ちょっと見の毛色や顔の模様がタヌキに似ていますが、分類学上ではイタチ科で、タヌキはイヌ科です。白神周辺では、「ムジナ」や「マミ」と呼ばれています。国内では、古くから兄弟のように混同されており、地域によっては正反対の呼び名がつくことも。土の斜面などに穴を掘って住処にしていますが、そこをタヌキに使われることもあり、「同じ穴のムジナ」というコトワザが生まれたようです。梅雨時や真夏の雨上がりの夜、国道沿いに数匹の群れが現れ、カエルや昆虫をあさる姿をしばしば見かけます。車にひかれたカエルを食べようとして、自らも撥ねられてしまうケースも少なくないようです。目があまり良くないのかなぁ。
白神山地の林道を歩くと、直径20センチ前後の穴が、地面にポコポコと開いていることがあります。時にはズラリと、十数個も並んでいます。アナグマが餌のミミズやコガネムシなどの幼虫を求めて掘り返し、鼻先で土中を探った跡です。青森に引っ越す前に暮らしていた西日本では、こうした穴はイノシシが作っていました。でも、ここはイノシシの棲息が確認されていないので、穴だらけの「林道工事」の犯人はアナグマに間違いないでしょう。初夏の夜、遊歩道脇に仕掛けた装置の足元を掘り返され、傾いた三脚上のカメラには、当事者のアナグマの背中しか写っていなかった、という出来事もありました。
そして、たくましい前足は穴を掘るだけではありません。機会があれば、小鳥や小型の哺乳類を捕食するのにも使われているようです。池のほとりに張ったブラインドテントの中から、水鳥の子育てを撮影していた私たちの前に、突然アナグマが姿を現しました。水面に浮かぶ巣には、2、3日前に孵ったヒナが数羽。母親が守り、父親が盛んに餌を運んでいます。その様子を対岸からじっと見つめています=写真上。泳ぎが得意でないためか、遠巻きに見守るだけ。お母さんらしく、乳房が発達しています。アプローチできそうな場所を探し、池の周りをグルグル回り始めました。「お腹すいたよ、食べたいよう!」と、ヨダレを流さんばかり。しばらく徘徊してから、あきらめて森へ帰ろうとした時に、ブラインドテントから顔を出した夫と鉢合わせし、大慌てで茂みに駆け込みました。彼女にも、待っている子供がいたのかも‥。その後ろ姿が、ちょっと哀れでした。
餌を探すために下ばかり見て歩くせいか、自動撮影にもよく写ります。その写ったコマをよく見ると、模様が特徴的だったり、鼻がピンク色だったり、耳に怪我していたり‥となかなかに個性的です。ずんぐりむっくりした体型とユーモラスな表情に、ひょっとして夫に似ている?、なんだか親近感を覚えてしまいます。
捕まえて食べた人の話によると、かなり美味しいらしいですが、調子に乗って食べ過ぎると脂で腹を下すそうです。
自動撮影をしていて、がっかりすることのトップ3に、メディアを回収しても一コマも写っていない事が挙げられます。夫がカメラのカウントを見て、「ゼロ!」と叫ぶと、一気にショボンとしてしまいます。しかし、アナグマは、春から秋にかけてカメラの前に頻繁に登場し、ボウズを救ってくれました。愛らしい姿で私たちを楽しませてくれますが、初雪が降る頃には、ぴたっと姿を見せなくなります。早々に冬ごもりしてしまう、寒がり屋さんでもあるようです。(律)
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