今、私たちが暮らす白神山地の麓に広がる森で、「ナラ枯れ」の被害が深刻です。世界自然遺産に登録された白神岳や向白神岳に続く山々の斜面が、紅葉のように赤く染まったり、鹿の子模様のように変色したりしています(執筆家・浜田律子、写真・浜田哲二)。
この現象は数年前から見られましたが、今夏の8月、北海道から帰宅した時に目を見張るほど広がっているのに驚いたのです。同行してくれた大学生の高木乃梨子(22)が、「こんな時期にも紅葉するのですか」と問いかけてくるほど、時季外れの光景に息を飲みました。
ナラ枯れの原因は、体長数ミリの「カシノナガキクイムシ」と呼ばれる昆虫が引き起こす植物の伝染病です。ミズナラなどのナラ、シイ・カシ類などの広葉樹に穿入し、体についたカビの一種「ナラ菌」を感染させ、幹の水の通りを悪くして木を枯らしてしまう病気です。
※NHKが報道してくれました↓
https://www3.nhk.or.jp/lnews/akita/20190925/6010004924.html
この虫によって木の幹は内部を食い荒らされ、スカスカになってしまいます。樹皮にも、カシナガが入り込ん穴が無数に開き、根元には排出物と木くずが混ざったフラスが大量に積もっている状態です。
青森県や東北森林管理署などによると、深浦町での被害木は2016年~17年に80数本だったのが、18年~19年の調査で2500本近くに増加しているのが確認されました。調査は毎年、6月までに実施されているので、19年7月からの被害実態は、まだ掴めていません。
町や林業関係者らは、「現場を一見しただけで、被害木が増えているのが判る」と話しており、海岸線や渓流沿いに沿って、緑の森に赤や茶色に変色したミズナラが立ち並ぶさまは異様です。麓で暮らす人たちも、「なんだか山がおかしくなっているびょん」と顔を曇らせています。
抜本的な予防策はないらしく、被害木を切り倒したり、燻蒸したりして処分するしかないとされています。ただ、1本ごとに作業をするため、急傾斜地や奥地での処理は困難で、これ以上の被害の広がりを抑え込むのは難しいと、関係者らは頭を抱えています。
来春から、新聞記者になる高木とも話し合い、この事態の深刻さを複数の報道機関に連絡。NHKや朝日新聞が報道してくれました。特にヘリコプターやドローンを使った空からの報告は、ナラ枯れの酷さと広がりを如実に現しています。
※朝日新聞が報道してくれました↓
https://www.asahi.com/articles/photo/AS20191001001389.html
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