みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
深浦町の「マタギ」伊勢親方⑦-親方、先生になる(上)

深浦町の「マタギ」伊勢親方⑦-親方、先生になる(上)

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10月22日付、東奥日報の小中学生新聞「週刊Juni Juni」の1面に掲載されました。

http://www.toonippo.co.jp/junijuni/pickup/20131022103142.asp

3年生の児童たちにマタギの心得を語る伊勢親方=町立深浦小学校で

3年生の児童たちにマタギの心得を語る伊勢親方=町立深浦小学校で

白神や向白神岳の山頂付近が色づき始め、いよいよ紅葉の季節が幕を開けました。アケビやクリ、山のキノコが頭をもたげ、森の恵みを戴く「マタギ」の伊勢親方は大忙しです。そんな中、町立深浦小学校から親方に、「ゲストティーチャー」の依頼がありました。

棟方先生のお話を聞く3年生の児童たち

棟方先生のお話を聞く3年生の児童たち

担任は、棟方いづみ先生。7月に実施した「白神自然教室」に続く、総合学習授業の一環です。子供たちに、山の動物やマタギの暮らしを伝えてほしいという主旨。対象は小学3年生。最初は教室で、写真を見ながらお話を聞き、二回目は親方と一緒に山を歩いてみよう、というプログラムです。

クマの毛皮の腰当てを順番に触る子供たち

クマの毛皮の腰当てを順番に触る子供たち

「今度は3年生か。よしよし。オラにできることならば、どこへでも出向くぞ」と、親方。地元の子供たちへ、狩猟採集の生活文化を引き継ぐために、二つ返事で引き受けて下さいました。教室で、山で、森の生き物たちと向き合う授業、マタギ学校の開校です。

テレビ画面に映し出されたスライドを見ながら、親方の話を聞く

テレビ画面に映し出されたスライドを見ながら、親方の話を聞く

まず教室での座学。山でクマなどを獲ったり、キノコなどを採集したりしている写真のスライドを見ます。親方の銃を構える姿を見て、「超、カッコイイ!」。でも、撃たれて横たわるクマや皮をむかれるウサギの写真を見ると、「ちょっと、かわいそう‥」。で、キノコや山菜の写真には、「あー、美味しそう!」と、一喜一憂。くりくりした目を輝かせてスライドに見入り、親方の話にぐいぐいと引き込まれてゆきます。

マキリの説明をする親方と聞き入る子供たち

クマの腰当てやマキリなどの説明をする親方と聞き入る子供たち

次は、親方が猟などに使う道具の説明を受けます。まず、獲物を解体するマキリ(マタギの山包丁)や鉈を見せてもらいます。そして、親方が獲ったクマの毛皮で作った腰当てを触ってみました。「わぁー、フカフカで温かそう」。「これを着けていると、雪の上に腰をおろしても、濡れないし、冷たくないんだよ」と、親方が優しい目で答えます。

猟仲間のお孫さんに、クマの腰当てを着けてあげる親方

猟仲間のお孫さんに、クマの腰当てを着けてあげる親方

「どうだい?」と聞く親に、「なんか不思議な感じ」と答える女児。世代を超えた交流になった

「どうだい?」と聞く親方に、「なんか不思議な感じ。でも気持ちいい」と答える女児。世代を超えた交流

「誰か着けたい人」と希望を募ると、「ハイハイ、ハイ」と、皆が競い合って手を挙げます。その中に、親方が昔一緒に山を歩いたマタギ仲間のお孫さんがいました。「よし、じゃこっちへおいで」と、その娘を呼び寄せ、着けてあげると、「私、親方の事、知ってるよ。お祖父ちゃんのお友達だったんだね」。その言葉に、ホッコリとした笑顔を見せる親方。世代を超えた繋がりを感じさせます。

さぁ、次は誰だい?。「ハイハイハイ」

さぁ、次は誰だい?。「ハイハイハイ」

「どう、似合う」と振り返る男児。親方も苦笑い

「どう、似合う」と振り返る男児。親方も苦笑い

雪の上を歩くための輪かんじきを装着する親方

雪の上を歩くための輪かんじきを装着する親方

次は雪の上を歩く親方手作りの輪かんじき。まず見本として、自らの足に装着した後、子供たちにも着けさせます。「ホラ、歩いてごらん」と親方。「ワー、軽い。けど、歩き辛い」。初めてのかんじき体験によろめいたり、笑ったり。山の中で、猟犬や猟間に合図を送るために使う、ライフル銃の「薬きょう笛」も実演してくださいます。

薬きょうを口に当てて息を吹き込む。「ヒュー」と少し物悲しい音が出る

薬きょうを口に当てて息を吹き込む。「ヒュー」と少し物悲しい音が出る

薬きょうを口に当てて息を吹き込む。「ヒュー」と少し物悲しい音が出る

私も鳴るかな。うーん、難しいよ‥

次はボクだよ。「ヒュー、ヒュー」。よし、やったー

次はボクだよ。「ヒュー、ヒュー」。よし、やったー

これにも子供たちは、「吹いてみたい」と熱心に手を挙げます。競うように、口元に当てて息を吹き込みますが、音が出る子はごく僅か。「うーん、難しいよ‥。でも親方、この音はどれくらい先まで聞こえるの」。「そうだな、障害物がなければ1キロは聞こえるかな。それぐらい離れた場所の犬が、笛を吹くと飛ぶように帰ってくるよ」

今日の授業はこれで終わり、と先生の声。名残惜しそうな子供たち

今日の授業はこれで終わり、と先生の声が。名残り惜しそうな表情をする子供たち

ここで、「さぁ、今日の授業はここまで。次は森の中で親方のお話を聞きましょうね」と、いづみ先生。「えぇー」と名残り惜しそうな子供たち。「じゃ、今度は山で、一緒にキノコでも探そうな。それまで元気にしているんだよ」。授業の終了後、纏わりつくように集まってくる子供たちに囲まれて、親方は上機嫌で呟きました。(下に続く)

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