みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
私たちの集落で土砂災害が発生しました

私たちの集落で土砂災害が発生しました

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濁流となってJR五能線の鉄橋下を流れる津梅川
濁流となってJR五能線の鉄橋下を流れる津梅川

たび重なる台風の接近と前線の影響で、日本各地で大雨が続いています。深浦でも一昨日の夜半から激しい雨に見舞われました。深夜まで調べ物をしていたら、トタンの屋根を叩きつけるような雨。「ま、大丈夫よ、ね」と、布団をかぶったら、翌朝、けたたましく電話のベルが鳴ります。「うーん‥、今、何時?。誰?」。出てみると、知り合いの新聞記者からでした。「浜田さん、そっち大丈夫ですか?。大雨による土砂崩れで、集落が孤立していると聞いてますけど」。

★読売新聞さんの記事

http://www.yomiuri.co.jp/local/aomori/news/20140806-OYTNT50549.html

★青森朝日放送さんの動画ニュース

http://www.aba-net.com/news/news004.html

★青森テレビさんの動画ニュース

http://www.atv.jp/news/index.cgi?md=p&id=19766

(上記URLをコピペして、検索してみてください)

国道101号へ流れ出した土砂。通行が遮断された
国道101号へ流れ出した土砂。通行が遮断された

「えー。うそ!」。寝ぼけ眼で、テレビとパソコンのスイッチを入れる夫・哲二。画面を食い入るように見ていますが、詳しい情報は何も流れていません。蒸暑かったせいで、汗ばんだTシャツを脱ぎ捨てているので、パンツ一丁の姿がとても情けない。ただ、顔だけは真剣なので、余計に滑稽です。「へぇー、やっぱ災害と聞くと、カメラマンの血が騒ぐのね」、と感心していると、別室の機材庫からカメラを取り出し、バタバタと出かける準備を始めています。で、「おい、何してるんだ!。行くぞ」と、非難するかのような口ぶりで、こっちを振り向きます。

何台ものトラックがピストン輸送で土砂を運んだ
何台ものトラックがピストン輸送で土砂を運んだ

「えー、私も?」。嫌だなぁ、朝早くから、雨に濡れるのは、と、思いつつも、こんな時に口答えすると、烈火のごとく怒るので、渋々と後を追います。が、野外へ出て、びっくり!。いつも水が流れているのかどうか、判らないような側溝の穴から、噴水のように茶色く濁った水が噴き上げています。夫の顔を見ると、なぜか目が爛々と輝いている始末。あー、もうダメ。こうなったら、納得いくまで、帰らないわね‥。仕方ない。お付き合いしましょう。雨は小康状態になっていますが、山に降った量が半端じゃないらしく、道が川のようになっています。

お隣の集落を流れる白神川はもっと酷い状態に。鉄橋や建物に濁流が迫る勢い
お隣の集落を流れる白神川はもっと酷い状態に。鉄橋や建物に濁流が迫る勢い

シノリガモを観察する川へ行くと、もう、見たことがないような姿に。ゴウゴウと音をたて、大きな石も流されているのか、水中から雷のような地響きが、ズシン、ズシンとしています。「す、すごい‥」。息を飲んで立ち尽くしていると、近所に住むシノリガモ観察の3人娘とそのお母さんが、心配そうに様子を見に来ていました。が、夫は、見向きもしないで、カメラを構え続けています。ほー、いつになく、真剣ね。「さぁ、次だ」。あっという間に車に乗り込み、土砂崩れの情報がある国道101号へ。対向二車線の道路は、あちこちで冠水し、走る軽トラックが、水しぶきで見えないぐらいです。ものの5分で、土砂崩れの現場へ到着。

