みらいを紡ぐボランティア

ジャーナリスト・浜田哲二と学生によるボランティア活動

青森県深浦町の小さな集落     
●冬に向けての薪の準備を開始「前編」

冬に向けての薪の準備を開始「前編」

積み上げられた原木

積み上げられた原木

白神山地は梅雨入りを前に連日、真夏のような晴天が続いています。ここ数日は、グングンと気温が上がり、昨日は何と30度を突破。本州最北端の地とは思えない陽気です。そんなギラギラした太陽の下、来るべき冬に備えて薪の準備を始めました。私たちが暮らす深浦町の冬は、零下10度近くまで気温が下がります。山間部と険しい海岸線が続くこの地方では、近年まで電化は進まず、石油などの化石燃料も簡単に届かないうえ、決して安価なものではありませんでした。そのため冬場の暖房は、昔から山で切り出される天然木を使った薪ストーブや囲炉裏が中心でした。

赤い炎を上げて燃える薪ストーブ

赤い炎を上げて燃える薪ストーブ

でも最近は、薪を作る手間や煙突掃除などのメンテナンスの面倒さから、徐々に灯油式のストーブを使う家庭が増えてきています。確かに、近代のストーブは温度調節も楽で、灰を捨てたりする必要もないのですが、薪ストーブを使ったことがある方は、「薪の火の暖かさは特別」と、皆が口を揃えます。私たちも、「マタギ」の伊勢親方のお宅で薪の炎の心地よさに驚き、たちまち虜になってしまいました。そして、引っ越してきた自宅に大容量の国産の薪ストーブを設置したのです。

夫が履くスウェーデン製の安全靴

夫が履くスウェーデン製の安全靴

夫がかぶるフェイスガード付きのヘルメット

夫がかぶるフェイスガード付きのヘルメット

さぁ、薪作りを開始します。本日は重労働の夫を支えるため、写真はすべて私が撮ります。これでも昔、新聞社でカメラを使って取材していた写真のセミプロでしたから。でも、ちょっと自信がないなあ。なんせ仕事としては、十年以上は撮っていませんもの。

装備と力が自慢の夫。重さ40~50キロぐらいの原木なら軽々と持ち上げて、玉切りする台座へ運べる

装備と体力が自慢の夫。重さ60キロぐらいの原木ならば持ち上げて、玉切りする台座へ運ぶ

まず、地元の森林組合から1m足らずの長さの原木が約200本届きました。これを薪ストーブに入るように、チェーンソーでカットします。樹種はブナ、ミズナラ、イタヤカエデ、サクラなど広葉樹ばかりです。大人の腕ぐらいの細さから、一抱えもあるような大きな材まで。夫が、フェイス・ガード付きのヘルメットに鉄板入りの長靴、防振手袋、防護ズボンという完全装備でやってきました。

盛大に切子を飛ばして原木を切る。ケガしないでね‥

盛大に切子を飛ばして原木を切る。ケガしないでね‥

専門家もびっくりな装備を施した理由は、夫の兄が高知県で林業に携わっており、「近代的な機材を使っても木を切る作業は命がけだ。チェーンソーを扱うならば素人は装備に手を抜くな」と、アドバイスを受けたからです。すべてが初心者の夫は、それでも危なかしい。ただ、真夏のような炎天下に、木を切る前からすでに汗だくになっています。それは装備のせいでなく、太りすぎよ。

切れた途端、大きな丸太は自然に木が地面へ落ちる

切れた途端、大きな丸太は自然に地面へ落ちる

1mの原木を台の上で三つ割りにする

1mの原木を台の上で三つ切りにする

まずやらなければならないのが、「玉切り」。1メートル近くの長さに切られた原木を約30Cmの長さに三つ切りにする作業です。工程としてはこの後に斧で切り株を2つ割か、4つ割にすると切断は完了。屋外に積み上げて、3ヶ月~半年間乾燥させれば完成です。ただ、これだけの量の原木だと、とても1日では割り切れないので、本日は玉切りを完了させるのが目標です。

