みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
白神山地の生き物たち「シノリガモ」②

白神山地の生き物たち「シノリガモ」②

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白い泡が沸き立つ急流で、お母さんと泳ぐヒナたち=深浦町で

白い泡が沸き立つ急流で、お母さんと泳ぐヒナたち=深浦町で

小さな岩を登るのも一苦労。生後、5~6日ぐらいか

小さな岩を登るのも一苦労。生後、5~6日目ぐらいか

シノリガモの子育てが、本格化しています。6月20日前後にヒナが川面に登場。7月13日現在で、2群れで計12羽のヒナがそれぞれのお母さんに連れられて、小滝や激流の中をスイスイと泳ぎまわっています。本日、青森県の地方紙・東奥日報に、夫の撮影した写真付きで、社会面トップの記事で紹介されました。

岩の上でひと休み。お母さんに寄り添って過ごす

岩の上でひと休み。お母さんに寄り添って過ごす

川面に降りる時も、皆でそろって一列に。必ずお母さんの後を追う

川面に降りる時も、皆でそろって一列に。必ずお母さんの後を追う

一昨年の春、散歩していた河原で何気に見かけた水鳥の夫婦。仲睦まじく岩の上で休んでいる姿が気になって調べると、なんと「絶滅が心配される地域個体群」のシノリガモでした。最初の年は子育てまで確認できませんでしたが、昨年は3羽のヒナが無事に育って行きました。成長の途中に、カラスやハヤブサなどに襲われて、全滅してしまった群れもありましたが、6~7年前から地域のお年寄りたちが、ヒナを引き連れた母鳥を毎年のように確認しており、この場所で確実に子育てを継続しているようです。

激流も何のその。お母さんの後を一生懸命追いかけます

激流もなんのその。お母さんの後を一生懸命追いかけます

泳ぎ疲れたら競うように小岩に登る。後姿が羽根のないペンギンみたい

泳ぎ疲れたら競うように小岩に登る。後姿がペンギンみたい

ただ、シノリガモといえば、人里離れた山奥の渓流でしか繁殖しない鳥とされています。が、その概念を覆すような発見の連続です。まわりが人工的な縁石で護岸された急流やコンクリートの堰堤があっても、まったく嫌がるそぶりはありません。護岸についた藻などを嘴で削ぎ取るように食べる姿も見られます。

岩の間に隠れていると、見事な保護色で石と区別がつかない。これで上空から来る敵を躱す

岩の隙間に隠れていると、見事な保護色で石と区別がつかない。これで上空から来襲する天敵を躱す

岩の上で休み姿がシュール。蓑を被った案山子のよう

休む姿がシュール。蓑を被った案山子のよう

また、川の左右には、地域のお年寄りたちが小さな畑を作っており、カモの子育て時期の春先から夏にかけては、作物を育てる繁忙期と重なります。時には、ヒナを連れて川面を泳ぐ母鳥の横を、肥料などを積んだ一輪車を押すお爺ちゃんが通りかかります。でも、少し脇によけて遠ざかる程度で、ほとんど気にしていない様子。立ち止まって見つめると、慌ててスピードを上げて泳ぎだしますが、毎朝のように畑で見かけるお年寄りの姿は覚えているかのようで、まったく動じる様子はありません。

お母さんのお腹の下で眠る。ここが一番安全

お母さんのお腹の下で眠る。ここが一番安全

子育ての疲れで、お母さんは岩の上でウトウトと。ヒナたちは元気なキョロキョロ

子育ての疲れで、お母さんは岩の上でウトウト‥。でも、ヒナたちは元気にキョロキョロ

お年寄りたちも、「可愛いカモの子っこがいるべ」と目を細めて見守ってこられました。それが、絶滅危惧のシンリガモだとお知らせすると、「ずっと、オシドリだと思っていたびょん。んだば、大事にしてやらねばね」と、深々と頷いてくださります。先日も、ハシブトガラスが、ヒナと同じ模様の小柄なお母さんを襲って、連れさろうとしました。

とっても仲良しの2羽。小岩の上で仲良く寄り添う

とっても仲良しの2羽。小岩の上で身体を寄せ合う

けど、退屈だからちょっとおイタも。嘴で咥えちゃえ!

けど、退屈だからちょっとおイタも。嘴を咥えちゃえ!

