白神山地で、狐の姿をみかけなくなりました。2011年の秋から、森の中で自動撮影のロボットカメラを設置しているのですが、まともに写ったのは1回だけ。あとは動画カメラの前を走り抜ける姿が1~2回、体の一部が1~2回捉えられたのみです。マタギや狩猟者に聞くと、以前は森の中でも民家の近くでも姿を見かけたといいます。日本海の海岸線には、潮風を防ぐために松林が設けられていて、ここの中で営巣していたのか、子ギツネが遊ぶ姿もあったそうです。が、「そう言えば最近見かけねぇなぁ」、と皆さん首をひねります。
カメラの前にめったに姿を現してくれないキツネですが、撮影していて驚いたのは、非常に耳が良いということです。自動撮影装置の特徴として、まず動物をとらえたセンサーのスイッチが入り、次にその信号を受けてカメラが作動します。動物たちは、たいていが「ウィン」というカメラの起動音に反応するため、目線はカメラかストロボに向くケースがほとんどです。が、キツネは最初にセンサーのスイッチが入る「コトン」という微かな音を聞きつけて、センサー方向を見ていました。センサーの音は、防音された室内でも聞き取れるかどうか、という音ともいえないような音。キツネは、雪の下のトンネルや地下を走るネズミなどの小動物の足音を聞きわけて狩りができますが、まさに驚異的な聴力です。
そんな聴能力者がなぜ、姿を見かけなくなっているかは不明です。キツネの餌となるウサギはよく見かけるし、ネズミ類も嫌というほどカメラのカウントを稼ぎます。なのに何故?。それは、キツネが減ったから起きている現象なのか、それ以前から始まっている現象なのか、これも判りません。私たちが出来ることは、時間をかけて記録していくしかありません。
かなしい