っています。鳥に詳しい方なので、多くの地元の方が追随してしまうからです。

海から帰ってきたら、川でも潜る訓練
成鳥に近づいたヒナたち。こんな姿が見られなくなるかも‥

そのためか、一時期は保護に協力して下さっていた地元の釣り師が、この川での釣りを再開されました。その理由を聞くと、「珍しくもない鳥の保護を声高に叫ぶ、あんたらは頭がおかしい。だから、気が振れた奴の話は聞く必要もない」、そうです。

鳥に見つからないように寝転んで観察する新6年生。特別な指示もしていないのに、好い根性だ!
鳥に見つからないように寝転んで観察する地元の小学6年生。とても熱心

シノリガモが子育てをしている川の流域は、毎年、約600㍍ほどの区間内だけ。そこを避けて下されば、問題なさそうです。それをお願いしているのですが、どうしても聞き入れてもらえません。これで2年連続、子育てができなかった可能性も考えられるのです。

子どもたちと看板を立てる
子どもたちと保護を訴える看板を立てる

観察する子供たちも、激しく落胆しています。1年間、一生懸命に調査を続け、愛らしいヒナの姿を見るのを楽しみにしてきたのに、最も重要な瞬間を人間のエゴで潰されてしまうからです。何人かの子は、目標を見失いそうになっています。

水でとかしたフンを漉しとる
シノリガモの糞の調査をする
シノリガモのフンを分析し、その食性を調査する手法を聞く6年生の児童ら
シノリガモのフンを分析し、その食性を調査する手法を聞く6年生の児童ら

釣りを強行される方の無理解は、生き物の生態を知ろうとしないことが大きな理由と思われます。が、生態系の大切さを知りながら、足を引っ張る方々の行為には憤りが募ります。臨時とはいえ、環境省職員でありながら、絶滅が心配される鳥の保全活動を軽視するようなアクティブ・レンジャーには、怒りを通り越してあきれてしまいました。

昨年、川で子育てするシノリガモ
泳ぎだす母鳥を追うシノリガモのヒナたち。2年前の親子

シノリガモは生まれて2年ぐらいで繁殖できるようになるといいます。これまでは、この川で生まれたヒナが帰ってきて、子育てをしていたのでしょう。が、来年、繁殖に失敗すると3年連続になり、ここへ帰ってきてくれる個体が激減する可能性もあります。

昨年、川で子育て中のシノリガモの親子
2年前の親子。2組で計12羽生まれた

この川の600㍍の区間で釣りを強行される皆さま、そして、国内で繁殖活動をするシノリガモの貴重さや保護活動に異論を唱える皆さま。どうか、私たちの願いに耳を傾けて、絶滅が心配される水鳥の繁殖地の保全活動に、ご協力ください。

フィールドスコープなどで観察するいわさき小学校の6年生
フィールドスコープなどで観察する子供たち
ブラインドテントに入っても、こっそりと覗くように観察する6年生。いいぞ!
ブラインドテントに入って、こっそりと覗くように観察する

地区の子供たちは学校が休みの日も遊ばずに、一生懸命に観察を続けているのです。地元の小学6年生の総合学習でも、3年連続でシノリガモの観察を続けています。少子化と高齢化が進む地方にとって、子供は宝のはずです。希少な生態系と子供たちの夢を大人のエゴで壊さないであげてください。

新緑が美しい川で、シノリガモ観察をする新6年生たち
新緑が美しい川で、シノリガモ観察をする6年生
ロボットカメラの原理を学ぶ。明るくて、可愛いしぐさに、心奪われそう…

ロボットカメラの原理を学ぶ。明るくて、可愛いしぐさ。子供は宝です

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コメント

  • かえで より:

    浜田さん、お久しぶりです。元気ですか?私は元気です。
    足の事なんですが、10月くらいから痛くなりまして・・・すぐ治るだろうとほっておいたらどんどんひどくなる一方で・・・医者に診てもらったら、「肉離れの程度が悪いやつです。」と言われました。とにかく、リハビリを頑張って下さいとのことでしたので、今頑張っています。当然、部活も休み、体育の授業も見学しています。治らなければどうにもならないので・・・
    という訳で、足が治るまでは山にも行けませんし、あまり激しく動くこともできません。でも、カモの観察はできますのでご心配なく(笑)。では、私は足が治るように頑張ります。用があったらどうぞ遠慮なく。大晦日とお正月、飲みすぎないでねww

    • hamatetsu より:

      かえでちゃん

      大丈夫かい。
      君が足を痛めているとは、浜田さんたち、まったく知らなかったよ。
      肉離れか‥
      気をつけなよ。
      浜田さんは、ラグビーで痛めた左の太ももの肉離れが、今も完治しないよ。
      寒くなると痛むんだ。
      年を取ると出て来るんだ、若いころの障害が。
      だから、しっかりと養生して、直してほしい。
      無理しちゃダメだよ。

      で、活動だけど、できれば年内に集まりを持つ。
      でも、君たちは、最近、この活動の本分を忘れかけているように見える。
      夏や秋に、東京などから来た大学生のお姉さんやお兄さんと交流した時、自分勝手な行動を取っていなかったかい。
      お客さんのことより、自分たちのことを優先しなかったかい。
      浜田さんたちには、そう見えたよ。
      屋久島で、お世話になったことを忘れたような振る舞いが残念だった。

      君たちは、そんな子たちではないと、と浜田さんたちは信じているよ。
      だから、来春からは、もう少し、自覚と責任を持って行動してほしい。
      これは、かえでちゃんだけでなく、みなみちゃん、リカちゃんも同じだよ。
      君たちの、新たな目覚めと成長を期待しているよ。
      来年こそは、もう少し中学生としての自覚を感じられるように「おがってほしい」。
      それが、浜田さん夫婦の願いだよ。
      がんばってな

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