が、それを目撃していたご夫婦が、石を投げながら大声を上げて追い払ってくれたそうです。それ以来、カラスが川の近くに来てシノリガモに狙いをつけると、皆が横目で見張りながら畑仕事をするようになったといいます。畑の行きかえりに出会うと、「今日もカモっ子は無事だったべ。6羽で泳いでいたよ」と報告してくださいます。

この川はキセキレイの縄張り。岩の上でヒナを呼ぶ親鳥

この川はキセキレイの縄張り。岩の上でヒナを呼ぶ親鳥

セキレイも煩いし、十分休んだし、んじゃ、行くかな。それっ!

キセキレイも煩いし、十分休んだし、んじゃ、行くかな。それっ!

希少で愛らしい姿のおかげで、集落のマスコット的な存在になっているシノリガモ。大切にされている要因がもう一つあります。この地域に住んでいる三人の小学6年生の女子児童たちが、毎週のように観察会を開いて調査を続けているからです。昨年の秋から、炎天下も吹雪の中も、ものともせずに、海辺や川面に降りて、水温や風速、水の濁り、天敵の存在、餌となる水生昆虫などを調べています。彼女たちの熱心な姿が、皆の心を動かしています。その内容は第3部で報告いたします。

川面に垂れ下がったお花の下を泳ぐ

川面に垂れ下がったお花の下を泳ぐ

皆んなで仲良く巣立ってね
皆んなで仲良く巣立ってね

 

 

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コメント

  • 食べ物やセイリング山本千鶴子 より:

    ほんとうに写真なのに映画を見ているみたいです
    すぐそこにいる姿のように感じます
    6年生のみんなの頑張りがきっといろんなことを変えていくきっかけになるのでしょうね
    深浦町の人たちは素直で勉強家!!です
    大人も子供も、大事なことを大事ときっちり伝えていけるものになりたいですね
    本当にありがとうございます

    • hamatetsu より:

      千鶴子さま

      コメントありがとうございます。
      子どもたちの記事もまもなくHPにアップします。
      これも、頑張っている凛々しい姿と、笑顔が弾ける可愛いカットばかりです。
      子どもたちと一緒に調査、観察しながらですが、その合間を縫っての撮影がとても楽しい時間に感じられます。
      ごく自然に、一切声かけ無しで撮れるので、まさにカメラマン冥利に付きます。
      深浦の子どもたちは、ホントに純真で、一生懸命ですね。
      素晴らしいです。
      千鶴子さんのお嬢さんも、可能ならば一度参加してみて下さい。
      きっと、楽しめると思いますよ。

      いつも応援してくださってありがとうございます。
      同時にFBで「いいね」を押してくださる方々にもお礼を言いたいのですが、一度もお会いしたことのない方に、こちらから友達申請をするのは失礼な気がして‥。
      9月の「お話し会」の時に来て頂けたら、お近づきになりたいものです。
      梅雨が明け切らず、体調管理が難しい時です。
      多忙すぎて無理を重ねないよう、ご自愛ください。

  • つっちー より:

    動画も良いけど、写真と文章で十分に伝わってるで。
    続報期待や!
    それにしても、自分は相変わらず誤字脱字が多くて恥ずかしいわ、良くこれで後輩の原稿見てるわ~。

    • hamatetsu より:

      つっちー様

      おおきに、つっちゃん。
      やっぱ動画は難しいわ。
      でも時代の流れで、やらんとなぁ‥。
      ま、頑張ってみるよ。
      でも、ワシらは叩き上げのカメラマンやから、写真をしっかり撮りきらんと話にならんもんな。
      続報も、まもなくアップするんで楽しみにしといてや。
      いずれ、つっちゃんとも一緒に、仕事したいなぁ。
      今度、声かけるわ。
      よろしゅーうに、な。
      誤字脱字は意味の取り違えは、わしも一緒。
      たまに律子に変わって原稿も書くけど、全然あかんなぁ‥。
      精進せんとな、お互いに!。
      コメントおおきに!、FBよりもめっちゃくちゃ嬉しいわ。
      感謝しとるでぇ!!!

  • つっちー より:

    暑い夏に一服の涼を感じます!
    写真も素晴らしい!愛情を感じます!
    原稿もさわやか!声やにおいなど音もう教えてください !

    • hamatetsu より:

      つっちー様

      コメントありがとうございます。
      今、動画にもチャレンジしようとしていますが、機材の使い方がよく判りません。
      情けない‥。
      もし、うまく撮れたら、匂いは無理でも、声や音はお伝えできそうです。
      頑張ります。
      HPに来てくれて、すごく嬉しい。
      ありがとう!

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