みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
子どもたちによるシノリガモ観察④

子どもたちによるシノリガモ観察④

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シノリガモのフンを調査する子どもたち=深浦町で

シノリガモのフンを調査する子どもたち=深浦町で

シノリガモの観察を続ける子どもたちは、今、夏休みの真っ盛り。学校が始まると、自由な時間をとれる時は少ないので、この期間にしか出来ない調査に、じっくりと取り組んでいます。

河原で子どもたちが見つけたカワゲラの抜け殻

河原でみなみちゃんが見つけたカワゲラの抜け殻

そのテーマの一つが、「シノリガモは何を食べているのか」。生態に謎が多いシノリガモ。中でも、日本にとどまって子育てをする個体の食性は、大きな疑問のひとつです。私たちも、目視によって観察してきました。海では海藻やウニ、貝類などを食べている姿を目撃しましたが、繁殖期の川での食性は、確たる答えが得られていませんでした。

シノリガモのヒナと岩の上にした糞

シノリガモのヒナと岩の上にしたフン

でも、熱心に観察を続ける子供たちに、思わぬチャンスがめぐってきたのです。先日の観察会で、カモの親子が、岩の上でお昼寝する姿を見ていた時のことです。カモの足もとに、灰白色の塊が見えます。「あれ、フンじゃないかな」。今までの観察でも、シノリガモが休憩するときに、用を足す姿を見ていました。

子どもたちが採取したシノリガモのフン

子どもたちが採取したシノリガモのフン

それを分析すれば、食性解明の手掛かりがあるかもしれません。カモが上っている岩は、川のど真ん中。うまく採集出来るかどうか疑問でした。が、子どもたちは、「取りに行く!」、「水着持ってきてるし、濡れてもへっちゃら」と、やる気満々。結局、カモが泳ぎ去ったのを見定めて、夫を先遣隊として川に入らせることにしました。

伝染病などが心配なため、マスクと手袋を着用

伝染病などが心配なため、マスクと手袋を着用

猛暑で水量が減っていたため、水の流れもゆるく、深みも無さそうです。ズボンをまくり上げるぐらいで、容易に近づけたらしく、川の真ん中で笑顔で手招きをしています。早速、全員で岩に近づき、フンを採集して持ち帰りました。大さじのスプーンに2杯分ぐらいの量でしたが、期待が持てそうです。

虫眼鏡で内容物を観察

虫眼鏡で内容物を観察

まず、乾燥したフンの重さを測定したあと、目で見て判るものを探します。かなり消化が進んでいるらしく、大量の小石が混ざっているのが目立ちます。次に、これを水でほぐして、さらに細かな内容物を探します。鳥インフルエンザなど、野鳥が媒介する伝染病が怖いので、マスクとゴム手袋を着用しての作業です。

水を加えて、泥や小石と未消化の内容物を分離させる

水を加えて、泥や小石と未消化の内容物を分離させる

水に土などが溶け込んだり、小石が洗浄されたりすると、何かが見えます。あー、虫の頭じゃない、これ!と、かえでちゃんの叫び。こっちは羽根かな?と、理花ちゃんが冷静にピンセットでつまみ上げます。やりました。フンの中に、トビケラの頭部のような物やカワゲラの羽の部分など、水生昆虫の体の一部が未消化のまま残っていたのです。

判別できるものを分離させる

判別できるものを分離させる

子どもたちが採取した水生昆虫の足や頭部など

子どもたちが採取した水生昆虫の足や頭部など

そして、カモが羽づくろいしたときに飲み込んだのか、自らの羽毛の一部も水面に浮かび上がりました。それを撮影した夫の写真を見て、さらに驚きが。肉眼では全く見えなかったのですが、羽根に混じって大量の昆虫の足を確認できました。やはり、シノリガモたちは、川底の水生昆虫を食べていたのです。これは大発見です。玉のような汗をかきながら、マスクと手袋姿で、よく頑張ったね。思わず子どもたちの頭を撫でてしまいました。

シノリガモの羽毛と水生昆虫の足や体の一部。すべてフンから採取した

シノリガモの羽毛と水生昆虫の足や体の一部。すべてフンから採取した

最後に、フンの「水溶液」をろ過して、乾燥させます。私たちの手元にある機材では、これ以上の分析は難しいかもしれませんが、これを貴重なサンプルとして保管します。日本で子育てをするシノリガモの食べ物が分かれば、シノリガモの繁殖地を守るために、何をすれば良いかを考える大きな手がかりに繋がる可能性があります。子どもたちとの活動が、また一つ実を結んだようです。

