ゴールデンウィークに突入した白神山地と周辺の村に、春の使者が次々と訪れています。まず、私たちの住む集落で最も早く咲く山桜がようやく開花。それを目当てにメジロ君たちがやってきました。朝と夕方、暖かい風と共に4~5羽が一斉に飛んできて、枝にぶら下がって次々と花の蜜を吸います。そして、5分ぐらいで慌ただしく別の場所へ移動して行きます。
メジロはその名の通り、目の周りの白いリングが特徴で、体長は約12センチ。
花の蜜や果汁が大好きな甘党の小鳥です。舌の先がブラシ状になっていて、花の中に顔を埋めて、蜜を上手に吸い取ります。
本当にちっちゃくて愛らしいのですが、花から花へと飛び回る動きはとても素早くて、双眼鏡でなかなか姿を追いきれません。
ほぼ日本全土に分布し、私たちにもなじみ深い鳥です。ツバキやウメの花、熟れた柿の実も大好物。餌の少なくなる冬場に、庭に切ったミカンなどを出してやると集まってきて、可愛い姿をみせてくれます。
特にオスは美しい声でさえずるため、西日本を中心に、飼育しているオス同士を鳴き合わせて競わせる会も開かれてきました。優勝したメジロの飼い主には、豪華な賞品が授与されたり、優秀な個体は高値で取引されることもあるといいます。でも、野鳥保護の観点から次第に捕獲や飼育が制限され、現在、日本では愛玩動物としてのメジロの捕獲は原則として認められていません。が、密猟はなかなか後を絶たないようで、愛らしい姿と美しい声を持ったメジロ君の受難は続いています。
そして、畑の横や川の土手には、薄黄色の水仙の花が満開となって春風に揺られています。誰かが植えたわけでもないのに、あちこちに小さな群落が出来ており、我が家の庭にも思いがけない場所で花を咲かせています。球根植物で、花が咲いた後も放置していれば、どんどん増えていくようです。花はとても綺麗ですが、球根も葉も鱗茎も、すべてが毒の危険な植物。その成分は、リコリンやシュウ酸カルシウムなどで、わずか10グラムが致死量になるといいます。鱗茎を浅葱(あさつき)と間違えて食べたり、葉をニラと間違えて食べたりして、亡くなった方もいるそうです。見た目は可憐な春の使者ですが、口にすれば命をも奪う、危険な毒草のようです。
もう一つの春の使者はミズバショウ。白神山地には、雪解け水を湛えた湿地帯が山間部のあちこちにあり、そこに数多く自生しています。サトイモ科の多年草で、発芽直後は葉の間から真っ白な仏炎苞(ぶつえんほう)という苞が開きます。これが花のように見えるのですが、実は葉が変形したものです。そして、仏炎苞の中央にある円柱型の部分こそ、小さな花がたくさん集まった花序列(かじょ)です。白い部分にそっと手で触れてみましたが、プラスチックのようにすべすべして硬いものでした。
名前の「バショウ」は、芭蕉布の材料に使われるイトバショウの葉に似ていることに由来するそうです。白神での開花時期は、4月~5月ぐらい。葉が花の後に出ますので、良い時期を狙って撮影にチャレンジするのですが、いつも間に合わず約50~60cmまで伸びた緑の葉が邪魔になります。北海道と中部地方以北の日本海側に数多く分布するそうで、山岳地帯や亜高山帯の湿原でもお馴染みです。
姿は美しいのですが、これも毒草。葉などにはシュウ酸カルシウムが含まれ、肌に付くとかゆみや水ぶくれを起こすこともあるそうです。そして、根っこにアルカロイドが含まれているため、食べると吐き気や脈拍の低下を起こし、酷い時には呼吸困難や心臓麻痺を引き起こす危険性も。以前は、腎臓病や便秘などの民間薬として使われたこともあったそうですが、現在は服用厳禁な危険な毒草とされています。
冬眠から覚めたばかりのツキノワグマが、このミズバショウの葉や花をよく食べていると、マタギの伊勢親方から聞きました。これは、眠っている間に溜まった体内の老廃物を排出するために、ミズバショウの毒を嘔吐剤や下剤として使っているようです。親方たちも、「留め糞を出す」ための行為としており、長い冬眠から覚めたクマが、本格的に餌を取り始める前触れの行動と見ています。
上の写真は、子どもの時に捕獲されて10年以上も檻の中で飼われているクマです。毎年冬になると、檻内に作ってもらった冬眠穴で眠り、4月中頃には起きだしてきます。まだ、少し眠そうですが、もう元気に、ドッグフードなどを貰って食べています。麓の湿地でミズバショウの葉が伸びて、この飼われているクマが動き出すと、山々のクマたちもそろそろ目覚めの時期。そして、白神の奥山にも遅い春が訪れるのです。
癒しの森、十二湖の素晴らしさ感謝感激です❗