みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
白神山地の森に危機迫る② スタディキャンプで啓蒙活動

白神山地の森に危機迫る② スタディキャンプで啓蒙活動

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    ナラ枯れの説明をする大学生や社会人メンバー

白神山地周辺で進行中のナラ枯れ被害を知るための啓蒙活動を、9月の初旬、青森県深浦町の子供たちを対象に開催した「スタディキャンプ」で実施しました。これは、都会から訪れた大学生と地元の小中学生が、自然環境や地域の伝統文化などを学びながら交流を深める取り組みです。世界自然遺産の森や海に忍び寄る危機を、学生と子供たちの視点から報告します(文・高木乃梨子、写真・浜田哲二)。

    深浦町に広がるナラ枯れ被害

青森県側の白神山地は、ブナを中心とした広葉樹の森だけでなく、白神岳などを源とした複数の河川と、生物多様な美しい海の存在が、世界遺産の重要な構成要素として謳われています。

    深浦町の海岸の清掃に臨む子供たちと大学生ら

楽しみながら自然に触れる活動として、まず最初に海の環境保全とゴミのリサイクルを実践しました。海岸の清掃で拾ったガラス片をアクセサリーに生まれ変わらせる「リボーン・アクセサリー」作りです。

    シーグラスなどのガラス片を使ったアクセサリー作り

青く澄み渡った深浦町の海は、夕日が水平線に沈んでいく光景の美しさから「夕陽海岸」とも呼ばれています。そして、この時期の夜は、イカ釣りの漁船が幻想的な光を揺らめかせる豊穣の海になるのです。

    海岸線で座り込んだり、歩き回ったりして活動する

そんな風景を楽しめるはずの海岸。そこへ一歩足を踏み入れてみると、岩礁や浜辺には、ブイ、漁網、ライター、プラスチック容器、缶、ペットボトルなどの流れ着いたゴミがあちこちに目立ちます。

    それぞれが袋いっぱいにゴミを収集する

地元の子供たちと一緒に「綺麗な海を守りたい」との思いで、一生懸命に掃除しました。初秋とはいえ、気温は30度超え。全身汗まみれになりながらも、ゴミ袋がいっぱいになるまで拾います。

    ゴミで汚れた海岸を清掃する子供たち

そして、休憩中の子供たちが自慢げに見せ合うのが、波に揉まれて角がなくなったガラス片の「シーグラス」。これをアクセサリーへと生まれ変わらせる活動を、深浦の小中高生が数年前から取り組んでいるのです。昨年に続き今回もチャレンジしました。

    拾ってきたシーグラスや貝殻を洗う。どんなものを作ろうかな、と夢見ながら

水色、緑、茶色・・、色も形も様々なシーグラス。自分で拾ったものを素敵な装身具へ変身させたい、と大事に洗って乾かします。海からのゴミだけでは色の変化に乏しいため、大学生が沖縄で集めて来たガラスの破片も加えて熱加工するのです。

    溶かしたガラスの仕上がりを見る子供たち

一夜明けた翌日、溶けて丸くなったガラスを使って、ネックレスやブレスレットなど、それぞれが個性あふれる作品をたくさん作り出しました。目を輝かせながら試着する姿が可愛いすぎます。

    大学生のお姉さんとポーズ

    ジャガイモやニンジンの皮むき。手際は大丈夫?

もう一つの取り組みは、「フードロス」を無くすチャレンジ。形の悪い野菜を使った食事作りは、今年初めての試みです。地元のおばあちゃんや農家の方に戴いた、小さすぎて捨てられたり、販売できなかったりしたジャガイモやトマトを、夕食のカレーやポテトサラダに調理しました。

    お母さんが作っている横で味見。「え、熱い!」

 大豆を煎る工程。とてもいい香りが‥

次に挑戦したのが、食品庫に眠っていた大豆を使った「きなこ餅」作りです。フライパンで豆を煎って、すり鉢などですり潰すと、香ばしい匂いが部屋中に漂います。

    力を合わせて大豆をすり潰す。大丈夫なの?

自分好みの甘さに砂糖を加え、手作りのきなこが完成。子供たちは「きなこが大豆からできるって知らなかった」「売っているのよりも美味しい!」と次々とおかわり。この満面の笑顔をお母さまたちへお届けしたかったです。

    手作りのきなこ餅を食べながらウインク。美味しいね

    美味しいー!