ホラ、自分たちでしなさい。慎重にね

ホラ、薄く広げて。慎重にね

そして、この子どもたちの観察と調査の取り組みを、朝日小学生新聞さんが取り上げて下さいました。カラーでほぼ1ページ。写真も大きく、シノリガモ親子の愛らしい姿と、子どもの熱心な様子がしっかりとした扱いで掲載されています。私たちのチームは、全員ボランティア活動ですので、このような形で応援して戴けると、大変、励みになります。

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 ↑ 紙面のPDFファイル=クリックしてください 掲載紙を読むことができます

朝日小学生新聞の掲載紙面

朝日小学生新聞の掲載紙面

掲載紙と、子どもたちにはノートなどを送って下さり、一同大喜びです。関係者の皆様、本当にありがとうございました。次は現地に取材に来てくださいね。そうすれば、日本全国のお友達に、シノリガモや白神山地の自然のことをいっぱいお伝えできるから、と子どもたちは意気込んでいます。今後とも、よろしくご支援願います。

水でとかしたフンを漉しとる

汚いフンだけど、作業中も満面の笑顔。だって楽しんだもの

さて、夏休みは8月22日まで。宿題の仕上げも、我が家のリビングでやります。シノリガモの観察で忙しかったから、という言い訳は許されないぞ。絵も作文も、シノリガモを題材に、最後の追い込みにかかります。さぁ、もうひと踏ん張り。ガンバレ3人娘!。

シノリガモを題材に水彩画などを描くみなみちゃん(手前)、理花ちゃん(左端)、かえでちゃん(右端)

シノリガモを題材に水彩画などを描くみなみちゃん(手前)、理花ちゃん(左端)、かえでちゃん(右端)

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コメント

  • 藤井忠志 より:

    シノリガモの食性解明は、非常に重要事項です。一歩一歩ですが、あせらずじっくりと取り組んでください。今後ともおもしろい、新たな発見があるかもしれません。朝日小学生は8月5日版ですね。見落としていました。

    • hamatetsu より:

      藤井先生

      ありがとうございます。顕微鏡などの装備がない貧乏所帯では、水生昆虫の発見までが限界です。今年は、これで終えますが、来年はもっとミクロな視点も加えたいと思っています。糞からこれだけの水生昆虫が出てきた事自体、大きな前進だと捉えています。まだスタートしたばかりなので、楽しみな来年の課題として頑張ろうと思います。で、小学生新聞は我が家にストックがたくさんあります。次回お会いした時に、お渡しいいたします。貴重なコメント、感謝いたします。

  • つっちー より:

    継続は力になり、財産になりますね。
    子どもたちの観測とは思えないほど、とても専門的ですね。表情がいろいろ語りかけてくれます。

    • hamatetsu より:

      つっちー様

      最初は、鳥を見れただけで喜んでいた子どもたちが、日々、学習し、新しい経験をどんどん身に付けながら成長してゆく。
      それを見守りながら、お手伝いできることは、最高の仕事をしている気分です。
      教師の偉大さを痛感すると共に、心より楽しい仕事なのだなぁ、と思えます。
      新聞社の後輩を育てる仕事も、同じように進めたら楽しいのになぁ‥。
      つっちゃんなら、できるかも。
      頑張ってください。
      この調査も、今年1年の佳境を間もなく迎えます。
      こっちも、頑張らなくっちゃね!

  • 食べ物やセイリング山本千鶴子 より:

    子供たちがうらやましいです
    このような時間が、大人になった時
    本当に大事な大事な財産になりますね
    いいな~~~~~
    こんな大人が近くにいる幸せ
    うらやましい!!!

    • hamatetsu より:

      千鶴子さま

      ありがとうございます。
      でも、子どもたちが、地元にある素晴らしい自然と生活文化を学んで、本当の意味で成長してゆくのは、これからです。
      対象はシノリガモだけではありません。
      この森には、題材が無限にあるのです。
      それが、白神山地に暮らす、ということだと思います。
      私らも、それを享受させて戴いています。
      一緒に前へ進んで行きましょうね。
      いつも応援いただきまして、感謝いたします。
      娘さんの参加も大歓迎です。
      いつでも、お声掛けください。

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