東北地方の山間部に暮らしていた伊勢親方の子供のころは、ウサギは冬のごちそうであり、重要なタンパク源でした。戦後の貧しい時代、雪深い山里で、手に入る肉は自分たちで狩った獲物だけです。そのなかでもウサギは最も簡単に捕獲でき、大量に手に入ったそうです。白神山地もウサギが豊富に生息していますが、この10年ほどは森の中から姿を消していた、と親方は言います。最近になって、ようやく数が復活しつつあるようですが、親方が仲間たちと山のように収穫した全盛期とは比べ物にはならない、と振り返ります。そんなマタギたちのウサギの料理を紹介いたします。=写真上、手際よくウサギを解体する伊勢親方。5~6分ぐらいで丸裸にしてしまった、深浦町で
ウサギの肉には、ほとんど脂身がなく、全体が赤身です。野生の物は、臭みがほとんどなく、筋張っている感じもありません。一見、鶏肉のようにも見えますが、味や食感がもう少し複雑で、まったく違うように感じました。バターを使った鉄板焼きも美味しいですが、今回は親方の指導でお鍋にしてみました。具材はゴボウ、ニンジン、サトイモ、白菜などの野菜とコンニャクです。隠し味と風味付けにスライスもしくは摺り下ろしたニンニクも入れます=写真上、ウサギ鍋の材料。手前がお肉。
まず、肉を分離した骨(ガラ)を水もしくは沸騰したお湯から煮出します。灰汁をすくいながら、約半日ぐらいかけて、じっくりと煮込みます。この出汁が鍋の基本となりますので、手は抜けません。出来上がりは澄んだ色の良い香りのスープとなります=写真上、約半日かけて煮出した骨のスープ。
フライパンなどで赤身のお肉を炒めます。サラダ油を鍋底に流れるぐらいにたっぷりと引き、強火で炒めてゆきます。お肉に火が通り、白く色が付いてきたら次の行程に=写真上、サラダ油をたっぷり加えて炒める。
日本酒をヒタヒタになるぐらい投入します=写真上、炒めながら日本酒を投入。ヒタヒタになるくらい結構多い目に入れる。
ここで、しばらく中火で煮込むと、大量の灰汁が出てきますので掬ってやります。この作業が、雑味を取り、肉とスープの旨みを左右するので、小まめにやることが重要です=写真上、灰汁が出るので小まめに掬う。
5分ほど煮て、灰汁を掬いきったら、先ほど取ってあった骨のスープを投入します。このスープに白菜の芯やコンニャクなどを入れて先に少し煮込んでおくと、味が染み込んだトロトロの白菜も楽しめます=写真上、骨のスープで煮込んだ白菜をスープと一緒に投入。量は適量で。
親方の奥さまが、大豆の栽培から手がけた手づくりの味噌を投入。分量は親方の味見で決まりました。4人前で山盛りの大さじ4~5杯ぐらいかな=写真上、親方の奥さまが手づくりした自家製の味噌も投入。
ここで、味見。味噌を投入したあと、風味付けのため醤油を大さじ3杯ぐらい入れます。東北風の味付けだったので、私らには少し濃いように感じましたが、塩辛いわけではありません。とても美味です=写真上、親方が味見。「うん、いいんでねか」。ちょうど良い具合で、これでOKだった。
最後に、下ゆでしたサトイモなど、野菜の具材を投入。約10~20分間煮込むと、ゴボウやニンジンなどの根菜類にスープが染み込んで最高に美味です。スープの量が減ってきたら適宜追加してやります。少し濃い目の味付けが、この追加分で丁度良くなりました。白菜の葉の部分は、食べる直前に投入してやります=写真上、ゴボウやニンジン、サトイモなどの具材を投入。
そして、完成。お鍋にしたウサギの肉は、鳥の砂肝とレバーを足したような味と食感で、とても美味しく戴けました。牛や豚とはまったく違うもので、やはり鳥に近いのですが、煮込んでもブロイラーのようにパサパサしていません。野生の鴨にも似ていますが、まさにウサギの味です。親方によれば、産前産後の女性に最適な肉だといいます。赤身が多いので、鉄分やミネラルが豊富なのでしょう。いずれにせよ、癖になるジビエです。カロリーも低く、とてもヘルシーなお肉のようです。青森まで来ていただければ、我が家のマイナス60度で凍る冷凍庫に、あと1羽分保存してあります。仲間の来訪をお待ちしています。早い者勝ちですよ=写真上、出来上がり。笑顔で乾杯。左端が親方、右端は奥さま。中央が筆者①。
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