みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
白神山地の生き物たち「ツキノワグマ」

白神山地の生き物たち「ツキノワグマ」

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観光地にある池から上がってきたのか全身に水滴がついたツキノワグマ。猛暑が続いた白神の夏、雨が降らない日が続いたので、水浴びでもしたのかな、深浦町の十二湖で

観光地にある池から上がってきたのか全身に水滴がついたツキノワグマ。猛暑が続いた白神の夏、雨が降らない日が続いたので、水浴びでもしたのかな、深浦町の十二湖で

白神山地に棲む哺乳動物の頂点に君臨しています。人間のほうが上だ、という指摘もあるでしょうが、武器もなく対峙したら、まず勝てません。鋭い爪と牙、そして人間の手足ぐらいの丸太なら簡単にへし折ってしまう馬鹿力の持ち主です。私たちも山を歩くときは、必ずクマよけスプレーと鉈(なた)、しっかりとした杖を手にしています。春先に親子連れなどと突然出くわすと、大変なことになりますので、我が身を守るためにもこの3点セットは必ず持っていきます。

林道上を歩くツキノワグマ。市販のセンサー一体型カメラなので画質がよくない

林道上を歩くツキノワグマ。市販のセンサー一体型カメラなので画質がよくない

 ネコ目クマ科に分類され、主に木の実などの植物質のものを食べていますが、昆虫や肉もしっかり食べる食肉類です。アジアクロクマとも呼ばれ、北海道に生息するヒグマよりもひと回り以上は小ぶりです。本州以南に棲息していますが、九州では絶滅宣言が出され、四国でも相当数が減っているようです。特に九州や四国は有数の林業振興地なので、植林したスギやヒノキの皮をはいでしまう事から有害鳥獣として駆除対象になったのも、大きく数を減らした要因のひとつです。

 白神では、山菜やキノコ採りに出かけると、3回に1回は遠方で見かけたり、通り過ぎたあとに木から滑り降りてきたりして、クマを目撃できる確率の高い森です。が、距離が遠すぎるのと、こちらが気づく前に不意をついて木から降りてくるので、なかなかきっちりと撮影できない、と夫はこぼしています。

カメラを仕掛けて最初に写った個体。耳などの顔の一部と前足が片方だけ見えた

カメラを仕掛けて最初に写った個体。耳などの顔の一部と前足が片方だけ見えた

更に森へ行くと、クマのサインがいくつかあります。ナラやミズキなどの樹の上に、寄生木(やどりぎ)のような枝の固まりがあります。これはクマが木に登って新芽や実などを食べた「クマ棚」です。白神の森をマタギと歩きますと度々みられますが、その季節ごとの木の実や野いちごなどの実り具合、山菜の繁茂の量で、棚が見られる数も違ってくるようです。そして、クマがよく登る木には、無数の爪痕が残っています。母子もあれば大型のオスの深い爪痕もあります。特にブナの木肌の痕跡は目立つので、マタギたちは行動のひとつの指標にしているようです

樹皮がクマの爪痕だらけになっているブナ。遺産地域のバッファゾーンに近い森で撮影、深浦町で

樹皮がクマの爪痕だらけになっているブナ。遺産地域のバッファゾーンに近い森で撮影、深浦町で

地元のマタギを始めとする狩猟者にとって、クマは重要な存在で、古くから獲られてきました。肉はもちろん、内臓や脂肪、毛皮や骨も余すことなく利用されています。記録によると、江戸時代には津軽藩へ肉や毛皮、熊の胆などが献上されていたそうです

高価な薬にするため処理される熊の胆

高価な薬にするため処理される熊の胆

白神山地のクマは有史以来、哺乳類の頂点として森の中で君臨してきました。しかし、知恵と道具を得た人間が、その地位を脅かしました。特に縄文以前の時代からクマを狩り続けてきた狩猟者(マタギ)の存在は、恐るべき天敵で、何度も生きるか死ぬかの争いを繰り広げてきたようです。

巻狩りでマタギたちに仕留められたツキノワグマ。熊猟用に仕込まれたアイヌ犬が踵に噛み付いていた

巻狩りでマタギたちに仕留められたツキノワグマ。熊猟用に仕込まれたアイヌ犬が踵に噛み付いていた

それが、時代の変化とともに、様変わりしつつあります。白神山地の麓の村々では、過疎と限界集落化が進み、狩猟で生計を立てる人がいなくなってきたのです。クマ狩りには、様々な手法が用いられています。東北のマタギたちは伝統的に巻狩りを重んじてきました。確実に仕留めることと、安全性に留意するためです。それが最近では、狩猟者の数が激減し、巻狩りができるほどメンバーが集まらなくなってきました。そして、マタギの後継者もほとんどいません。有史以来続いてきた人間の伝統的な生活文化が衰退し始めことで、クマやその他の野生動物たちが活動範囲を広げています。それがお互いにとって思わぬ弊害を生み出しています。

