シノリガモの観察を続ける子どもたちは、今、夏休みの真っ盛り。学校が始まると、自由な時間をとれる時は少ないので、この期間にしか出来ない調査に、じっくりと取り組んでいます。
そのテーマの一つが、「シノリガモは何を食べているのか」。生態に謎が多いシノリガモ。中でも、日本にとどまって子育てをする個体の食性は、大きな疑問のひとつです。私たちも、目視によって観察してきました。海では海藻やウニ、貝類などを食べている姿を目撃しましたが、繁殖期の川での食性は、確たる答えが得られていませんでした。
でも、熱心に観察を続ける子供たちに、思わぬチャンスがめぐってきたのです。先日の観察会で、カモの親子が、岩の上でお昼寝する姿を見ていた時のことです。カモの足もとに、灰白色の塊が見えます。「あれ、フンじゃないかな」。今までの観察でも、シノリガモが休憩するときに、用を足す姿を見ていました。
それを分析すれば、食性解明の手掛かりがあるかもしれません。カモが上っている岩は、川のど真ん中。うまく採集出来るかどうか疑問でした。が、子どもたちは、「取りに行く!」、「水着持ってきてるし、濡れてもへっちゃら」と、やる気満々。結局、カモが泳ぎ去ったのを見定めて、夫を先遣隊として川に入らせることにしました。
猛暑で水量が減っていたため、水の流れもゆるく、深みも無さそうです。ズボンをまくり上げるぐらいで、容易に近づけたらしく、川の真ん中で笑顔で手招きをしています。早速、全員で岩に近づき、フンを採集して持ち帰りました。大さじのスプーンに2杯分ぐらいの量でしたが、期待が持てそうです。
まず、乾燥したフンの重さを測定したあと、目で見て判るものを探します。かなり消化が進んでいるらしく、大量の小石が混ざっているのが目立ちます。次に、これを水でほぐして、さらに細かな内容物を探します。鳥インフルエンザなど、野鳥が媒介する伝染病が怖いので、マスクとゴム手袋を着用しての作業です。
水に土などが溶け込んだり、小石が洗浄されたりすると、何かが見えます。あー、虫の頭じゃない、これ!と、かえでちゃんの叫び。こっちは羽根かな?と、理花ちゃんが冷静にピンセットでつまみ上げます。やりました。フンの中に、トビケラの頭部のような物やカワゲラの羽の部分など、水生昆虫の体の一部が未消化のまま残っていたのです。
そして、カモが羽づくろいしたときに飲み込んだのか、自らの羽毛の一部も水面に浮かび上がりました。それを撮影した夫の写真を見て、さらに驚きが。肉眼では全く見えなかったのですが、羽根に混じって大量の昆虫の足を確認できました。やはり、シノリガモたちは、川底の水生昆虫を食べていたのです。これは大発見です。玉のような汗をかきながら、マスクと手袋姿で、よく頑張ったね。思わず子どもたちの頭を撫でてしまいました。
最後に、フンの「水溶液」をろ過して、乾燥させます。私たちの手元にある機材では、これ以上の分析は難しいかもしれませんが、これを貴重なサンプルとして保管します。日本で子育てをするシノリガモの食べ物が分かれば、シノリガモの繁殖地を守るために、何をすれば良いかを考える大きな手がかりに繋がる可能性があります。子どもたちとの活動が、また一つ実を結んだようです。
そして、この子どもたちの観察と調査の取り組みを、朝日小学生新聞さんが取り上げて下さいました。カラーでほぼ1ページ。写真も大きく、シノリガモ親子の愛らしい姿と、子どもの熱心な様子がしっかりとした扱いで掲載されています。私たちのチームは、全員ボランティア活動ですので、このような形で応援して戴けると、大変、励みになります。
↑ 紙面のPDFファイル=クリックしてください 掲載紙を読むことができます
掲載紙と、子どもたちにはノートなどを送って下さり、一同大喜びです。関係者の皆様、本当にありがとうございました。次は現地に取材に来てくださいね。そうすれば、日本全国のお友達に、シノリガモや白神山地の自然のことをいっぱいお伝えできるから、と子どもたちは意気込んでいます。今後とも、よろしくご支援願います。
さて、夏休みは8月22日まで。宿題の仕上げも、我が家のリビングでやります。シノリガモの観察で忙しかったから、という言い訳は許されないぞ。絵も作文も、シノリガモを題材に、最後の追い込みにかかります。さぁ、もうひと踏ん張り。ガンバレ3人娘!。
シノリガモの食性解明は、非常に重要事項です。一歩一歩ですが、あせらずじっくりと取り組んでください。今後ともおもしろい、新たな発見があるかもしれません。朝日小学生は8月5日版ですね。見落としていました。