御山参詣(山かけ)の神事とIVUSAの大学生① ツイート 山へ登る前に、円陣を組んで気合を入れる学生たち 山かけ踊りのお囃子に手拍子で応えるお年寄りたち 毎年、旧暦の8月1日、私たちが暮らす大間越集落で、白神岳の頂上まで登山をする神事「御山参詣(山かけ)」が行われます。集落の若集が、麓を流れる津梅川で身を清め、頂上付近にある祠(ほこら)まで一気に駆け上り、豊かな恵みに感謝し、招福を願う伝統行事です。 ※読売新聞に掲載されました http://www.yomiuri.co.jp/local/aomori/news/20150914-OYTNT50341.html まず、麓の大間越稲荷神社に参拝 登頂の前に、稲荷神社の周りを3周 その歴史は古く、江戸時代の頃まで遡れるそうです。青森県で御山参詣といえば、岩木山が有名ですが、白神岳も神の宿る山として、漁師さんやマタギたちから信仰されており、ひっそりと続けられてきました。 登山口近くにあるご神木に、全員で手を合わせる 男子を先頭にグイグイ登り始める その山かけに、春日祭と同じように、IVUSA(国際ボランティア学生協会)の大学生に助っ人を頼みました。すると、前回と同様、快諾の返事。今回は事務局の社会人を含めた12人が駆けつけてくれました。 登る前に装備のチェック 出発前に、残るメンバーらとお別れの握手 そして、神事の当日、登頂班と直会(なおらい)準備班に分けられた学生が、山かけに臨みます。哲二が膝を痛めているので、今回は麓でお留守番。当然、私も直会の準備があるので登れません。残念ですが、最近、運動不足なのでホッとしています。 太鼓のお囃子を先頭に、川へ禊に向かう 全員で稲荷神社に参拝 実は、学生たち、当初は9人で頂上を目指す予定でした。が、2人が北関東と東北地方を襲った豪雨のために青森への到着が遅れて、登山は7人しか参加できませんでした。 頂上で奉納する御幣が、リュックからのぞく 前夜までの大雨で、濁流となった津梅川で身を清める 大間越集落の山かけは、ここ数年、悪天候続きと登り手の不足で、実施されていませんでした。今回も、直前まで2~3名しか参加希望者がなく、前日も土砂降りの豪雨だったので、開催が危ぶまれていました。 登山を先導する若集(手前の二人)の指示で行動する いきなり、きつい登りがある が、学生が来ると聞き、「ならば私たちも」と、参加を決意してくださった方々がいて、総勢20名近い祭列に。ここ最近は、4~5名しか参加者がいなかったので、祭り保存会のメンバーも嬉しそうです。 学生のために急きょ、参加して下さった地区の方(中央のご夫妻)。頂上の様子を撮影してもらうためにカメラも託した 学生をサポートするために協力して下さった、棟方ご夫妻 大雨で濁流となった津梅川で禊を済ませた後、元気一杯に登って行きました。山頂から麓まで往復すると、おおよそ8時間かかるそうです。今回は、夫婦そろって登山をサボりましたので、ここからは参加者から聞いた話をもとに書き記します。 山かけに参加する学生に挨拶される保存会の伊藤会長 山かけの神装に身を包んだIVUSAの女子学生。カメラを向けると、少しはにかんだ 麓では晴れていましたが、登るにつれて霧が立ち込め、所々で雨に降られたそうです。約4時間で山頂に到着。頂上付近にある祠を取り囲み、踊りながら、御山参詣の唱文を唱えます。 «登山ばやし» 「懺悔、懺悔(サイギ、サイギ) 六根懺悔(ドッコイサイギ)―⦅たぶん「ロッコン」だと思うが、方言で訛っていると思われる⦆ 御山八大(オヤマハチダイ) 金剛道者(コンゴウドウサ) 一々名拝(イチニナノハイ) 南無帰名頂禮(ナムキミョウチョウライ)」 頂上の祠に参拝する参加者たち(棟方友裕さん撮影) 頂上に到着。強風の中、神事のために着替える学生たち(棟方友裕さん撮影) そして、御幣などを奉納した後、お神酒を戴きます。これで神事は終了。