青森県深浦町の小さな集落     
●子どもたちによるシノリガモ観察⑤「秋の気配」

子どもたちによるシノリガモ観察⑤「秋の気配」

双眼鏡でシノリガモを観察。その上空には、うろこ雲が一面に広がっていた=深浦町で

双眼鏡でシノリガモを観察。その上空には、うろこ雲が一面に広がっていた=深浦町で

数日来の猛暑が嘘のように、涼しくなりました。昼間はまだ、太陽が照りつけて残暑も厳しいのですが、朝晩は窓を締め切らないと寒いほど。さすが、北東北の日本海側の気候です。めっきりと秋の気配が漂ってまいりました。白神が最も美しく輝く季節の到来です。 

シノリガモのフンを分析し、その食性を調査する手法を聞く6年生の児童ら

シノリガモのフンを分析し、その食性を調査する手法を聞く6年生の児童ら

本日は、月に1回受け持っている、いわさき小学校6年生の総合学習の授業がありました。シノリガモの観察を通して、白神山地の自然や生き物への理解を深め、自分たちが暮らす故郷の素晴らしさを再認識してもらうのが目的です。午前10時過ぎに、11人の可愛い児童たちが、夏休み明けの真っ黒に日焼けした笑顔を見せてくれました。

河口の石の上に上がったお母さん

河口の石に上がる

海へ出て、波間も潜りながら餌を探すシノリガモの親子

海へ出て、波間に潜りながら餌を探すシノリガモの親子

が、残念ながら、肝心のシノリガモたちが川にいないのです。最近の観察では、朝早くから海に出てしまい、午後遅くならないと帰ってきません。昼間は海中に潜って餌を捕ったり、飛ぶ訓練をしたりしているらしいのですが、これまでは巣立ちの寸前まで、昼間も川で過ごしていたので、今年は行動が変です。 

河口付近を遡るヒナたち

河口付近を遡るヒナたち

その理由は、鳥たちが子育てをしている流域に入り込むアユ釣り師の数が例年よりも多く、これを警戒して川を遡れなくなってしまったようです。特にお盆休みの前後は、常時人が川面に降りて釣っている状態でした。釣り師たちには看板を設置し、マスコミ報道も通して、一部区間の釣りを自粛してくださるようお願いしたのですが、どうしても理解して戴けない方がいるようです。 

波を潜る親子

波を潜る親子

河口付近で羽ばたく練習をするヒナ。間もなく巣立ちを迎える

河口付近で羽ばたく練習をするヒナ。間もなく巣立ちを迎える

河川は誰もが使える自由な場所なので、ある程度の立ち入りは仕方ありません。でも、これだけ人が入り込むと、親子の行動が制限され、繁殖活動に影響が出るのは必至です。北の大地から、遥々日本へ旅してきた道化師の姿をした鳥たち。このままの状態が続くと、いずれは営巣地を放棄する可能性もあります。美しく、愛らしい姿をこの地で見られなくなる日も遠くないかもしれません。 

何を食べたのかな?。あ、これは足だよ。こっちは羽根?

何を食べたのかな?。あ、これは足だよ。こっちは羽根?

水で溶かしたフンを濾しとる児童たち

水で溶かしたフンを濾しとる児童たち。校長先生も、そっと見守る

何とかならないものかと、今、国や県と相談しています。自然を愛する気持ちがあるならば、協力のお願いを聞いて戴きたいものです。  繁殖場所は距離にして1キロ足らずの流域です。そこを外せば、どこで釣りをして戴いても問題ありません。口頭でお願いしたら、ほとんどの方は快く理解して下さり、納竿してくださいます。が、一部の方々は強引に川面に降りて釣りをされます。観察を続ける子どもたちも、鳥たちが驚いて逃げ惑う姿や、親とはぐれたヒナが捕食される現場を見ているだけに、とても悲しそうにしています。 

海から帰ってきたら、川でも潜る訓練

海から帰ってきたら、川でも潜る訓練

お母さんと変わらない大きさに成長したヒナたち。ほとんど見分けがつかない

お母さんと変わらない大きさに成長したヒナたち。ほとんど見分けがつかない

さて、試練をかいくぐって生き残った、今年のヒナたち。後、1~2週間で巣立ちを迎えます。もう、飛べるようになっており、いよいよ大海原へ旅立つのです。東北地方の爽やかな秋の到来と共に、別れの時期が近づいてきました。その時を子どもたち、涙なくして耐えられるかな。この夏休みの宿題も、シノリガモの観察で埋め尽くした3人娘。君たちも、いずれは故郷を巣立つ時期が来るんだよ。それまで、精一杯、遊んで、勉強して、白神の素晴らしさを実感しなさい。そして、願わくは帰郷し、家族を作って立派な子どもを育ててね。いつまでも、応援しているよ。

滑るように水面を泳ぐ。もうお母さんと変わらないぐらいに、餌も採れる

滑るように水面を泳ぐ。もうお母さんと変わらないぐらいに、餌も採れる

夕暮れ時、中洲で休むヒナたち。旅立ちは近い

夕暮れ時、中洲で休むヒナたち。旅立ちは近い