五穀豊穣や大漁を祈願し、人々の幸せを願う神事の「鹿島(春日)祭」が6月22日、執り行われました。年初に集落の神主さんが急逝。更に町の行事も重なって、例年よりも2週間ほど遅れた開催時期は、あいにくの梅雨時。にもかかわらず、時折雲間から太陽が顔をのぞかせる、絶好のお祭り日和となりました。
祭りの華となる子どもたちは、今年も元気いっぱい。赤い襦袢をまとい、たすきを掛けて、待ちに待ったハレの日に臨みます。ちょっとお化粧は苦手だけれど、それが終われば、飛び込むように神事の列へ。太刀棒を振りながら、「エンヤラ、エンヤラ、エンヤラ、ホーイ」と、可愛らしい声が集落内に響き渡りました。
丸太をくり抜き、7体の人型を乗せた舟神輿の「春日丸」を先導するのは、先頭を歩く先振り。その後ろを太刀振りが続き、行列のしんがりを笛と太鼓のお囃子が務めます。一行を取り仕切る先振りの合図で、太刀振りが原木の丸太を削った太刀を激しく打ち合わせ、踊りながら通りを練り歩きます。
集落の人口が減って高齢化が進み、地域の若者が激減している今、祭りは子どもたちが中心になっています。が、かつては大人でないと参加できない厳粛な神事だったそうで、列に参加するため、「早く一人前になって太刀振りをする」のが、子どもたちの憧れだったそうです。
地域が大切にしてきた祭りだけに、行列を一目見ようと、お年寄りたちも集まってきます。中でも人気なのは、手作りの「春日丸」。くり貫いた丸木舟の仕上がり具合と、ユニークな人型の顔を覗き込んで、その出来栄えを笑ったり、感心したり。賑やかだった往時を思い出して、昔話に花が咲きます。「おめも、若い頃は、この人型みたいに『めんこ』かったべ」と、お互いを茶化しながら、大笑い。過去に遡りながらの楽しい時間が過ぎてゆきます。
青森県の無形文化財になっている由緒ある神事ですが、時代の流れと共に変化の兆しがみえます。それは、少子高齢化と過疎化が、後継者不足という深刻な現実となって、のし掛ってきているからです。太刀振りを務める若い男衆や舟神輿を担ぐ男衆も、地域にとどまらず、都会へ出てしまいます。同時に、女衆も少なくなり、料理を作ったり、行列の参加者をもてなす役割を担う方々が激減してます。今年は、神輿行列の休憩場所となる舟宿(ふなやど)のあり方が、見直されました。
地区内に数か所、持ち回りで個人の家を開放し、舟神輿の「春日丸」を招き入れる舟宿。海の幸や山の幸をはじめ、酒やジュース、お菓子などを参加者や見物客に振る舞う役割です。総勢50人以上を接待するとなると、掃除、食卓のセッティング、料理、食器の準備、後片付けなど、高齢者の世帯には多大な負担になっていました。そこで、新たな試みとして、個人宅を減らして、公民館などを舟宿代わりとして接待をするようにしたのです。
今回、これまで通りご自宅でなさった方も、公共の場所を利用した方も、両方いらっしゃいました。伝統の神事、祭りのスタイルが変わることへの不安や抵抗の声も少なからず出ていました。もちろん、祭りの保存会の皆さんも、できれば昔ながらの行事を、そのまま後世に伝えたいと努力されています。が、高齢化と後継者不足は、大きな壁となって立ちはだかります。
バブル経済の崩壊以降、北東北の景気は厳しく、若者が働ける職場は数える程しかありません。一次産業か役場などの公務員、土建業以外に、然したる産業は見当たりません。当然、多くの労働力が流出し、少子高齢化、限界集落化してゆく中、地元民だけで祭りを存続するためには、神事のあり方を変更させるのも時代の趨勢かもしれません。
もし、我が家が舟宿にあたれば、自宅で皆さんを迎え入れるつもりです。今、夫婦の齢は50前後なので、まだまだ行けそうです。夫も写真ばかり撮ってないで、今後は神輿を担いだり、太刀棒を振ったりと、祭りを支えるお手伝いをさせたいと考えています。私も、女衆の皆さまに混じって、料理の腕を振るいたいと思います。
でもそれが、80歳、90歳になって自分に出来るのか、といわれれば、答えることができません。いえ、たぶん無理だと思います。都会育ちの私達が、そんなに長生きできるとも思えないし‥。我が家の事情はさておき、この集落の行く末や神事の先行きに思いを馳せると、不安な気持ちに襲われます。
為政者の皆さま、どうぞ地方が再度賑わうような施策を打ち出してください。お年寄りが幸福に暮らせる世の中をつくる政治を行ってください。来る参院選。そうした政策を、お為ごかしでない公約として打ち出し、働いてくださる候補者や政党に投票しようと心に決めています。果たして、存在するのかなぁ‥
FBは写真部の人があまりにも多いのでこちらでw
あの静かな集落がこんなににぎわうんですね。
シノリガモの観察に参加している女の子たちも参加していますね。
男衆が化粧をしているのはびっくりです。
集落が一体となった祭り、炊き出しやらなにやらでなかなか面倒なこともありますが、こうやって地域のつながりを深めるのはいいですよね。