復旧作業が続く脇をお年寄りを乗せて病院へ向かうワゴン車がすり抜けた
復旧作業が続く脇をお年寄りを乗せて病院へ向かうワゴン車がすり抜けた

いつも、道路脇へチョロチョロ水が漏れ出ている小さな沢から、大量の土砂が流れ出し、国道が完全に塞がっています。その上を真っ茶色の激流が飛沫をたてて、流れ落ちて行きます。すでに、復旧のための重機が来て、土砂の撤去を始めていました。その脇を役所や宿泊施設などへ勤める地域の方々の車がすり抜けていきます。国道の抜け道の手前が崩れたのが、もっけの幸いでした。土砂はゴロゴロし、水も流れていますが、何とか通行できそうです。ずぶ濡れになって戻って来た夫は、「よし、次は秋田県境だ」と、もの凄い勢いで車をバックさせていきます。

国道に流れ出た土砂を懸命に除去する
国道に流れ出た土砂を懸命に除去する

完全にスイッチ・オン。こうなったら、もう、止まりません。まさに、暴走機関車のように走り続けます。通行止めになっているので、交通量は少なめですが、すれ違う車の方々も血相を変えてハンドルを握っておられます。地区の総代さんや役所に勤める友人たちもです。県境まで後1~2キロの所で、道路にバリケードが。知り合いの駐在さんが、いつになく真剣な顔で駆け寄って来られました。「あー、浜田さん。秋田へは行けないよ。斜面が崩れて、完全に塞がっている。午前中に復旧すれば、いいけど‥」と、顔を曇らせています。が、夫は、あっという間にバリケード内へ入り込み、約100㍍上の斜面に目をやったかと思うと、カメラを構えて撮りはじめました。

山に降った雨水が国道101号にあるトンネル脇の側溝を滝のように流れ落ちる
山に降った雨水が国道101号にあるトンネル脇の側溝を滝のように流れ落ちる

なんと、斜面の中腹にあるJR五能線の線路が、宙づりになっているのです。増水した沢水に枕木の下へ敷き詰められた土砂が流され、約20~30㍍の区間の線路がむき出しになっています。が、高い位置なので、それを見守る保線作業員の表情も、下からでは窺い知ることが出来ません。この状態を見るだけでも、本日中の復旧は難しそうです。

枕木の下にあった土砂が流れ出し、宙づりになったJR五能線の線路
枕木の下にあった土砂が流れ出し、宙づりになったJR五能線の線路

で、夫です。「おい。帰るぞ。夕刊用に送ってやらなければ」とポツリ。「えー、新聞社の仕事は辞めたのに、何でよ?」と聞くと、「電話をくれた彼が現場到着するのが遅れていたら、手助けするのが筋だろう」と、なぜかぶっきらぼうに答えます。ちゃらんぽらんな所も多いのですが、「仕事スイッチ」が入るとこうなのよね。トタトタと車に向かって走る姿を見て、思わず吹き出してしまいました。「ま、好きになさい‥」。

JR五能線が走る斜面上は、流れ落ちる水と共に大量の土砂が崩れ落ちていた
JR五能線が走る斜面上は、流れ落ちる水と共に大量の土砂が崩れ落ちていた

そして、自宅着。断水の恐れもあるので、お風呂や鍋、バケツなどに水を溜めていると、何やら電話で話し込む声が。災害を知らせてくれた地元新聞の記者だけでなく、最近交流が出来つつある全国紙の記者やテレビ局の記者らと話し込んでいます。売り込むのはいいけど、今日は週末に来る友人のために、秋田の能代市へ買い出しに行く約束でしょ。ホラホラ早くして。

採石場の入り口も完全に水没していた
採石場の入り口も完全に水没していた

午後になって、道路はほぼ復旧。秋田へ向かう国道101号も、所どころ崩れていますが何とか走れます。車を止めて取材したそうになる夫ですが、大雨と災害取材の峠は越えています。「ホレ、もう終わりよ。昔の仕事の余韻にひたるのも、ね」。そして、買い物先のスーパーでは、いつもの夫に戻っていました。カートを押しながらも、自分の欲しい食材の前でウロウロし、私の目を盗んでカゴに入れています。

