みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
「鹿島(春日)祭」の神事:2013

「鹿島(春日)祭」の神事:2013

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新しい消防施設の前で出発の合図をする先振り

新しい消防施設の前で出発の合図をする先振り

太刀棒を打ち付け合う男衆ら

太刀棒を打ち付け合う男衆ら

稲荷神社の前で、舟の周りを踊りながら回る神事の列稲荷神社の前で、舟の周りを踊りながら回る神事の列

五穀豊穣や大漁を祈願し、人々の幸せを願う神事の「鹿島(春日)祭」が6月22日、執り行われました。年初に集落の神主さんが急逝。更に町の行事も重なって、例年よりも2週間ほど遅れた開催時期は、あいにくの梅雨時。にもかかわらず、時折雲間から太陽が顔をのぞかせる、絶好のお祭り日和となりました。

集落内の路地を行く春日丸と神事の行列=深浦町で

集落内の路地を行く春日丸と神事の行列

舟を担ぐ男衆ら

舟を担ぐ男衆ら

集落内を元気一杯に駆け抜ける子どもたち

集落内を元気一杯に駆け抜ける子どもたち

祭りの華となる子どもたちは、今年も元気いっぱい。赤い襦袢をまとい、たすきを掛けて、待ちに待ったハレの日に臨みます。ちょっとお化粧は苦手だけれど、それが終われば、飛び込むように神事の列へ。太刀棒を振りながら、「エンヤラ、エンヤラ、エンヤラ、ホーイ」と、可愛らしい声が集落内に響き渡りました。

先振りの先導で、狭い路地を行く神事の列

先振りの先導で、狭い路地を行く神事の列

激しく太刀棒を打ち付け合う

激しく太刀棒を打ち付け合う

丸太をくり抜き、7体の人型を乗せた舟神輿の「春日丸」を先導するのは、先頭を歩く先振り。その後ろを太刀振りが続き、行列のしんがりを笛と太鼓のお囃子が務めます。一行を取り仕切る先振りの合図で、太刀振りが原木の丸太を削った太刀を激しく打ち合わせ、踊りながら通りを練り歩きます。

男の子だから、お粉を塗られるのは嫌だけど、祭りだから仕方ないか‥

男の子だから、お粉を塗られるのは嫌だけど、祭りだから仕方ないか‥

横から笑わせないでね。お化粧が崩れるじゃない

横から笑わせないでね。お化粧が崩れるじゃない

祭りの化粧もお母さんが手ほどき。ホラ、綺麗になったよ

祭りの化粧もお母さんが手ほどき。ホラ、綺麗になったよ

1年生になって、始めて赤い襦袢を着て太刀振りに参加する坊や。お母さんの「よかったね」に、はにかんで笑った

小学1年生になって、始めて赤い襦袢を着せてもらった坊や。お母さんの「よかったね」に、はにかんで笑った

集落の人口が減って高齢化が進み、地域の若者が激減している今、祭りは子どもたちが中心になっています。が、かつては大人でないと参加できない厳粛な神事だったそうで、列に参加するため、「早く一人前になって太刀振りをする」のが、子どもたちの憧れだったそうです。

化粧を終えた男衆。鯔背な姿に伝統を感じる

化粧を終えた男衆。鯔背な姿に伝統を感じる

何で男が化粧するの?。こら、恥ずかしいだろう。あっちへ行ってなさい

何で男が化粧するの?。こら、照れくさいだろう。あっちへ行ってなさい

地域が大切にしてきた祭りだけに、行列を一目見ようと、お年寄りたちも集まってきます。中でも人気なのは、手作りの「春日丸」。くり貫いた丸木舟の仕上がり具合と、ユニークな人型の顔を覗き込んで、その出来栄えを笑ったり、感心したり。賑やかだった往時を思い出して、昔話に花が咲きます。「おめも、若い頃は、この人型みたいに『めんこ』かったべ」と、お互いを茶化しながら、大笑い。過去に遡りながらの楽しい時間が過ぎてゆきます。

