大型連休も終わり、観光や帰省のお客さんも帰って静けさを取り戻した白神の里。双眼鏡を片手に、ぶらりと森の散策に出かけてみました。雪解け間もない山は、木々の葉が開いておらず、下草も少なくて歩きやすいため、視界良好です。野鳥の観察や動物のフィールドサインを見つけるには、最高のコンディション。そんな春の森を満喫していると、カモシカの歩いた跡をたどって、ガサガサと丘を登っていた夫の喜々とした声が響き渡りました。「やったぞ!。おーい、早く来い」。急いで追いつくと、倒木を指さして、「ヒラタケだ、ヒラタケ」と小躍りしています。黒灰色の扇形の傘が、波のように重なった姿が特徴の美しい食菌です。自然の造形美だね、と顔を上げると、早くも腰のマキリを抜き放って、スパスパっと収穫しているではありませんか。考えるより先に手が動いてしまう、せっかちな性分の夫。「春のヒラタケの写真、今まで撮ったことないよね」と言うと、いつものことながら、口をパクパク。もう、後の祭りです=写真上、収穫したヒラタケ。良い香りがする。
ヒラタケは、日本人になじみ深い食用キノコで、平安時代の説話を集めた「今昔物語集」などにも登場します=写真上、虫出しをして、きれいに洗ったヒラタケを食べやすいように細かく裂く。海外でも食べられており、傘の形がカキの貝殻に似ていることから、オイスター・マッシュルームと呼ばれています。香りがよく、出汁も出るキノコで、みそ汁や鍋の具、煮物などに利用でき、白神山地周辺では、早春と秋、二回の収穫期があります。ただ、毒キノコのツキヨタケに似ているため、発生が重なる秋の収穫時期は注意が必要です。
お鍋の季節はちょっと過ぎてしまったので、今回は炊き込みご飯に挑戦してみました=写真上、ニンジンをみじん切り。まず、塩一掴みを入れた水にヒラタケを浸け、「虫出し」をします。キノコの汚れ具合にもよりますが、最初は10分ぐらいで水を換え、再び同様の塩水に30分ぐらい浸してから水洗いし、ザルにあけて水を切ります。この間を利用して、米をといでおきます。醤油を使った炊き込みご飯は、何故か出来上がりがパラパラの硬めに仕上がるので、白米に一割程度、もち米を混ぜておきます。キノコの水が切れたら、手で細かく裂きます。
その他の具を用意します。人参、油揚げ、鶏モモ肉はみじん切りにし、酒、みりん、コブとカツオの出汁、薄口醤油、塩で少し濃い目の味付けで煮ます=写真上、酒、みりん、出汁などを投入。煮汁はひたひたです。好みにもよりますが、我が家では、酒3:みりん1:出汁2:醤油1、塩は味を見て適宜、といった割合にしています。料理酒を使う場合は、塩味がついていますので、加減してください=写真下、塩も少々。
3~4分、グツグツと煮たら、最後にヒラタケを投入。キノコの美味しそうな匂いが立ち昇ります=写真下、細かく裂いたヒラタケを投入。再び煮立ってから1分程度で火を止め、具と煮汁に分けます。ご飯の水加減は、この煮汁を使い、足らない分は出汁を足して炊飯器の目盛に合わせます。最後に分けておいた具を入れ、味見をします。炊飯器の中の汁を少し舐めてみるのです。この汁の味が、炊き上がった時のご飯の味になるので、足らない場合は塩を、辛すぎた場合は汁を少し捨てて同量の水を入れ、調整してください。よければ、スイッチオン。
美味しいヒラタケご飯が出来上がりました=写真下、具が全体に行き渡るようによくかき混ぜて。キノコから出た出汁がご飯全体にまわって、独特の味と香りが素晴らしい炊き込みご飯の完成です。四季折々に自然の恵みを与えてくれる白神の山々。春は山菜、と思い込んでいたけれど、油断は禁物です。だって、こんなキノコが出るんだもの。これからは、もっと注意して倒木を見ながら歩かなければ。ま、それらしい雰囲気の木があれば、夫に命じて見に行かせるだけですが。次は、「現場で木に発生している場面」の写真を撮るのよ、おバカさん。山の神様と自然に感謝しつつ、さあ、ご近所のおばあちゃんたちに、お裾分けに行ってきます。
すごいですね!ヒラタケは初めて見ます。自然の恵みに感謝ですね!至福の時を感じます!