
国吉神社の前で祈るNAOさん
私たちが今年、遺骨収集活動をした糸満市国吉地区。サンゴ石灰岩の小高い丘が、鬱蒼とした亜熱帯のジャングルに覆われています。ここは、第24師団歩兵32連隊が、沖縄戦の終結まで、守備し続けた場所です。

遺骨収集の現場で、NAOさんとお話し
同連隊は、もともと秋田県へ設置された部隊でしたが、日露戦争のあと、山形県へ転営。同市霞城町にある「山形城」に兵営したことから、「霞城連隊」とも呼ばれたそうです。

歩兵32連隊の石碑
シベリアや満州などへ出兵した後、アジア・太平洋戦争の末期に、沖縄へ派遣。日露戦争当時から、勇名を馳せていましたが、沖縄戦でも最後まで玉砕せずに戦い抜いた数少ない連隊のひとつです。

平和祈念公園で戦没者の検索をする
その山形から、ライアー奏者の「NAOさん」が、遺骨収集のお手伝いのために、遥々、沖縄まで来てくださいました。戦没者の収容活動はもちろん、その楽器を奏で、故郷へ帰れないまま山野に眠る方々を慰めるためです。

タオ・ライアーを奏でるNAOさん
ライアーは、スイスやドイツを中心としたシュタイナー教育にも取り入れられている、ハープに似た弦楽器です。いくつかの機種がある中で、なおさんは、「タオ・ライアー」という癒しの音を奏でる楽器を弾かれます。

平和の礎に刻まれた戦没者の刻銘。先日、ご遺族の元へ遺留品を届けた津村重治さんの名があった
桜の木を彫って、削って、成型した分厚い板に、弦を張って自作したものです。抱えさせて戴くと、見た目以上にずっしりと重く、これを肩にかけて岩だらけのジャングルを歩くのは難しそうです。

平和の礎を前に
ゆえに、哲二が、危険だと判断。現場の入り口にある神社の広場で、奏でて頂きました。かつての激戦地だった山野と集落に向かって、流れるような所作で弦を爪弾かれます。

山形の塔へ参拝するNAOさんと律子
メロディーは特になく、心のままに指で奏でるスタイル。柔らかで深い音色が、岩山のジャングルや青空に吸い込まれて行きました。「木々の間や岩の隙間で、戦没した方々が耳を傾けに来ているみたい‥」。そんな雰囲気が漂います。

戦没者が眠るジャングルの横で語るNAOさん
でも、不思議と怖くありません。それよりも、優しい音色に心が奪われて、ここが数多くの犠牲者を出した激戦地とは思えないほどです。胸に響いてくるような、心の中に流れ込んでくるようなメロディ‥。

鳥居の前でタオ・ライアーを奏でる。後方は国吉集落
自由に奏でる音なのですが、曲と同じような連続性のある、繋がりを感じてしまいます。とても、素敵。まだ、地中深くに眠ったままの皆さまへ、届いたでしょうか。きっと、耳をそばだてて下さっていると信じます。

ライアーを持たせてもらうと、ずっしりと重かった
今回の活動期間中、NAOさんは演奏だけでなく、遺骨や遺留品を掘り出して下さいました。崩れそうな壕の奥深くへ潜り込み、懸命に手を動かされています。舞い上がる砂ぼこりで、息が苦しくなるような空間で。

抉れた弾痕が残る石塀。激戦地の証
そして、兵士とみられる遺骨を掘り出されました。残念ながら、身元が判るものは見つかりませんでしたが、山形県出身の方の可能性もありそうです。それを見て、そっと手を合わせるNAOさん。その姿が菩薩のように見えます。

タオ・ライアーを奏でた後、手を合わせるNAOさん
実は、一昨年から、沖縄での活動を計画されていたNAOさん。事前の打ち合わせで青森へ訪ねて下さいました。その時、ライアーを知らない私たちのために、白神山地の十二湖で、森のコンサートを開催。

白神・十二湖の森で開いたライアーの演奏会
中高生をはじめ、学校の先生や地域の方、役場関係者の前で、素敵な演奏をしてくださいました。さらに、私たちも頭や膝に載せて爪弾いて貰うと、身体が楽器に共鳴し、不思議な心地よさを体感できました。

身体の上に乗せたライアーを弾く
あれから二年が経ちました。個人的な事情で昨年、沖縄へ来られなかったNAOさん。その想いをこめた調べが、風にのって南部の戦跡を駆け巡りました。また、聴きたいです。

十二湖の森でライアーを弾くNAOさん
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