12月上旬、白神山地の森に本格的な雪が降りました。木々も大地もふんわりと雪が積もり、原生のブナ林から人が遠のきます。夜が明けきれぬ薄暮の朝、青白い雪の上を黄色い炎が踊るように揺れています。しなやかなその動きは、ホンドテンの雪上の舞でした=写真上下。冬毛で雪の中に佇む美しさは、まるで黄色い宝石のようです。
秋が深くなる10月の下旬、大型の哺乳類を狙っていたカメラに「忍びの者」が写りました。池が点在する場所に置いたカメラ。引き伸ばしてみると、その口に魚を咥えています=写真下。隠れ家に持って帰るのかな。誰か待っているのかな。
ネコ目のイタチ科であるテンは泳ぎが上手く、水中に潜って小魚を捕らえることができるようです。敏捷で木登りなども得意。ネズミや鳥、両生爬虫類だけでなく、木の実などの植物も食べます。佐渡島では、飼育センターで掌中の玉のごとく育てられていた国特別天然記念物のトキを9羽も捕殺してしまい、冷血で残忍なハンターとして悪名を轟かせました=写真下。
そして、北東北地方などを含め、民間伝承でもあまり縁起の良い動物として扱われてはいません。江戸時代の浮世絵師・鳥山石燕(とりやま・せきえん)が描いた妖怪絵「画図百鬼夜行」に火難をもたらす存在として登場し、一部地方では殺すと火による災いが降りかかるとされています。更に「狐の七化け、狸の八化け、貂(テン)の九の化け、やれおそろしや」とした言い伝えが残る地域もあり、 狐や狸よりも貂の方が化ける技が長けているとの伝承も残っているようです=写真下。
でも、ブナの森で見かけるその姿はとても愛らしくて、人心を惑わす存在とは思えません=写真下。地元のマタギや長老たちの話では、一時期、高級な毛皮が狙われて数を減らしたようですが、最近は自然保護の意識が変化したのか売れなくなったのか、狩猟鳥獣でありながら白神の森でテンを捕獲する人は少ないようです。
夫が設置するカメラの前に、ネズミ類に次いで数多く登場する千両役者=写真下。原生のブナの森を舞台に、悪い噂をものともしない艶やかな舞を見せ続けて欲しいものです(律)。
かわいいね
おこったら怖そう