この後、麓での「山かけ踊り」などに必要な高山植物の「イワテトウキ」と「ハイマツ」を採集します。順調に進行しましたが、接近していた台風の影響で山頂の天候は大荒れに。 元気一杯の学生たち。前夜、飲みすぎたのか大あくび(棟方いづみさん撮影) 頂上の避難小屋の前で、おにぎりを頬張る女子学生(棟方いづみさん撮影) 普段でも、頂上と麓との温度差は10度前後あり、強風と雨のおかげで体感温度は10度以下だったようです。皆、震えながら、神事を執り行い、終了後は、避難小屋に飛び込んで温かいカップ麺などを啜ったと話します。 参拝を終えた後、お神酒を戴く。とても寒い‥(棟方友裕さん撮影) 頂上の祠に参拝する参加者たち(棟方友裕さん撮影) そんな中でも、学生たちは一人の脱落者も出さずに、最後まで頑張りました。しかし、この神事が大変なのは、下りてからの踊りです。集落の端から、中央にある稲荷神社まで、回転したり、飛び跳ねたりする、独特な振り付けの山かけ踊りを披露しながら、練り歩くからです。 笑顔で下山してきた一行 やっと下山。麓で待つ仲間に手を振る お疲れさま、大丈夫?。うー、無茶苦茶しんどかった‥ 「下山ばやし」を合唱して、激しく踊ります。とても、ユーモラスな姿なのですが、参加者によると、膝はガクガクで、足は靴擦れのために、歯を食いしばるほどの痛さに悩まされた、と聞きました。 «下山ばやし» 「①ソーリャ、ソーリャ、ソーリャナット 白神の陰(かげ)コで 大きな御幣締めだ、ホイ それでも良い山かげだ、ホイ ソーリャ、ソーリャ、ソーリャナット ②ソーリャ、ソーリャ、ソーリャナット 白神の陰(かげ)コで 苦瓜マグラッタ、ホイ それでも良い山かげだ、ホイ ソーリャ、ソーリャ、ソーリャナット」 全員が息を合わせて山かけ踊りに取り組む コミカルな仕草で飛び上がり、回転する 採取してきたイワテトウキの香りを嗅ぐ そして、神事のフィナーレとして、集落内にある大間越・稲荷神社に参拝。社殿を3周回った後、履いていた草鞋を境内にある木の梢に放り投げます。一番高い枝に引っ掛けた者には、良縁が訪れるそうです。学生たちは目の色を変えて、高さを競い合っていました。 コミカルな仕草で飛び上がり、回転する 仕事を終えた中国人研修生たちも、思わず踊りを真似ていた 背中に背負ったヤジガラに、イワテトウキを挿してもらう この神事は本来、女人禁制で行われていました。昔の参加者は約1週間、神社の社殿などに籠り、毎日、川で全身を洗い清めながら、禊をします。そして、白装束に着替えて草鞋を履き、塩で磨いたさい銭、米、お神酒などを携行して、白神川に沿って岩場を直登していたようです。 境内の木の梢に草鞋を放り投げる すべての神事を終えて、神殿に拝礼 放り投げたつもりが大失敗。恥ずかしい‥ 最近は、女性も登山での参加として同行したり、他の地域の方の飛び入りも認められるようになりました。その理由ですが、集落に暮らす住民の高齢化と過疎の進行で、祭りを担う人材が不足しているからです。 大間越の3人娘とご対面。おー、久しぶり。春日以来だね! 沿道に出てきたお母さんも、祭列に拍手喝さい 祭囃子に手拍子を合わせながら、笑顔で踊りを見るお年寄りたち 深浦町指定の「重要無形文化財」になっていますが、このままだと、消滅してしまう危機にありました。それを救うために、IVUSAの学生たちが立ち上がってくれました。これだけ賑やかな祭列は、近年、見たことがなかった、と、お年寄りたちも大喜びです。 神殿の周りを回って参拝 麓の稲荷神社で参加者全員で記念撮影 長くなりましたので、IVUSAの学生たちの活躍は、2部に続きます。 女子学生たちも元気いっぱいに踊る Post Views: 222 « 春日(鹿嶋)祭の神事2015 大学生がやってきた IVUSAの大学生が深浦町に来た!② »
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