推定で100キロを軽く超える大型のクマ。観光ガイドが客を案内する遊歩道のすぐ脇で撮影、十二湖で

推定で100キロを軽く超える大型のクマ。観光ガイドが客を案内する遊歩道のすぐ脇で撮影、十二湖で

深浦町など、白神山地周辺の市町村では、ここ最近、野生動物による農作物への食害が深刻になってきました。それは、クマだけでなく、サルや外来生物なども被害を及ぼします。その話は、近々、アップする予定です=写真下、田んぼの米を食べたあと、道路を横切って森へ戻ったクマの足跡、深浦町で。(律)

田んぼの米を食べたあと、道路を横切って森へ戻ったクマの足跡、深浦町で

田んぼの米を食べたあと、道路を横切って森へ戻ったクマの足跡、深浦町で

 

 

 

 

 

 

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コメント

  • ちみ より:

    ずっと白神山地を訪れるのが夢で、かつ、かなりのクマ恐怖症です。
    日本におけるヒグマ事件などを読みすぎたせいで、出逢ったら終わりと自分では思っています。
    (穴待たずや親子クマ、止め足、火も恐れず、泳げる上に木登りもできると知り、より恐怖心でいっぱいになりました)
    白神山地に行きたいなー、、、でもクマいたりしないかな、、、と検索をかけたところ、こちらのHPに出逢いました。

    HPを見て、ますます白神山地に行きたいと思いましたが、
    クマ目線で言えば、一般人がガイドもなしに入るのはかなり危険ということでしょうか?

    • hamatetsu より:

      しばらくホームページを管理できていませんでした。
      ごめんなさい。
      白神山地は、きちんとガイドできる方と一緒に歩く方が安全です。
      とくに狩猟を実践されている方の方が、より生き物には詳しいはず。
      何人かいらっしゃるので、役場等に聞いて連絡してみてください。
      山には熊はいます。
      ヒグマほどではないにしても、唐突に出会うとツキノワグマでも危険です。
      充分に準備されてから、チャレンジされてください。
      ご安全をお祈りしています。

  • 小林さま より:

    白神山地の、自然と動物を 調べております。

    ツキノワグマ等々、捕獲されているのでしょうか。
    白神山地は、動物達の餌が、豊富にあるように思うのですが。

    インスタグラムをしております。写真提供宜しくお願いできませんでしょうか。
    宜しくお願い致します。🌏地球温暖化問題🌏 つぐみ

  • リップ より:

    超かわいい!!!!!!!

    • hamatetsu より:

      リップさん

      ありがとうございます。
      クマは見かけはかわいいのですが、山の中で出あうと、場合によってはこわいときもありますよ。
      白神山地は、クマがいっぱいいる森です。
      来て下されば、私たちとマタギの親方が案内しますよ。
      興味を持ってくださって、ありがとう。
      また、見に来て、書き込んでくださいね。

  • あいぽりん より:

    5年生です。授業で今白神山地を調べています。私の担任がいったそうです。・・・その担任自慢ばっかりですけどね。笑

    本当につかれまーす。

    • hamatetsu より:

      あいぽりんさん

      授業で白神山地を調べているって、素晴らしいですね。
      ありがとうございます。
      担任の先生は、白神に来られて、とても感動されたのだと思いますよ。
      白神の自慢をしてくださるなんて、とても素敵な先生じゃないですか(笑)。
      つかれないで、お付き合いしてあげてください。
      あいぽりんさんも、白神に来たら、きっと感動できますよ。
      私たちに連絡くだされば、そんな場所へお連れします。
      ぜひぜひ、遊びに来てくださいね。

      ホームページに興味を持ってくださって、ありがとう。
      また、見に来て、書き込んでくださいね。

  • より:

    おもろい

    • hamatetsu より:

      秋さん

      見ていただいたツキノワグマがおもしろかったのですか?。
      それとも、ホームページ全体ですか。
      興味を持っていただきまして、ありがとうございます。
      また、見に来て、書き込んでくださいね。

  • 鏡音りん より:

    すごい

    • hamatetsu より:

      鏡音りん様

      「すごい」の一言。最高の褒め言葉です。ありがとうございます。今後もよろしくお願い致します。

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