ヘボだけど、体力があるので仕事は捗る。切り口は曲がってギザギザだけど

ヘボだけど、体力だけはあるので仕事がはかどる。切り口は案の定、曲がってギザギザ

チェーンソーはドイツ製です。ヘルメットや靴はスウェーデン製、装備は一流ですが腕は伴っていません。怖々機材を操っています。切るときも、出来る限り節のある難しい所は避けているそうです。どれが節か理解しているとも思えませんが。でも、切った「ドンコロ(株のこと)」は、着実に積み上がっていきます。

切ったばかりのブナ。ギザギザのチェーンソー痕が残っている

切ったばかりのブナのドンコロ。波打つチェーンソーの痕が腕を物語っている

作業は30分~1時間に1回は休憩します。機材の扱いに慣れない上、体の思わぬ場所が痛くなってくるため、連続しては出来ないよううです。腕は当然、腰や背中、膝も痛くなるとボヤいています。そして、愛用のチェーンソーにも、オイルや混合ガソリンを頻繁に補給してやらなければなりません。その都度、「ふー」と息を吐きながら汗を拭う夫が、少し可哀想です。

ラグビーをしていたのでボール替わりに投げるのは上手

ラグビーをしていたのでボール替わりに投げるのは上手

それというのも、今年始め、沖縄県での遺骨収集作業中に膝を痛め、放置していたらどんどん悪化。最後には膝を曲げて座れなくなった上、坂道での上り下りまでが難しくなってしまったからです。痛そうに足を引きずる姿が心配で、「そんなんで大丈夫?。きちんと薪、割れる」と、頻繁に声がけしました。が、結局、大汗をかきながらも、1日でやり遂げてしまいました。

大きな切り株がどんどん出来てくる

大きな切り株がどんどん出来てくる

時々通りかかって、指導してくれるご近所の長老たちも、「若いなぁ、雑だけど、仕事は早いよ」と、意味深な笑顔で励ましてくれます。気を良くした夫は、週明けにも斧で小割りにする作業に取り掛かるつもりのようです。チェーンソーより斧を使う方が楽しい、とニコニコ笑っています。膝も完治していないし、ゆっくりやればいいのに‥。でも、性格上、早くやらなければ気が済まないのでしょう。はぁ‥

作業も終盤、猛暑も重なり音を上げかけている。「もう明日にしようかな」

作業も終盤、猛暑も重なり音を上げかけている。「もう、明日にしようかな」

今回は、地元の森林組合から、原木をふた棚分買いました。ひと棚がどれだけの量か、いまだに理解できませんが、ふた棚あれば毎日薪をストーブにくべても、ひと冬をゆっくりと過ごせます。料金は、ここでは記しません。色々と弊害もあるようなので。ただ目安を言えば、ストーブ用の灯油をひと冬分購入する金額よりも、少し安いです。

手前に落ちた気を片付ける。足元を綺麗にしないと事故につながる

手前に落ちた薪を片付ける。足元を綺麗にしないと事故につながる

よく、薪は3度人を暖める、と言われます。木を伐り出す時、薪を割る時、燃やす時。本来ならば、山から伐り出す時の暖かさも享受したいのですが、それは夫の腕がまだ未熟なため、もう少し修行してから挑戦させようと思っています。今のままだと、きっと、自分で倒した木の下敷きになるのが関の山ですから。

新緑の山々と積み上げられた薪。例年、この時期に処理するが、今年は暑すぎる

新緑の山々と積み上げられた薪。例年、この時期に処理するが、今年は暑すぎる

今年の玉切りは、季節外れの暑さのため作業が大変で、終わった後は水をがぶ飲みしていました。夜になっても体温が下がらず、ちょっと熱中症気味に。でも、作業の目標を達成しホッとした様子で、その夜はビールをお腹いっぱい飲んだようです。まあ、今日は許してあげる。頑張ったものね。さぁ次は、斧で割る仕事だよ。私も手伝うから、一緒にやり抜こうね。写真はすべて筆者①の律子撮影