春日丸の前に集まってきたお年寄りたち。今年の人型はユニークな顔だねぇ

春日丸の前に集まってきたお年寄りたち。今年の人型はユニークな顔だねぇ

お母さんと子どもたちもお大はしゃぎで見物

お母さんと子どもたちも、大はしゃぎで見物

青森県の無形文化財になっている由緒ある神事ですが、時代の流れと共に変化の兆しがみえます。それは、少子高齢化と過疎化が、後継者不足という深刻な現実となって、のし掛ってきているからです。太刀振りを務める若い男衆や舟神輿を担ぐ男衆も、地域にとどまらず、都会へ出てしまいます。同時に、女衆も少なくなり、料理を作ったり、行列の参加者をもてなす役割を担う方々が激減してます。今年は、神輿行列の休憩場所となる舟宿(ふなやど)のあり方が、見直されました。

船宿でアイスを食べる子どもたち。これが楽しみのひとつ

船宿でアイスを食べる子どもたち。これが楽しみのひとつ

裏方として神事を支える女衆。準備は万端に整った

裏方として神事を支える女衆。準備は万端に整え、開始を待つ

地区内に数か所、持ち回りで個人の家を開放し、舟神輿の「春日丸」を招き入れる舟宿。海の幸や山の幸をはじめ、酒やジュース、お菓子などを参加者や見物客に振る舞う役割です。総勢50人以上を接待するとなると、掃除、食卓のセッティング、料理、食器の準備、後片付けなど、高齢者の世帯には多大な負担になっていました。そこで、新たな試みとして、個人宅を減らして、公民館などを舟宿代わりとして接待をするようにしたのです。

公民館前の駐車場が舟宿に。テントの下も、おつなもんですな。ま、一献いかが?

公民館前の駐車場が舟宿に。テントの下も、おつなもんですな。ま、一献いかが?

子どもたちにとってあこがれの「食べ放題、飲み放題」の一日。思いっきり、はめを外していた

子どもたちにとってあこがれの「食べ放題、飲み放題」の一日。思いっきり、はめを外していた

行列の一行を迎え入れる舟宿。家人が窓から顔をのぞかせて歓迎した

行列の一行を迎え入れる舟宿。家人が窓から顔をのぞかせて歓迎した

今回、これまで通りご自宅でなさった方も、公共の場所を利用した方も、両方いらっしゃいました。伝統の神事、祭りのスタイルが変わることへの不安や抵抗の声も少なからず出ていました。もちろん、祭りの保存会の皆さんも、できれば昔ながらの行事を、そのまま後世に伝えたいと努力されています。が、高齢化と後継者不足は、大きな壁となって立ちはだかります。

小学校跡が公民館に建て替えられた。その名残りの二宮金次郎像に見守られながら進む神事の列

小学校跡が公民館に建て替えられた。その名残りの二宮金次郎像に見守られながら進む神事の列

大急ぎで国道を横切る行列。子どもたちは最後まで元気いっぱい

大急ぎで国道を横切る行列。子どもたちは最後まで元気いっぱい

バブル経済の崩壊以降、北東北の景気は厳しく、若者が働ける職場は数える程しかありません。一次産業か役場などの公務員、土建業以外に、然したる産業は見当たりません。当然、多くの労働力が流出し、少子高齢化、限界集落化してゆく中、地元民だけで祭りを存続するためには、神事のあり方を変更させるのも時代の趨勢かもしれません。

行列に差し入れられるお祝儀

行列に差し入れられるご祝儀

御祝儀を奉納された家の前で踊る

御祝儀を奉納して下さった家の前で踊る

もし、我が家が舟宿にあたれば、自宅で皆さんを迎え入れるつもりです。今、夫婦の齢は50前後なので、まだまだ行けそうです。夫も写真ばかり撮ってないで、今後は神輿を担いだり、太刀棒を振ったりと、祭りを支えるお手伝いをさせたいと考えています。私も、女衆の皆さまに混じって、料理の腕を振るいたいと思います。

孫が参加する行列を見守るご夫婦

孫が参加する行列を見守るご夫婦

行列を見守るお婆ちゃんやお母さんたち

行列を見守るお婆ちゃんやお母さんたち

でもそれが、80歳、90歳になって自分に出来るのか、といわれれば、答えることができません。いえ、たぶん無理だと思います。都会育ちの私達が、そんなに長生きできるとも思えないし‥。我が家の事情はさておき、この集落の行く末や神事の先行きに思いを馳せると、不安な気持ちに襲われます。