左の脇道が無ければ、朝の通勤時間帯に交通がマヒしていた
左の脇道が無ければ、朝の通勤時間帯に交通がマヒしていた

夕方、帰宅してテレビをつけると、朝日放送系列の「ABA青森朝日放送」さんとTBS系列の「ATV青森テレビ」さんが、午後6時のニュースで、夫の写真を使ってくれていました。そして、毎日新聞さんや読売新聞さんにも。良かったね。さぁ次は、週末のボランティア活動へまい進するよ。そっちも、大切だからね。会社を辞めて、のんびりと暮らすために移住した白神山地の小さな村。なぜか、春から夏にかけて、毎年のように忙殺される出来事が起こります。いや、起こさせているのかな、「働き蜂」の夫が。私は、北国の短い夏をゆっくりと楽しみたいのに。あー、木陰で、静かに読書がしたい。夫抜きで、ね(笑)

まだまだ手持ちでスローシャッターが切れるとうそぶく夫。でも、この写真はどこの社にも採用されなかった
まだまだ手持ちでスローシャッターが切れると胸を張る夫。でも、この写真はどこの社にも採用されなかった

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コメント

  • 小川智 より:

    浜田さん、律子さん、豪雨取材お疲れ様でした。機敏に反応して写真を短時間で撮られるのはさすがですね。ご自宅が川のそばで心配ですが、無事で何よりでした。しかし今の総局デスクはいい方のはずですが、冷たいとは意外です。めげずに送りつづけてください(笑)。

    • hamatetsu より:

      あにき

      コメントありがとう。
      今回の川の増水は、心底びっくりしたよ。
      それでも、オーバーフローしなかったので、セーフ。
      大丈夫でした。
      んで、総局だけど、もう、発生物は送りたくないし、声も掛けたくないよ。
      何が悪いかって、連絡しても、データを送っても、打ち返しの返事がほとんどないのさ。
      届いたのかどうかも、判らない。
      他社だったら、もう、二度と連絡しないよ。
      ま、某全国展開の政府ご用達テレビはもっと酷くて、記者が電話に出ないどころか、FAXで要件を送れとおっしゃられる。
      で、FAX番号やメールアドレスを聞き出して要件を送信しても、こちらが再度問い合わせるまで、まったく無しのつぶて。
      データが届いたのか、返答をする気があるのか催促したら、その内容をFAXで送れと、指示されるよ。
      いったい何様だ!、と思ってしまう。
      視聴者や読者よりも、忙しい自分たちの方が高い地位にいるという、思い上がりにしかみえん。
      ニュースや話題の情報提供に、なぜ、こちらが電話代金やFAX代金を二重払いして、時間と手間をかけてお知らせして、取材に来てもらわんといかんのよ。
      こうした事に心当りのある報道関係者は、襟を正して仕事しろ、と、吼えたいよ。
      忙しいを口実にするならば、報道の仕事を辞めちまえよ、ホント。
      何にせよ、打ち返しのない会社には、もう何も投げ込まないし、お付き合いもしない。
      ただ、それだけだ。
      アニキも慢心するなよ(笑)。
      家族を大切にしなきゃダメだよ。
      家庭の崩壊は、人生の崩壊につながる。
      家族のために、休みを取ろうな。
      休む勇気を持つのも、能力だからね。
      がんばれよ。

  • GKO より:

    大変でしたね。お疲れさまでした。
    総局のつれない態度、なんだか恥ずかしいです。
    それにしても、このブログの律子さん目線の文章、面白さが加速度的に増している気がします(笑)

    • hamatetsu より:

      GKOさま

      コメントありがとうございます。
      そうなんですよ、総局、最近、冷たいんですよ。
      どうしてだろうか?。
      巷の評判も落ちている時だから、「OB」とはいえ読者は大事にした方が良いと思いますが(笑)
      ま、冗談はさておき、たいへんな出来事でした。
      今日になっても、村中のあちこちに泥と木材片が散らばっています。
      でも、田舎の人は強い。
      被害に遭っても、黙々と復旧に向けて働いています。
      尊敬すべき、古き日本人のよき姿です。
      で、私らも明日、外国座礁船が放置されている浜で、高校生たちと海岸の清掃活動をします。
      それも、全国に報道されるといいな、と思っています。
      また、そこで律子節、炸裂しそうです。
      こうご期待、としておきましょう(笑)

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