今回、最も重要だと考えていたのが、白神山地に迫るナラ枯れの学習とフィールドワークです。お盆の深浦町に立ち寄った時、緑の山中に燃え広がるような赤いミズナラの群落に目を見張りました。

    ナラ枯れが進む深浦の里山

「え、今の時期に紅葉ですか?」と律子さんに聞くと、「いいえ、あれはナラ枯れよ。でも、こんなに広がっているなんて・・」と驚いている様子。

    ムシが穿入したとみられる木を取材するNHKカメラマン

そして、「このままだと、遺産登録されている森の中心部に被害が及ぶ可能性があるね」と心配そうに呟きます。私の大好きな白神山地と深浦町に、こんな危機が迫っているなんて・・。

    山の斜面のナラが真っ赤になって枯れてしまった

あまりの衝撃の大きさと、異様な光景を前にして、とても胸が痛みます。これは、地元の人たちにも事態の深刻さを知ってもらい、一緒に出来る事の模索を始めた方がいいのでは、と考えました。そして、子供たちとのフィールドワークを急遽メニューに加えてキャンプに臨んだのです。

    フラスが積もったナラの枯死木を説明する社会人メンバーの桃ちゃん

    真剣な表情で話を聞く子供たち

取っ付き難いテーマなので、社会人メンバーが作った何枚もの写真をもとに、ナラ枯れのメカニズムや森林に与えるダメージについて説明します。さらに、一つの種類の樹が枯れてしまうことで森の生態系が狂ってしまう恐れがあることを訴えました。

    大学生の話を真剣に聞く子供たち

また、白神の森の木や生き物たちに異変が起こることは、麓に住む人たちの暮らしにも重大な影響が及ぶ可能性についての考察を深めます。自然が破壊されることは他人事では終わらない怖さがあると、説明したのです。

    野生動物への影響も心配される

ナラ枯れを「紅葉だと思っていた」と顔を見合わせている子供たち。その原因となるカシノナガキクイムシを見て、最初は「えー、気持ち悪い」と目を背けていました。が、次第に自分たちの故郷が危ないのだと理解し、真剣な表情で話を聞いてくれます。

    歩きながらナラ枯れの森を見る子供たち

そして、フィールドへ。被害木の近くまで歩き、無数に開けられたムシの穿入した穴や、根元に積もったフラスと呼ばれる大量の排出物と木くずを観察しました。さらに足を伸ばし、食害を受けた数多くのナラの木を見て回ります。

    ナラ枯れの森で観察

葉が真っ赤なものや進行して茶色くなったもの、葉が全て落ちて白骨のように枯死したものなど、様々。その異様な光景を前に、皆が現場で立ち尽くしました。「こんなに酷いことが起こっていたの・・」と。

    ナラ枯れの森を飛ぶドローン

深浦町に滞在中、ナラ枯れの被害を確認するために、ドローンを使った上空からの調査を実施する林野庁関係者に出会いました。一緒に現場を歩いた町役場の方々も、「数年前より明らかに枯れた木が増えている。いったいどうなってしまうのか」と心配そうです。

    枯れたナラを見上げる子供たち

対策に関わる方々から話を聞くと、1本ずつ薬剤で燻蒸したり、切り倒して除去したりするしかなく、現段階では有効な方法がみつからない、と頭を抱えていました。そして、これ以上の被害の広がりを抑えるのは難しい、と苦慮されているのです。

    ブイで作った鳥の巣箱を紹介する大学生ら

そこで、私たちに何ができるかを考えてみました。まず、カシナガの天敵を呼び寄せるため、海岸清掃で拾ったブイで鳥の巣箱を作って森に仕掛けてはどうかと、提案しました。

イの巣箱を説明する大学生

これは数年前に松くい虫が青森へ入ってきた時から、社会人メンバーや大学生たちが暖めていたアイデアです。森の中に鳥を増やし、虫を食べてもらおうという計画。ゴミから再生したブイの巣箱の効果はわかりませんが、挑戦してみる意義はありそうです。

    高木のレクチャーを受ける子供たち

今、どんどんと分布を広げているナラ枯れは、けっして他人事ではありません。林野庁や自治体などへ責任や対策を任せきりにするのではなく、世界遺産の自然を享受している国民一人ひとりが考えるべき課題だと思います。地元の子供たちだけでなく、そこで暮らす皆さまと手を取り合いながら、活動を続けて行きたいです。

カシナガの被害を受けて、フラスが積みあがったナラの根元

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コメント

  • 小川智 より:

    白神山地のナラ枯れの実態がよくわかりました。食害を引き起こすカシノナガキクイムシの名前や、かつこの虫を食べる鳥がいることも初めて知りました。やはりナラ枯れ被害が何とか食い止められることを願います。ありがとうございました。

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