神事の前に車座になって、語り合う保存会のメンバーたち

神事の前に車座になって、語り合う保存会のメンバーたち

集落の公民館にあった意味深な替え歌

集落の公民館にあった意味深な替え歌

為政者の皆さま、どうぞ地方が再度賑わうような施策を打ち出してください。お年寄りが幸福に暮らせる世の中をつくる政治を行ってください。来る参院選。そうした政策を、お為ごかしでない公約として打ち出し、働いてくださる候補者や政党に投票しようと心に決めています。果たして、存在するのかなぁ‥

手作りの綿菓子にかぶりつく坊や。子供は地域の宝物だ

手作りの綿菓子にかぶりつく坊や。子供は地域の宝物だ

神事の時に、始めて大勢の子どもたちを見かける。仕事さえあれば、地域に残る若者も増えるのだが‥

神事の時に、初めて大勢の子どもたちを見かける。仕事さえあれば、地域に残る若者も増えるのだが‥

太刀振りとして、今年が初参加の坊や。小学1年生になって赤い襦袢も着せてもらった

太刀振りとして今年、初参加した坊や。誇らしげに太刀を突き上げていた

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コメント

  • みかん大好き より:

    FBは写真部の人があまりにも多いのでこちらでw
    あの静かな集落がこんなににぎわうんですね。
    シノリガモの観察に参加している女の子たちも参加していますね。
    男衆が化粧をしているのはびっくりです。

    集落が一体となった祭り、炊き出しやらなにやらでなかなか面倒なこともありますが、こうやって地域のつながりを深めるのはいいですよね。

    • hamatetsu より:

      みかん大好き様

      コメントありがとうございます。
      FBは、やはり好きになれなくて、止めてしまいたい衝動に駆られています。
      ただ、これでしか繋がっていない、地元の人や遺骨収集関係者も大切なので、止むにやまれる継続となっています。

      祭りの写真を見て戴き、心より感謝いたします。
      シノリガモ観察の子どもたちは、地元新聞に記事と写真が掲載された後に、紹介するつもりです。
      短期間の間に、3人とも目を見張る成長を遂げており、カモと同じで、未来が楽しみな子たちです。
      普段は、ちょっとおイタですが、調査はきちんとやってくれます。
      可愛いヒナの写真と一緒にアップしますので、また閲覧して感想を戴ければ嬉しいです。

      もう一つ、撮影済みの祭りもあるので、近々アップします。
      また、見てやってください。

      ご支援と励ましの書き込み、心よりのお礼を申し上げます。

      野苺の返信は、律子がいたします。

  • かとQ より:

    仕事も遊びも忙しくてなかなか浜田さんのHPをじっくり見る時間がないのですが、沖縄の話は浜田さんらしいなーと思いますし、シリガモ、マタギさんなど大自然の風景には心が癒されます。今、春日祭りの写真を見て、東京時代の事を思い出しました。いろいろ問題のあった三社祭と地元の両国での祭りのことです。浅草周辺では大勢のハッピ姿の男女、子供神輿、民家のガレージに山積みにされたビールケース。僕も仲間に入れてもらえればただ酒が飲めるのかなとセコイことを考えていました。両国では神輿の担ぎ手を募集していました。下町風情も残っている街でしたが、単身赴任者向けのマンションが立ち並び、大都会でも違った理由で祭りの存続に危機があるのではと今思いました。両国と言えば相撲の世界も同じなのかなと思います。そして、奥さんの「夫も写真ばかり撮ってないで…」の行が印象に残りました。猛暑の大阪の夏を過ごすのは3年ぶりになりますが、夏バテせずに9月には元気な顔を見せたいと思います。積もる話もありますが、またその時に。

    • hamatetsu より:

      かとQさま

      コメントありがとうございます。
      祭りや地域の文化が消えてゆくのは寂しい限りです。
      詳しい話は9月に来られた時にしましょう。
      お元気で

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